美少女おっさんと迷宮都市エルフィンランド 4
いつも読んでいただきありがとうございます
お酒を飲みながら、口の軽い冒険者に声をかけまくって集めた情報で、エルフと関わるものが出てきた。
元々、命からがら逃げて来たエルフのハナアビから教えてもらった情報からもそのことは知っていたが、新入りの外の人間が闇市までたどり着くにはいささか怪しいと思われるので、時間を置いていた。
「闇市には出どころ不明だけど回復力の高いポーションがある」
「闇市のポーションには若返りの効果があると噂のポーションがある」
「若返りのポーションは高額だ」
「若返りのポーションはダンジョンの深い層でしか入手できず、あまり出回らないのだが、最近ちょくちょく出てくるようになった」
「闇市を開いている時間と場所? 知らないの? ああ、お前ら最近来た口だもんな。週に一回水の日の午前中だ。そうそう、闇市って言っても、許可なしで開ける個人で開けるマーケットって意味合いだから、参加しても罰なんて与えられねえよ」
こんな感じの話を聞けた。
私たちの心のメモの中にはそのポーションのことや闇市のことを書き残しているが、基本的に居酒屋で話しているのは、安く高品質の武器を手に入れたり、お勧めの娼館の女の子の情報だ。ザ・冒険者らしい話しか向けないように努力した。特にお勧めの娼館の情報は若干鼻の下を伸ばし気味にして聞くとさらに話が進む。でも、私は嫁一筋なんで決してそんな場所には行くつもりはない。それにエルフの里に戻ってエリンが私の脳内の記憶を読んだら、お前、何しに外に出したと思ってるんだあああ!、と怒鳴られて魔力草をよく噛んで味わって食べる刑に処されるかもしれない。
魔力草をよく噛みしめるだなんて、きっと体がねじれにねじれるような苦みに苦しむこと間違いない。
そんなことを私が思っていると、
「『妙に回復力の高いポーション』、『若返りのポーション』の材料等にエルフの体の一部が使われることがある」
とハクラクが説明してくれた。
他のアイテムでも代用できるのだが、手に入れるまでが大変だったりする。有名な物だとドラゴンの生き血だ。苦労してドラゴンを探して恐ろしい戦いを繰り広げた後に採取するくらいなら、身近にいるエルフを材料にすれば、というようなことなのだ。
闇市の開かれた水曜日。晴れて澄んだ空気がいっぱいの朝早い時間から市場はにぎわっていた。
胡散臭いアイテムやダンジョン産のアクセサリーが展示された店で店員に何か言いくるめられている人を見かけたり、匠の弟子の習作の武器が並ぶ店で冒険者が素振りをしたりして品質を確かめていたり、珍しい香辛料や日持ちのする果物を買い取っている宿屋の使い、薄いパンに甘辛いソースと肉が挟まれたものの出店の前で立ち食いする人たち等、たくさんの人々が集まっていた。
そういえば朝飯がまだだったと、その甘辛ソースのパンを買って食べた。
チリペッパーにヨーグルトやケチャップを混ぜたようなソースにサラダと焼いた肉が薄いピタパンにはさまれていた。これケバブじゃねえか!
料理の知識で成りあがる系の転生者いただろ、これ!
他人の知識を自分の物みたいにして、レシピ代とか使用料とかむしり取ってんのに、私の料理で世界中を笑顔にしたいとかそういう頭の上にお花が咲いている系の思想の持ち主!
そんでもって私なぜか王子に愛されて困ってますとかタイトルにつくやつ!
あああ、お前らが寝込んで苦しんでいる時に魔力草をすりつぶしたスープを飲ませてやりたい!
「大丈夫か、スズキ殿。このソース少し辛かったな」
ハクラクは、私の壊れた表情を心配してくれた。本当にお前心もイケメンだよ。私もハクラクの爪の垢を煎じて飲みたい。
「いや、大丈夫。結構うまかった」
「そんな顔してなかったが……食べ終わったらぶらぶら見て回るか」
「そうだな、掘り出し物があるかもしれないし」
そう話しながら口の中に異世界ケバブサンドを放り込んだ。悔しいけど美味しかった。ビクンビクン
小さな薬屋の屋台を見つけた。
品物はどれもお値段が一桁から二桁ほど他の薬屋とは値段が違う。
高品質のポーションだというものと、探していた『若返りのポーション』だ。
値段は、めちゃくちゃ高い。長のエリンからもらった旅費のほぼすべてが消費されるレベルだ。買わなければ手に取れないし、ハクラクも手に取らなければそれが本当に若返りのポーションなのかわからない、ということだった。しかたなく、それを購入した。
「ああ、間違いなく若返りのポーションを購入した」
ハクラクの笑顔がひりついていた。
一緒にいる期間が長いからわかるが、ハクラクのこの表情は怒りをこらえている表情だ。
しかし、これが若返りのポーションであってもエルフの一部が入っているものなのか、それとも別の物から出来上がったものなのかわからないはずだ。
多分、ハクラクが私に教えていない特殊なスキルなのだろう。
ハクラクと私は若返りのポーションを売っていた薬屋の見える酒場でちびちびと酒を飲みながら時間を潰していると、お昼にならないうちに薬屋は店じまいをし、店主が歩き始めた。
私たちは酒場で多めのお金をテーブルに置いて店員に帰ると伝えて店を出た。薬屋の店主を見失わないように、とぼとぼと遠くを歩きながら猥談をする。
会ってもいないお店の女の子のナニがいいとか、アレがいいとかと話をしながら、ぼんやりと店主を視界に入れながら歩く。振り返られてもガン見しないように気を付ける。そして、矛盾するルートを通ろうとしていたら、自分たちは相手を見失っても矛盾するルートは通ってはいけない。追尾していることがばれてしまうし、それをすればハナアビの二の舞になるだろう。それに、ハナアビの情報通りであれば、店主は恐らく子爵の家に出入りするはずなのだ。無理する必要はない。
店主は振り返ったり、食堂に入って食事をしてみたりして追従しているものがいないか確認を取りながら歩き、予想通り子爵の屋敷へ入っていった。
子爵の家に押し入ったのは、その一週間後だ。
ダンジョンで稼いだから前の住処に戻る、とギルドに併設された酒場にて、知り合った冒険者たちに言って酒を飲み交わして別れた後、街の中の廃屋の一室で過ごし、どこの誰が子爵の家に押し入ったかわからないように工作をした。
子爵の館は塀で囲まれており、館自体はこの世界では立派過ぎる3階建ての木造の建築物だ。
あらかじめ裏口の場所は調べており、そこの鍵が開いたころを見計らい、2人で押し入る。
まあ、押し入ると言っても、私が幻術を使って目くらましを衛兵だか用心棒にして、我が物顔で屋敷に入っていくだけなのだが。
そのようにして入っていくと異臭を感じた。
どこから臭うのかと思いながら、館を見て回っていると、地下室に近づくにつれて臭いが増してきた。腐っているような臭いなのに甘いような変な臭い。花が集まって凝縮してそして腐ったような、そんな感じの臭いだ。
地下室に向かう階段を下りる度に臭いがきつくなる。
「エルフが死んで時間が経つとこんな臭いがする」
ハクラクが役に立つことをできれば遠慮してほしい豆知識を教えてくれた。
「この扉の向こうだ」
ハクラクが地下室の扉に手をかけた。
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不定期連載ですが、『落ちない椿』のようなTSヒーローものを書き始めました。
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『試されるTS美少女ヒーローは夢を砕かない』
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