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新生国

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。


 コロニーでは、国を離れた貴族の館が滞在用の施設として準備されていた。

 まるごと借り入れされた建物には、青の砦の解放軍と、リーシャなど王府側の者たちだけが滞在する。

 会議用にセッティングされた部屋に、到着そうそう呼び出されたユウキたちは、ネオ21や茶の砦について質問攻めにされた。


 ユウキたちは、グリーン国の建国宣言を今日イライザが行ったことを話した。

 ラシア国王と21の政府軍がグリーンゲート社を乗っ取り、15の世界にワイトの種をまいたとイライザが演説し、グリーン国の国民になった者には、末代までの特別待遇を約束したことも伝えた。


 一方、サトルたちはなぜ21に戻らずにユウキの救出に来たのか。

 ユウキが拉致されたあと、サトルたちはファビオの計画通り黒の砦へ移った。

 そこから船でラシア国へ渡り港近くからヘリで王府へ入った。

 21から戻ったリーシャに会い、ユウキの話をしたところ、リーシャがユウキを探しに行くと言い出したため、サトルたちは同行させてほしいと願い出た。

 ファビオとツクタンとはそこで別れ、サトルたちはリーシャ付きの兵士として王府の身分証も手に入れた。


 黒の砦の解放軍は、ワイトを燃やす茶の砦と、ワイトの種を造りそれをばらまかせたイライザへの制裁を行うまでは、王府軍に全面協力することを約束していた。

 青の砦の解放軍統合司令本部はリーシャとの話し合いで、ワイトやイライザの真実を知った後に、共闘することに合意した。


「我らとの会合を、グリーン国の宣言をした翌日にしたのは、なにか意図があるのか……。

 明日の会合へ出席すべきかを考え直す必要がある」

 青の砦、解放軍統合司令本部、調整官のニコルソンが言った。


「国家元首として我々と話し合いをしたいがために、イライザは見栄をはったんだ。

 それで急ぎグリーン国を名乗った。盗っ人猛々しい」

 ジャッカルがフンっと鼻で笑った。


「建国を謳い国民の支持を取り付けた後に、会合で自らの権力を誇示する。

 口先だけではなく、君主として成り立っていることを周知させたかったのでは。

 対等か、それ以上だということを見せつけるはずだったのに、その晴れの舞台を台無しにされた。

 イライザはさぞ腹がたったでしょうね」

 リーシャが言った。


(俺たちは……どこまでこの争いに関わればいいんだろう)

 話し合いを聞いていたユウキはふと思った。

 行動を共にしてきた仲間たちは一刻も早く21やゼロへ帰ることを望んでいる。


(青の砦の人たちと王府軍には助けてもらった恩がある。

 リーシャが俺を探し当ててくれなかったら、今頃は茶の砦で拘束されていた。

 でも15の争いにこれ以上巻き込まれていたら……。

 ここで足踏みをしている間に、仲間の未来の時間は減っていく。

 みんなをゼロへ帰したい。

 俺はどうすることを望んでいるんだ。

 リーシャは……彼女は、俺たちが去っても、ここで戦っていかなきゃならない)

 答えを出すことは難しくないのに、それをためらうのは心にリーシャのことが引っかかっていたからだった。


 思案していた様子のニコルソンが、テーブルの上を指で軽く叩いた。

「やはり……。

 イライザは、グリーン国が王府や解放軍とは一線を画すかたちで政権運営をしていくと宣言したいんだ。

 公式の会合の場で解放軍統合司令本部にはそのことを伝えたと、既成事実を作るため我々を呼び寄せた。

 だとすれば、そんな茶番に付き合うつもりはない」

 ジャッカルはニコルソンの言ったことに大きくうなずいた。


「よし、青の砦に帰るぞ。

 会合を正式に断る理由は、先ほどのもめ事を使おう。

 問題が起きたからいったん帰るというのは不自然ではない。

 そうと決まれば、この敵の陣地からさっさと出て行こう」

 ニコルソンはそう言って席を立った。


「ジャッカル、帰り支度を急がせろ。

 諸君、協力を感謝する。君たちのおかげで、イライザにつられずに済んだ。

 君たちの働きは……おっと、軍人ではなかったな。

 何か望みがあれば言ってくれたまえ。出来ることなら叶えよう」


 ニコルソンとジャッカルが部屋から出て行くのを見計らい、リーシャが話し出した。

「青の砦に戻ったら、みなさん疲れていると思うけど、すぐに王府へ向けて出発します。

 私はイライザの会合に呼ばれていたわけではなくて、調整官に頼んでついてきただけなの。

 青の砦での話し合いは済んでいるから、もう砦に用はないわ。

 王府へ行く前に、新生国へ立ち寄るので、そこでゆっくり休んでください。

 先ほどの調整官たちの様子だと、ここを出発するのは間もなくでしょう。

 あなた方の、21への帰還に向けての打ち合わせは、新生国に着いてから行います」


「おお!いよいよ帰ることが現実味を帯びてきた!」

 サトルがうれしそうにそう言ってユウキを見たが、ユウキはテーブルに目を落としたまま反応がない。


「おい、聞いているかユウキ?」

 サトルがユウキの顔をのぞき込んだ。

「あ、ごめん。 何の話だった?」


「21へ帰るのが近づいたんだよ!って、お前疲れてるな。

 そりゃそうだよな、さっきまで……」


「みんな戻るよね?21に」

 サトルの話を遮って、ユウキがつぶやいた。


「どうしたユウキ。当たり前だろう、そのためにネオ21から脱出したんだ」

 ビスワが言った。

「もしかしたら……自分たちだけ15から逃げてしまうようで、罪悪感を感じているのですか?ユウキ」

 シュウが聞いた。

「わからない……でも、リーシャはここに残っていろいろなことと闘っていくでしょ?

 リーシャだって仲間には変わりないのに……」

 その言葉を聞いたリーシャは、大きな目をさらに大きく見開いてユウキを見つめた。


「ユウキ、実はな。おいらやレミはここに残るつもりなんだ。

 おいらたちは21の人間だから、ここで起きている問題に無関係じゃないし、首をつっこむ覚悟をしたんだ。

 だがな、ゼロ民であるお前たちは帰ればいい。

 その分、おいらたちががんばるから気兼ねせずに帰れ」

 ルイバディがそう言って、レミもうなずいている。


「僕は……帰りたいです」

 ラバスが言った。

「正直でいいよ、ラバス。それが正解」

 レミがそう言うと、ラバスは申し訳なさそうにはにかんだ。


「とりあえず、出発までに食事や仮眠を取らないか?

 疲れすぎて頭も回らないし、少しでも眠りたい」

 バルの言葉にみんな納得して、席を立ち部屋を出て行った。


「リーシャ!」

 勢いよく立ち上がったユウキはリーシャを呼び止めた。

 バッチや仲間たちは気を利かせたのか黙って部屋から出て行った。


「その……少し話ができないか?」

 リーシャはコクリとうなずいて、先に立って歩き出し、ユウキはそのあとをついていく。

 今まで話し合いをしていた部屋の隅にある扉から2人はバルコニーに出た。

 生ぬるい夜風が吹き抜け、リーシャのゆるいウェーブのきいた赤い髪が大きく揺れる。

 ユウキはバルコニーの手すりに腕をおくと両手を握りしめた。


「突然声が聞こえた。あとで君の声だって気づいたんだ。

 助けるって言ってくれて……それで、本当に助けられた。

 ありがとう」

 ユウキは照れくさくて、リーシャの顔を見ずにお礼を言った。


「不思議よね。声を出さずに意思を通わせることができるなんて」

「そうだね。でも言葉というか念というか……送るときはかなり力を使う。

 頭が重くなって、短い間しかできない。

 脳に力が入らなくなるというか……念みたいなものが出せなくなる。

 うまく説明できないけど、もうだめだってことはわかる」


「確かにものすごく疲れるし頭が重くなる。

 これも訓練できるのかな……」

 そう言ってこめかみの辺りをリーシャは指で触った。


「やっとこの世界へ帰れたね。

 おめでとう……でいいのかな?」


「ええ、ありがとう。本当に長かった。

 帰ってみるとね、あんなに恋しかった家族や故郷が、以前と代わり映えのない日常を送っていたことにがっかりしたわ。

 ただ上に据えられたまま、下の方ではその足場を外す作業が着々と進められているというのに。

 私は21から、たくさんの情報と技術、そして人を連れてきた。

 私が帰還したことを、うとましく思った貴族たちから執拗に嫌がらせを受けたわ。

 かろうじてまだ足場は健在で、ラシアの軍隊……今は王府軍に属しているけど、その人たちの忠義は変わっていなかった。

 兄様を王にしたいと提案したの。

 王は……父様は兄様に王の座を譲っても良いと言ったけど、反対したのは一部の貴族。

 私を21へ送り出した、イライザと手を組んでいる者たちよ」


「え? それがわかっていて、どうしてそんな奴らをのさばらせておくの?」


「王がダメなの。王の心は、とうの昔に折られてしまった」


 リーシャは、力を失った王家の威厳を取り戻し兄を王にするため、王族として大きな活躍をする必要があった。

 絶対的な味方を作ることと、国や世界のために働いたことの既成事実を作るため、自分が奔走することを決意していた。

 解放軍司令本部に会合の打診をした理由は、イライザに対抗する手を組む仲間を増やすことはもちろん、王府にいるアッシビー国王の復権を了承してもらうためでもあった。

 アッシビー国王は、ワイトの問題が解決に向けて動き出していることを知り、少し前から国に帰り王族として復権する方法を模索していた。

 そこへリーシャが、青の砦の解放軍との橋渡しを申し出た。

 橋渡しがうまくいった暁には、その見返りとして、何があっても無条件でラシア国王の味方でいることを約束させた。


 解放軍統合司令本部、総司令官のガザは、リーシャとの話し合いで、ワイトの問題が解決するまで、青の砦のすることに王族が口出しをしないことを条件に、アッシビー国王の復権を了承した。

 もともと国軍の兵士たちの集まりで、筋を通せば説得はしやすく、ワイトの問題が片付けばまた国に忠義を尽くすとガザは言った。


「ガザを説得するのに奥の手を使ったわ。

 ワイトを救う方法が見つかったことを伝えたの」


「あ……それってもしかして、あまり現実的じゃないって……あれ?」

「ううん、あっという間に人に戻せるわ」

「ええ! それって、すごいことだよね!」

 ユウキはリーシャの両肩を掴んだ。


「ワイトがいなくなればリーシャ、君も安全に暮らせる!」

 そう言って思わずリーシャを抱きしめた。


「あ、ああ、ごめん」

 すぐに体を離してユウキは頭をかいた。

「ありがとう、ユウキ」

 リーシャは満面の笑みでユウキに言った。


(か、かわいい……って、まずい、顔赤くなってないか!)

 ユウキはごまかすために言葉を探した。

「その、ワイトを救う方法って……まだ発表されていないの?」


「ええ、まだだけど、もうじき発表されるはずよ。

 イライザたちもすぐにその方法を探り当てるはず。

 ガザを味方に付けることができたのは大きかった。

 争わずに相手を屈服させたかったから、一番ほしい味方だった。

 ネオ21が本格稼働してしまう前に」


「戦わずして勝つ……それを実践するのか。 すごいねリーシャ」

(俺なんかよりずっと大人だし、優秀だ。

 苦しんだから早く大人になれたのかな……リーシャ)


 青の砦までは6時間ほどかかり、到着したときは日が昇っていた。

 そこから新生国までは8時間ほどかかって、到着したときはすでに夜になっていた。

 新生国の夜景をヘリから除いた一同は驚いた。

 まだ原野ばかりだが、都心部は確実に21の世界だった。

 反射して中が見えにくいビル群、空中に走る透明なパイプはカプセルカーの道。

 まだ工事中の所ばかりだが、ネオ21よりも美しい都市ができあがりつつあった。


 ヘリが着陸したのはビルの屋上にある巨大な駐機場だった。

 ヘリから降りて案内のスタッフの指示で屋内に入ると、タンカースキャップのような耳当てのついた帽子をかぶった男性と、リーシャの侍女ベスが出迎えた。


「おお? サトルか?!」

「あー! バッチさん!」

 サトルはバッチに飛びつき、バッチはよろけながらもそれを受け止めた。

「リーシャと一緒に出発したって聞いた時は驚いたが、とにかく無事でなによりだ!

 顔を見るのは海賊ゲーム以来だな」


(バッチ……名前は聞き覚えがある。

 リーシャと一緒に15から21に来ていた人だよな、確か)


「うん、無事でいられたのは、リーシャ……リーシャ王女のおかげ。

 ユウキたちも助けてもらったんだ!」

「さすがリーシャ様。

 お疲れ様でございました。

 青の砦の者たちと一緒に、ネオ21に向かったと聞いたときは肝を冷やしましたぞ」

 バッチはリーシャに近づくと両手でリーシャの手を握った。


「心配かけました。結局イライザのもとには行きませんでしたが、収穫はありました。

 サトル、リーシャって呼んでくれていいわ」

「あ、ああ、わかった!

 リーシャの案内がなかったらユウキたちは今頃、茶の砦で拘束されていたかワイトになってたよ!

 ユウキの居場所がなぜわかったのかは謎だけど、細かいことはどうでもいい!」


「ほほ、そうだな、みんな助かったならそれでいい」

 バッチはチラリとリーシャと目を合わせた後、サトルにそう言った。

「そういえばさ、バッチって軍事装備品研究者でしょ? なんでここにいるの?」


「そ、それはだな……」


「私がお願いしたの。

 ここでは信用できる人が少ないから。

 それにバッチは博識だし、実践の腕もたつのよ。

 最近は新生国にご執心だから、ここのことも詳しいわ」


「へえぇー、そうか! ゲームだけじゃなくて実践も強いの?

 今度勝負しよう!」

「ハハ、望むところだ、サトル!」


 バッチは15からリーシャと一緒に21に来ていた軍事装備品研究者で、サンジェストのゲーム仲間でもあった。

 リーシャと侍女のベスは、滞在場所がみんなとは違うため、ここで別れた。


「まだペンタグラムベースが完成していないから、軍事用の航空機は待機場のあるビルに降りている。

 なんせここは、メインパレットの1街区。原っぱなんかないからね」

 横移動のエレベーターを操作しながらバッチが説明した。


「ちょっ……ペンタグラムベースとかメインパレットって、21と名前が同じなの?!」

 サトルが聞いた。

「ああ、すべて似せて作っている」

 見渡すと、施設内の造りや色味も21とそっくりだった。

「建造物の配置や形は違うが、カプセルカーなんかも同じだよ。まだ3街区あたりまでしか開通していないけど」


 到着したビルから別のビルに移動し、案内されたフリースペースは、深夜のため誰もいなかった。

 そこにはいくつかのテーブルが並び、その上に軽食や飲み物が置かれていた。


「それぞれに部屋を準備したが、手首につける端末までは準備できなかった。

 部屋に備え付けてある端末があるから、それで対応してほしい。

 着替えと、軽食や飲み物も部屋に届けさせてある。

 ゆっくり眠って疲れを取ってくれ。

 話やなんかは明日になってからで!」


「ありがとうバッチ。

 やっとベッドで眠れる。

 そういえばこの国って、代表っていうか国王はいるの?

 21みたいに政府だけ?」

 サトルが聞いた。


「国王はフィリップ様。21民で大きな会社の創業者だったらしい」

「ふーん。フィリップって、どっかで聞いた名前だけど。誰だったかな……」

 レミが首をかしげながらそう言った

「あ、思い出した。行方知れずになった、サンジェスト様の父親じゃ……」

「ああ! そうだ! 15へ行ったきり行方が知れないってサンは言ってたけど、もしかして嘘だった?」

 サトルは食べているサンドイッチを口からこぼしながらそう言った。


「いや、嘘じゃないよ」

 声のした方にみんな一斉に振り向くと、そこに立っていたのはシュリだった。


「おお、シュリ!来てくれたのか!」

 バッチが言った。

「もちろん。ここにいるのは知り合いばかりだからね。

 久しぶりだね、みんな。無事で良かった」


「シュリさん!15に来ていたんですか?!」

 ユウキが叫んだ。


「ああ、15というより、この場所に……。

 ちょっと周りを見て、ユウキ。

 気づかないか?」

 そうシュリに言われ、ユウキは周囲を見回した。


「ああ! この建物、やたらと赤い!」

「そう、ここはアークエンジェル社だ。

 ここでの仕事があるから、しばらくは15にいる」

 シュリはそう言うとユウキの隣に座った。


「サンの父親である、フィリップ様が作った会社だ。

 フィリップ様は連絡をまめに取るような人じゃなくてね。

 15の世界で興味があることが多すぎて、連絡をし忘れていただけじゃないかな。

 天才というより奇才な感じが、サンによく似ている。

 新生国がこの速度で建国できたのもフィリップ様だからだ。

 最近は、サンとまめに連絡を取り合っているよ」


「え?21の世界と簡単に連絡がとれるの?」

 レミが聞いた。

「いや、そうじゃなくて……」


「諸君! 久しぶりだね! 僕と冒険者の村に行かないか?」

 そこに現れたのは真っ赤なパイロットスーツを着たサンジェストだった。

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