美少女おっさんと長男と地味子 2 学校祭
いつも読んでいただきありがとうございます。
たくさん書けたので追加更新します。
高校の学校祭を回ってみたいという娘を連れて、学校内の出し物を見て回る。
でも、申し訳ないけれど、パッとした感じのいい出し物って大体ない。
なんで、こんな展示物にしたんだろう、とか、これ学校の先生の思想ですよね、とかいうものがほとんどなのだ。仕方ない。でも、大体の大人がこれを経験して、高校生という年齢の勢いってヤバいよね、という思い出を集団の黒歴史として、同窓会まで記憶の彼方に封印するのだ。
そして、定番の出し物のメイド喫茶と執事喫茶。これもう罰ゲームだよ。発案したやつを止めろよ、本当にもう……。
「あれあれ、あれに入ってみよう!」
呼び込みをしているメイド姿の女子高生を見つけた娘は私の手を引っ張った。スーパーでお菓子をねだる子供みたいなことしないでくれ。
「お父さん、あーいうメイド系は嫌いなんだ」
「そんなわけない。お父さんの世代はメイド全盛期のはずでしょ!」
なんで知っている……確かにそうなのだ。私の若いころはメイドさんが急激な社会進出をした時代だった。
秋葉原が電気街でバスケットコートが空き地になったころの時代。メイド喫茶が秋葉原に生まれ、その店等での定番セリフの『萌え萌えキュン』の『萌え』が数年後流行語大賞として選ばれた。
あの頃は、まさに学校祭のノリをさらに押し上げたバカみたいな盛り上がりの店舗が多かったと記憶している。値段も良心的だった。萌えるというより、大人未満や大人になったばかりの子たちの悪ふざけと、それに便乗した客が悪ふざけして笑える、という感じだった。
現在は行ったことがないからわからないが、聞く噂を聞けば、秋葉原の通称メイド喫茶と言われるものは残念ながらキャバクラになっていたり、メイド姿の呼び込みについて行ったらぼったくりバーでした、ということがあるそうだ。
メイド喫茶に行く前には必ずホームページを確認して、口コミ等を確認して危険性がないか調べてからではないと、入店するのは難しい。
ちょっと悲しいね。軽い気持ちで入ったメイド喫茶に全年齢対応のディープな悪乗り、悪ふざけがないなんて。
「萌え萌えキュン、て言われてな、オムライスにハートを描いてもらうだけで、紫式部1枚が飛んでいくんだぞ」
「紫式部って、2000円札のこと? その表現わかる人ほとんどいないよ。とりあえず、お腹すいたからごはん食べに入ろうよ」
娘に強引に手を引かれて、メイド喫茶を運営している教室内へ入る。手作りのゴシックな感じの装飾品が壁に広がっており、頑張ってお屋敷風な内装にした感じが見て取れる。
席のテーブルを見ると、おそらくホテルから廃棄予定のシーツをもらって生徒たち手作りのテーブルクロスに加工したのだろうなというシーツ生地のテーブルクロスが、高さが若干チグハグな机がまとめられて作られたテーブルにかけられ、色画用紙やプリントした画像を貼り付けたメニュー表が置かれていた。黒板には可愛らしい猫耳メイドの絵が描かれていた。
おかえりなさいませー、という声と空いている席を勧めるメイド姿の女子高生に付いて行った。
席に座ってメニュー表を見た娘が『目の前で描くハートのケチャップ』をしてもらいたくてオムライスを注文し、私は焼きそばを注文した。流石に焼きそばにそんなサービスはないはずだ。
既に出来上がっているものが渡されるのは、学校内で火を使えないという理由でご愛敬である。
お皿に盛られたオムライスには当然、ケチャップはない。
娘が女装する気が毛頭ないメイド服姿の男子高校生に、ケチャップでハートを描いてもらった後、手でハートを形どり、ちょっと恥じらい顔の萌え萌えキュンをしてもらっていた。娘はその姿をメイド女子高生に写真を撮ってもらっていた。うーん、カオス。
「マヨネーズで萌え萌えキュンしますか?」
私にメイド(男)さんが申し訳なさそうに尋ねた。むしろ、そういうサービスあるの? マヨネーズを焼きそばに入れる派ではないんだよなあ。
「いらないで……」
ああ、きっとマヨネーズ入れない人が多いから、尋ねるの辛いんだろうな。
「……あ、いや、紅ショウガでできますか?」
メイド(男)さんが、マジっすか!?、等と喜んで爪楊枝を2本使って器用に紅ショウガをハート型にしてくれた。出来上がったところで、娘とメイド(男)さん2名と他のメイド(女)さんとなぜか集団撮影した。
ああ、こういうカオスっていいよね。やっぱり、学校祭のメイド喫茶に入って良かった。
ちなみに、支払いは紫式部(2000円札)で払ったら、めちゃくちゃウケたようだった。
いってらっしゃいませ、等という声に娘が手を振りながら応え、メイド喫茶運営をしている教室から出た。
娘はさも当然そうにまだ学校祭を見て回ると言っていたが、私はもう彼らの黒歴史になるモノを見て回るのではないと思いながら、帰ってゲームでもしようと促した。もちろん、却下された。
「ステージ発表、体育館でやっているやつ見に行こう」
やめろ、それは本当にやめろ。一般開放になっている時間帯のステージ発表なんて、大体、学生の軽音楽か漫才系の奴だ。絶対将来黒歴史として心に刻むんだ。
元々客が全然いない、前いた客がどんどん帰っていく、来てくれると言ったクラスメイトが来なかった、そんな中で演奏したり漫談をしなければならない。それだけでも心はねじり切れて、空中で分解されていくプロペラ機の様になっているんだぞ。前日まで猛練習して頑張ったのに、誰も見てくれない、誰からも評価されない状況。
これを見に行ったらマジでつらい。そして、出る時もさらにつらいんだぞ。
オリジナル曲なんて披露されたらもう、もうどんな顔をしたらいいのかわからない。
娘には私がどんな思いで止めているのかは、きっとわからない。娘も年を重ねて、いろいろな経験を重ねれば、わかるのだ。このイベントの参加は人脈最強のカースト上位の陽キャ以外はマジヤバイ。
娘の強い要望の元、押し切られた私はステージ発表会場の体育館に入る。
垂れ下がっていた暗幕をめくろうと手にかける。
ステージ発表といえば、そうだ、エルフの里でもこんなことあったな。
いわゆる一発芸大会だ……
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