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俺たちの未来(最終話)


 ――ゼロへ戻って


 深夜、ゼロの地に降り立った。

 息を大きく吸い込むと、今までの世界とはまったく違う匂いがした。

 それよりも、さほど戻りたいと思っていなかったこの世界を、案外自分が求めていたことに驚いた。

 この場所に戻れたことが感慨深かった。

「俺が最初に21へ立った竹芝ふ頭の近くだ。

 さてと、家に帰るか」

 サトルが言った。

「家に帰る……か。

 朝目覚めたら全部夢だったりして」

「夢だとしても、良い夢だったから許す。

 2度寝して続きを見てやる!」

 サトルのそのセリフに2人は顔を見合わせて笑った。

 複雑な心持ちだった。

 焦燥感はあるが、世界をまたぐことがあまりに簡単すぎて、またすぐ戻れそうな気がしていた。


 数日後、ユウキとサトルはハルに会った。

 泣きながらユウキとサトルを叱りつけるハルの言葉は支離滅裂で、それでも2人はうれしかった。

 別世界に一緒に冒険に行った仲間と再会できたのだから。

 

 賞金受け取りの手続きのためにグリーンゲートの支社へ行くユウキとサトルにハルも同行した。

 サトルはグリーンゲートと契約をしていたため、キャッシュカードやオンラインバンキング同様のアプリが入ったスマホも持っている。

 手続きはなく残高を確認さえすればよかった。

 シンガポールのグリーンバンク21で、全ての賞金は円建てでグリーンゲート社員口座として準備される。

 ユウキはキャシュカードやスマホを受け取り全ての手続きを終えた。

 あとはベースチップをどうするかの申告を行う。

 ベースチップを外した場合、その後の記憶のケアは専用のプログラムにそって、外した直後からサポートするから大丈夫だと言われた。


「俺はそのままで!」

 サトルが力強く言った。

「あなたはどうなさいますか?」

 ユウキも心は決まっていたが、少しためらうそぶりを見せた。


「ゆっくりで大丈夫ですよ。大概の方はここで黙ってしまわれます」

「なるほどね。俺みたいに心が決まっているやつは少ないってことか」

 サトルは何が自慢なのかわからないが、腕組みをしながらうれしそうだ。

「なんで偉そうなのか理解できなーい!」

 ハルが冷めた目でサトルを見た。


(あんなにたくさんのことがあったのに、パラレルワールドの記憶は、数分の作業で消せてしまう。

 簡単だな。

 普通の記憶は、消したくても消えてくれないのに。

 俺の選択は……)


「やっぱりな! 消さないと思ったよ!」

 グリーンゲート社の外階段を下りながらサトルがユウキの肩をたたいた。

「迷ったわけじゃなくて、自分に確認しただけだよ。

 手放したくない思い出がたくさんあるから、最初から消すって選択はなかった」


(パラレルワールドの思い出は、このさききっと俺を励まし続けてくれる)


「俺さ、あの招待状に感謝してる!」

 21の世界に行けたのも、もとをただせばモニークの書いた招待状のおかげだ」

「モニークどうしてるかなー。会いたいなー!」

「じゃあハルも21へ行くか?」

「いやいやいや、私はゼロから出ません!」

「なんだつまらないやつだな。 よし!」

 立ち止まったサトルは大きく息を吸い込んだ。


「君への招待状


 本気は見抜けない。

 本気は止められない。

 決意表明は自分を止めないため。

 死ぬのは自分の力だけじゃない。

 とめるには大きな刺激が必要だ。

 やめるには死なない場所が必要だ。

 飛び出さないか、死なない世界へ。

 羽ばたかないか、新しい世界へ。

 そこに死ぬ選択はないから。

 そこで死ぬ必要はないから。


 ――ご褒美をあげたい僕から」


「何回聞かせるんだよ!」

「しつこいよねー」

「うるさいなー!いいだろ!」

 3人は笑いながら駈けだした。


(パラレルワールドの冒険は終わってしまったけど、これから生きて行くことも冒険だ。

 俺はその冒険を思い切り楽しんでやる!)


 ――半年後。

 高校を半年以上休んでしまったユウキとサトルは2年に留年となった。

 それを見越してか、未来学園という学校からの案内が2人に届いた。

 未来学園はアークエンジェルとグリーンゲートが運営する学校でそこへ編入学することになった。

 高校の授業はオンラインだったが、学校に出向いて行う授業は未来学園独自の未来カリキュラム。

 21の技術や知識を習得するための授業が組まれていた。

 そのため授業時間は長かったが、オンライン授業に関しては繋げてさえいればよかった。

 持ち出しはできないが、学校内では21で仕様していたような、手首にはめる専用端末が支給されていた。


「もう半年だよ?

 21へのワームホールが全然開かない。

 まさか終了ってことはないよな?

 だとすればショックすぎる」

 サトルが机に突っ伏してぐったりしている。

「待つしかないさ。

 ダメならここで一緒に勉強しよう。

 ここも楽しいだろう?」

 ユウキは冷めた目でサトルを見る。

「いや、あきらめきれない!

 あの刺激的な世界を体験したら、ゼロの生活は緩すぎる。

 ユウキもそう思っているんだろう、本当は」


「どうかな……」

(本当はあの世界に戻りたい。

 でもあっちにいたら、リーシャとの距離を感じながら苦しむだけな気もする。

 向こうに行かないなら、せめてVRゲームができる施設を作りたい。

 それには今学ばなくちゃいけないことが山ほどある)


 電子音がなり、メッセージが届いた。

 ユウキとサトルは同時にメッセージを開く。


『君への招待状』


 メッセージの全文を読み終えたユウキとサトルは、顔を見合わせるとうなずき合った。

 リュックを掴んで教室を飛び出し、全速力で屋上へ向かう。


『君への招待状


 新しい世界が開いた。

 また冒険をしたくないか。

 仲間と一緒に楽しまないか。

 パラレルワールド8のワームホールが開かれた。

 飛び出す翼が残っているなら、いますぐここの屋上へ。


 ――サンジェスト


 2人は階段を駆け上がり屋上の扉を勢いよく開いた。

 ビューと強い風が吹き込み、その向こうに見えたのはユウキが始めて時空越えをしたときの巨大ルンバ。

「ぶっ、巨大ルンバだ!」

 サトルが吹きだし、ユウキも笑いながら、2人は機体に向け全力で走った。

 その先に立っていたのは、真っ赤な軍服を着込んだサンジェストと、横にはシュリの姿があった。


「やあ、君たち。また会えたね。今度は8で、ダイブしよう」


 ユウキとサトルはその場で思い切りジャンプして、拳を空に突き上げた。


 ―― 完 ――



 おまけ

 ――ユウキたちが15から21へ立った日。

 21から15へ来た兵士がマクベスからのメッセージをサンジェストへ届けた。

 メッセージを受け取ったサンジェストは、シュリとともに次のシップで21へ向かうことになった。

 21へ戻ったサンジェストは、マクベスとともに再び時空越えをする。


「マクベス、決定したのか?」

「ああ、各地にワームホールが出現していてな、しかも毎日だ。

 閉じた1時間後には次が開いてくれる。

 もし神と呼べる存在がいるなら、21の人間を救うために新しいワールドへの道を準備してくれたんじゃないかと思う。

 まだシップが足りないからそこはサンジェストとシイカに協力してもらいたい」

「もちろんだ、全面的に協力する」

 21の世界で、新しいパラレルワールドへのワームホールが次々に開きだした。

 行き先は全てパラレルワールド8。


「ありがとう。

 マッケン様も協力してくれるそうだ。

 不自由の残る体でグリーンゲートを引っ張って、21のために尽くしてくれている。

 何かに取り憑かれたように必死に仕事をしているそうだ。

 まあ、ミナトがそばについているから大丈夫だろう」


「そうか……。

 ところで、ここはゼロに近い形に落ち着いているそうだが、地殻変動の調査はこれからか?」

「ああ、地殻変動が一番恐ろしいが、その辺りはまだ未知だ。

 今主要都市を作り始めているが、行くところまで行って見るさ。

 地殻変動で壊されたらまた作るまでだ。

 1年もすれば調査ができるようになるだろう。

 すでに安定した地殻になっていて、老婆心かもしれないしな。

 1年後あたりから本格的に21は8へ引っ越しだ。

 数十もあるワームホールがほぼ開けっぱなしの状態だから、そうさな……10年はかからない。

 それと朗報だ。

 数日前から8に来ているジャキオの話なんだか。

 8に到着した直後、近くに強力な電磁波が湧いて、そこにゼロ行きのワームホールが出現したそうだ。

 そのワームホールはまだ試されていないが、ほぼ大丈夫だろう。

 そこにWHSを作って、次にそなえれば運行テストもすぐにできる。

 問題なければ、そこからゼロへ行ける」


「ほぉ、8からゼロへ行けるのか。

 よし、すぐにアークエンジェルを立ち上げる。

 15のアークエンジェルは父の物だから、8は私の物にする。

 未開の土地なら、壮大な遊び場が作れるな。

 透明な巨大ドームの中に冒険者の村やエッグブース、可動式の観戦ルーム。

 大都市の中の別世界。

 いいね、楽しくなってきた」


「そういう感覚はよくわからないが……。

 まあいい、私のような凡才には理解できない思考回路だ」

 マクベスは肩をすぼめて苦笑いした。

読んでくださった全ての方に感謝です。

ありがとうございました!

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