かくれんぼ
短編を連載ものとして書き直してます。
諸事情あってホラーな感じに書き始めていますが、コメディー物です。2話目からコメディー感が出てきます。
夕日が沈み、人と人の顔が分かりにくくなる黄昏時。
カラスの鳴く声が近所の公園から響いて、私の安アパートに届く。
耳を澄ますと、カラスの鳴き声は急に止まり、代わりに乾いた足音が安アパートの外から聞こえてきた。
聞き覚えのある音だ。私は布団に潜り込んで震えた。
安アパートの廊下を歩き始めたその音は、カツン、カツンと反射して響く。音は段々と大きくなり、私の部屋を通り過ぎ、やがて小さくなる。
勘違いか、と思ってため息を吐いて、布団から這い出ようとすると、カツン、カツンと響く足音はまた私の部屋に近づいてきた。
額に脂汗が滲み出す。
そして、その音は私の部屋の前で止まった。
私の頭の中で、やめてくれ、と声に出せない悲鳴がこだました。
チャイムの音が私の部屋に響き渡る。隣の部屋のチャイムだと無理矢理自分自身に言い聞かせて布団を被る。
2度、3度とチャイムの音が聞こえ、私は息を殺した。
なんでこんなことになるのだろう、何故あんなところに連れていかれたのだろう、そしてなんでこんな風になってしまったのだろう。
私の破滅の時間は間も無くだ。
チャイムの音は途絶えた。諦めたのだろうかと思ったが玄関の扉からまだ離れていない。
不意にテーブルから音が鳴り響いた。
存在を忘れていた携帯電話だ。
ナンダ、イルジャナイ
ドアに何かが差し込まれる金属音で私は体を震わせた。
カチャリ
ドアチェーンはし忘れた。
いや、運が良かったかもしれない。
ドアチェーンをしていれば確実に家にいると思われる。
でも、していなければ、ただの不在だと思ってくれるかもしれない。
ノシリ、ノシリ
足音はどんどん自分の方へ近づいてくる。
布団の前で止まった。
短いのでもう一話つけます
感想等あると嬉しいです。
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