同化してるぜ
引き続き、読んでいただきありがとうございます
義父ジコンに間違いを伝えることができず、私とハクラクは通称ホテル馬小屋の私の自宅に帰り、スマホを強制再起動させ、ハクラクにエルフと触手が戯れ遊ばれる画像を見せていた。
ハクラクは触手属性持ちで二次元ダイスキーな人だった。正確にはそういう素質を持っていて、私の手持ちのエロ画像で開花されてしまったのだ。
このイケメンエルフ、残念な人だった。どうかしているぜ。
どおりで、三次元の女エルフに興味を持たないわけだ。
スマホをなんとか譲って欲しいと言われたが、流石に自分のスマホは渡せない。とはいえ、義理の兄で二次元のエロについて分かり合える心の友を邪険に扱う事などできない。日本に戻る時、長による転移魔法を使ってくれるだろうから、長を通して別の端末に素敵な触手画像を入れたものを渡してもらおう。親を通してエロ画像を渡すとか、我ながらどうかしているけれど、方法的にはこれくらいしか思いつかない。後は、私が長に渡す瞬間や長からハクラクが受け取る瞬間に心の中を読まれて、汚物として処分される可能性だ。
うん、絶対読まれるだろうし、妙に何を考えているかわからないように心を無にしようとすれば、良からぬことをしようと思われるに違いない。
私はハクラクと入念に触手画像の入った端末の輸送方法について語り合った。周囲に見られたら、危険な薬物などの禁制品の密輸入を計画していると思われただろう。
でも、大丈夫か? 触手で同族のエルフが性的に酷い目に遭っている画像の塊を誰かに見られたら、大問題になるんじゃあなかろうか。里から追い出されないだろうか。心配である。
「そうやって考えると、スズキ殿の元いた世界は、私にとって楽園なのだろうな。スズキ殿に嫁いだエメラダが羨ましい」
そんなことで異世界に憧れるとか、そんなハクラクの思考が羨ましい。しかも、エメラダは二次元触手プレイに興味はない。多分。
ホテル馬小屋にノックの音が響き、玄関ドアを開けると長エリンがいた。
油断していた。
脳みそが二次元触手プレイで埋め尽くされていた。そのせいで、心を読める長の触手プレイを妄想してしまった。
怒っている時も表情を上手く顔に出せない長の顔が、明らかに歪む。長の視線が自分の息子のハクラクに向けると、さらに綺麗な顔の眉間にしわがよる。
「朝っぱらから何考えているんですか!」
こんなに声を出して怒る長を見たのは本当に初めてであった。
早く日本に戻って思想の自由を保障されたい。
そんな風にして、私はプリプリ無表情で怒りっぱなしの長に連れられて、新たな上下水道工事に繰り出される。私は魔法を使うわけではなく、魔力タンクとしてドナドナ連れられて行く。
長は以前の工事と同様に穴を作り、それを里の中をめぐらせ、穴の表面の土を硬質化させていく、魔力はどんどん私から補充していく。私は体調が悪くなる度にそこらに生えている紫色の雑草をむしって食べる。この雑草はエルフの里やその周りのエルフの里の森でしか生えない、魔力の総量、MPを増やす貴重な草である。口に放り込んで咀嚼すると天高く突き抜ける青臭さとこの世のものとは思えない苦みが口腔内に広がる。噛んではいけない。飲み込むだけだ。それでもMPは増加する。しかし、私は噛まなくてもひどく苦いこいつを口にして、気つけ薬代わりにして意識を保っていた。懐かしき異世界の味である。
今日の長は容赦ない。全然休憩タイムを設けてくれない。
今度から頭にアルミ箔でも巻いて意識を読まれないようにしよう。
そんな地獄のような日を過ごしたのが罰だったようで、翌日からは休憩時間がつくようになった。
休憩時間中、過去に何度か話すことがあったエルフに声をかけられた、人間であることはわかっていたようで侮蔑するような視線が痛々しかった。
その度に、長のエリンが、
「彼女はスズキだ」
と一言言うと、尖った視線が緩み、世間話をされて離れて行った。
おかしいな。鈴木宏と同一と思われたなら、それこそ色々と話をされるはずだと思う。
そう長に伝えると、
「この里では『スズキ』は友好にして良い人間の意味を持つ。この世界の人間にもエルフに協力的な人間がいる。特に人格的にも優れた人間をスズキと呼んでいる」
そんなに私は友好的にされていたか?
いや、違うだろ。エルフの子供から家に投石されまくっていたりお店に行けば舌打ちされたりしたはずだけど。
多分、顔だ。今の私はこの世界のエルフと同等クラスの美少女なのだ。ピンク色のショートヘアをなびかせたタヌキ顔のつい守ってあげたくなるミドルティーンの女の子だ。
きっと、それが決定的な違いだろう。
くっ、所詮顔かよ、くそぉおおおお!
いいもん! もういいもん! 初々しい美少女プレイからの悪女プレイして男エルフから貢物もらいまくってやる!
「まあまあ、あまり怒らないでください。この変わり方、スズキのおかげなのですよ。今では人間との交易も微々たるものですが行われています。それは、エルフの里で献身的に功労したあなたのおかげに他なりません」
長からなだめられたけれど、やっぱり納得はいかない。
「ほら、あれ」
長が指を指す方向に止まった荷馬車には現地の人間が乗っており、エルフ達と握手を交わしながら物品の交換をしていた。エルフ達は彼らのことを人間とは呼ばず、彼らの名前の他、総称として『スズキ』と呼んでいた。
あの姿は私が生きていたころには見られなかった光景だった。
数日の上下水道魔法工事により、エルフの里の各家庭にはまた下水道が設置され直した。
これでお役御免だと思うが、長は長の執務室に私を通し、椅子に座らせた後、転移魔法を使おうとする気配はなく、お茶を出した。
「エメラダの夫スズキ、この度は本当に助かった。でも、これの他もう一つやってもらいたいことがある」
追加の依頼はろくでもないことが多い。
すぐ終わるものを依頼しておいて、さらに面倒なものがお代わりで準備されているとか、そんなことざらにある。
これは面倒なことなのだろうと思った。
「スズキの思う通り面倒なお仕事です。この下水道を潰したダンジョンを消滅させてもらいたい」
ほら、絶対面倒な奴だと思った。これ絶対面倒な奴だろ。
ダンジョンを消滅させるにはダンジョンの最深部等にあるダンジョンコアというものを破壊しなければならないと聞いたことがある。
あえて、これを壊さず、永遠にわき続ける資源として運用する、という方法もあるそうだ。
しかし、ダンジョンの管理は簡単ではなく、たまに大量ポップするモンスターの大群がダンジョンからあふれ出てくることがある。
「流石にエルフの里の中のダンジョンを残すというわけにはいかない。既に何人ものエルフの討伐隊が中に入って戦っている。階層自体は少なく3階で、広さもエルフの里の半分もないくらいだ。しかし、ダンジョンマスターとなるモンスターが異様に強く、その他モンスターのリポップの速さもかなり早い。夫のジコンでさえ撤退を判断した。攻略にはスズキの即死魔法となる幻術が必要だろう」
どんな動きをするモンスターかわからないけれど、仮に倒せたとしてリポップの速さがぶっ飛んでる速さなら、MPが足りなくなる可能性もある。ダンジョンコアが自己のエネルギーの消費を自殺上等でモンスターリポップをしまくるなら、できればダンジョンに入りたくない。
なんか言い訳なんかできないものかと思った。
「モンスターは幽霊系とかゾンビ系だったりするんですか?」
幽霊とかゾンビはこの脳に作用する幻術は行使できない。
そもそも彼らは何を感じて世界を認知しているのかはなはだ理解に苦しむ。
「動物やゴブリン系統で、ゾンビ系は出ないそうだ」
エリンの説明に、ちょっと安堵した。いや、安堵したら、この面倒な仕事を受けるの決定しちゃうじゃん。他にもどんなダンジョンなのか知らなければ入っていきなり凍死とか熱死になるかもしれない。
「ダンジョンは入ったら、雪原が広がるとか、青空があるタイプとかになるんですか?」
「そんなダンジョンもあるらしいが、エルフの里に出来たものは完全に単純な洞窟タイプだと報告が上がっている」
ゴブリンの潜む洞窟とか、美少女姿で入ったら薄い本案件じゃないですか。何とか切り抜ける方法ないかなぁ、と思っているとエリン(お義母さん)の視線が怖くなってきた。仕方なく、私は仕事を引き受け、ホテル馬小屋へ戻ったのだ。
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