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2月12日(日)_懐が広いといえば【くるるのひとりごと3】

 駅ってスタートだしゴールだなぁと思う。


 日曜日、改札口前、待ち合わせ。人の多さは繁華街並み。

 今日は理央ちゃんとおでかけ。この前カイトくんと喫茶店へ行ったときに遅刻しちゃったから、反省を活かしたいと思ったのだ。なにかしらの忘れ物や迷うことなんて日常茶飯事なので、なぜかいっつも遅刻になってしまう。今日だって待ち合わせより一時間早く着くように家を出たけれど、今は集合の十五分前だ。おかしい。私の時間だけどこかで急に早くなってるんじゃないだろうか。

 それとも私が全体的に遅いのだろうか。

 目の前の人混みは忙しなく行き交っていて、あれでよくぶつからないなって人もちらほら。

 ほんと、駅ってスタートだし、ゴールだ。

 みんな何かしらの目的があって駅に降り立ち、そこからお店とか、公園とか、会社へと歩いていく。

 改札機のトビラが開いたらみんな一斉にスタート!

 向かう先が違うから競技にはならないけど、それはそれで。

 たまに突撃する勢いで飛び出していく人とかいるよね。ああいう人たちは私みたいに遅刻しがちなのかな。もしかしたらやっぱり私が知らないだけで競技になっているのかもしれない。こっそり中継とかされたりして。

 逆にホーム目がけて改札機へ飛び込んでいく人もいる。そういう人たちにとっては駅はゴールだ。電車に乗りこめばこっちのもんじゃい、どけどけ王のお通りじゃい。そんな人。駆け込み乗車はよくないんだけどね、ほんとは。映画とかドラマだったらちょっとカッコよく見えるけど、実際だとちょっと、ね。そういうことっていっぱいある。

 でも、その逆もある。

 フィクションだと都会の雑踏は冷たくてつまらないってよくいうけれど、そうは思わない。

 私は駅前の人混みが好きだ。

 それぞれつま先を向ける先が別々にあって、着ているものがみんな違って、性別も年齢もバラバラで、それで、みんな何かしらを考えて生きている。

 そんな人たちが同じ場所ですれ違っているというのは面白いことなんじゃないかっていっつも思ってる。

 明日は違う場所で違う人生を歩んでいるだろうに、今日この一瞬だけは、同じ空気を吸っている。

 ロマンチック、とはちょっと違う。

 悪い人もいるし、嫌なこと考えてる人もいるだろうから、全部まとめてすばらしいって言っちゃうのはちょっと違うと思う。たまに駅で事件とか起きたりするしね。

 でも、そういったものもまとめて抱えてくれる懐の深さが駅にはあると思う。懐が深いなんて、どんな話でも聞いてくれるカイトくんみたいだ。

 つまり駅はスタートであり、ゴールであり、カイトくん。


「……フフ」


 陸上トラックでゴールテープの代わりにピンと張りつめられたカイトくんを想像してニヤついてしまう。手と足をそれぞれ別の人に抱えられて引っ張られているのだ。

 ペポン! と音が鳴った。

 びっくりして飛び跳ねる。比喩じゃなくて、たぶん一ミリくらいは浮いた。

 スマホの通知だ。理央ちゃんがもう少しで着くとのこと。気が付けばもうすぐ待ち合わせの時間だ。この後の予定に私の心は弾む。

 楽しみだな、チョコ買うの。


 渡す相手の顔を思い浮かべて、私はまたニヤついた。

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