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波長

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。


 フリカ国へ、ヘリを逃がすためにおとりになり、不利なことを承知でバクシスの交換条件を蹴ったこの仲間たちを、ユウキはどうしても救いたかった。

(何か手はないのか……本当に、ここまでなのか!)


『ユウキ……ユウキ』

 そのとき、誰かのささやきが聞こえた。

 流星群が流れた夜に聞いたささやきは、いくつかの声が重なったような不明瞭なものだったが、今聞こえてきた声は、すぐそばで話しているようなはっきりとしたものだった。


(こんなときに、幻聴か?! 俺の頭おかしくなったのかよ……)


『大丈夫、私があなたを……助ける……か……ら』

 声はとぎれとぎれになり消えていく。

『待って! 君はいったい!』

 ユウキは心で叫んだが、バフッと風の音が耳に入り、それ以上彼女の声が聞こえてくることはなかった。


 ヘリから20名ほどの兵士が降下し、中の1人が手を上げると、ヘリは上昇していったんその場を離れ、そこで待機した。

「みんな、すまなかった。

 おとりに名乗りを上げてくれてありがとう。

 俺の作戦が甘かった……本当にすまない」


「謝るなビスワ。誰のせいでもない。

 恨みっこなしってシュウさんが言っただろ?」

 ヘリで逃げた仲間は無事にフリカへ到着できるさ!

 俺たちの作戦は成功したんだよ」

 バルはそう言ってビスワの肩に手をおいた。


「あきらめるのは……あきらめるのは、まだ早い!」

 ユウキが声を押さえながら、強く言った。


「クソッ……涙で見えない。

 あのヘルメットのステッカーは……」

 ユウキはヘリから降りてきた兵士を指さした。

 降り立った兵士たちのヘルメットには、手書きでは無く整った21★ZEROの文字が見えた。


「俺の仲間だ!」

 ユウキは叫んだ。

 そのステッカーを着けた兵たちは、ゴーグルで顔は隠れているが、背格好でだいたい誰だか予想がついた。

 ユウキのもとに、真っ先に駈けてきたのは。


「サトル!」

「ユウキ!」

 2人は強く抱き合った。


「ど、どうして……21に戻ったんじゃ……」

 サトルを引き離すと、喜びながらも戸惑いを隠せないユウキがそう言った。

 そこにレミ、ラバス、ルイバディ、モニークと、他のメンバーも走ってきた。


「ユウキ! 無事で良かった!」

 ラバスが泣いているのがわかる。

「なんで……なんでみんな、21に戻らなかったの!」


「いいじゃないかユウキ。 みんな好きで残ったんだ。

 しかしまあ、大丈夫と信じていたけど、顔をみるまでは心配だった。

 うれしいよ」

 レミが言った。


「な、なにが起きてる。この人たちは敵じゃないのか?」

 ビスワはそう言ってバルを見た。

 他のメンバーも顔を見合わせて困惑していた。


「ここに来たいきさつは、あとで話すな。

 とにかく無事でいてくれて良かった」

 ルイバディは、ガハハと笑いながらそう言った。

「ユウキ、もう大丈夫。 今からはずっと一緒だ。

 心強い後ろ盾もできたんだ。

 その人が僕たちをここへ連れてきてくれた」

 モニークが言った。


「え、後ろ盾って……}

 ユウキがそう言いかけたとき、バクシスが大声で怒鳴った。

「お、おい! なんだおまえら!

 こっちの仲間かと思ったが、どこのもんだ!」

 顔を真っ赤にしていることが想像できる怒鳴り声だった。


 ルイバディたちは小走りに、バクシスたちの前に立ち、両手で銃のような物を構えた。

 ユウキたちは邪魔にならないようすぐに後退した。

 20名ほどの兵士たちが一斉に茶の兵に銃口のようなものを向ける。


 たじろいだバクシスたちは後ずさりをした。

「冗談はよしてくれよ……ま、まさか銃じゃ」

 バクシスのそばにいた兵が言った。


「これはテスラガンだよ。見るのは初めてか?

 まあ15の世界では作れない代物だ。

 ゼロから入手した設計図をもとに21で対人用に小型化したものだ。

 死なないとは思うが、意識は簡単にふっとぶし、かなり痛いらしいぞ」

 ルイバディが言った。


「無駄な抵抗はやめて、この場から兵を引きなさい!」

 ヘリの音に負けない、女性の大きな声が響く。

 兵士たちの間を縫って、白い装備の女性が前に出てきた。


「なんだ貴様!俺たちとやりあう気か?

 数だけならこっちの方が多いぜ!」


 ブゥンっと低い音がして、女性の白い装備の表面が赤く発光した。

「リーシャ……」

 ユウキはそのとき、自分にささやきかけたのも、今、目の前にいるのもリーシャだと気づいた。


『リーシャ、君だったのか……あのささやきは』

 ユウキは心の中で話しかけた。

『ええ、あなたを助けにきたわ。

 15に戻ってから、あなたの波長をずっと探していた。

 流星群が通過したとき、あなたを感じた。

 それ以来、あなたを探しやすくなった。

 きっとどこにいても、見つけられる』


「お、おい! 体が赤く光ってるぞ! あの黄色く光ったやつと同じタイプじゃないか?!」

「あんなのが2人もいたら、いくら人数が多くてもかなわない……しかも変な銃まであるし」

「うるせーぞ、お前ら! た、たんまり報酬もらってるだろ! 働けや!」

 明らかに敵の兵士たちは尻込みしている。


「私1人で全員倒せます。手加減はしません。

 私はラシア国の第2王女、リーシャ。

 私と戦うなら、茶の砦は王府軍に宣戦布告をしたとみなします。

 解放軍と王府軍は敵対こそすれ、暗黙の了解で直接的な戦いは避けてきました。

 ですが、仕掛けられたら私は受けて立ちます」


「なっ……! 第2王女って……」

 驚いたバクシスは、それ以上言葉が出てこなかった。

 敵兵たちは王女と言う言葉を口にしながら動揺している。


「王女って……マジか」

 バルがつぶやいた。


「私は今頭にきています。

 何をしでかすかわかりません」


 バクシスはソードを肩にかついで一呼吸した。

「あのさ……。ここはあんたの国じゃない。

 そっちから戦いを仕掛けてきたって思われても、言い訳できないんじゃないか?

 ひとんちで好き勝手していいのかよ、王女様!」


「それじゃあ、ここで何をしていたのか、説明してもらおうか?

 私は、青の砦、解放軍統合司令本部、南部警戒師団長のジャッカルだ」

 リーシャの横に並んだジャッカルのヘルメットには、団長を示すグレーのラインが入っている。


「我々はネオ21という都市の存在を知り、以前から話し合いの場を設けるよう茶の砦を通じて打診をしてきた。

 一向に返事をもらえなかったのだが、先日招待を受けた。

 それが明日だ。

 ここはまっとうな航路だ。

 たまたま争いを見つけ、降りたまでだが、招待客と一悶着起こして無事で済むほど、君は階級が高いのかい?」


「ふん、見え透いた言い訳だ。

 おかしいじゃないか。

 降り立ったところに知り合いがいたってか?

 不自然だろう!」


「ああ、この者たちはリーシャ様のおつきの兵だが、ヘルメットの文字を見てもわかるだろう、ゼロ民だ。

 そっちの者たちも同じ文字を書いている。

 たまたま同郷の者が遭遇しただけだ。

 これ以上難癖をつけるなら、君たちを捕縛して、ここに置いていくがそれでもいいか?

 勝ち目がないのはわかっているはずだ」


「チッ!」

 バクシスはきびすを返し、持っていたソードを高く上にあげた。

「ひきあげだ!」

 ソードの先端をジャッカルに向け、一睨みするとバクシスは車に乗り込んだ。

 車両やバイクは一斉に引き上げていった。


「ユウキ、俺たち……」

 ゴーグルを収めながら、ビスワがユウキを見た。

「うん、もう大丈夫!」


「ウォォォ!」

 バルは両手で拳を握りしめ、天を仰ぐようにのけぞった。

 ヘルメットを脱ぎ捨ててマルコムやペッツが抱き合っている。

 大泣きしているメルケンの肩をたたきながら、シュウがほほえんでいた。


「みんな!」

 ユウキはヘルメットを脱ぎ捨て、サトルたちのもとに走った。


「すごいよ!こんな偶然あるんだな……信じられない!

 もう絶対だめだと思ったんだ。

 助けてもらったのが、みんなだったなんて!

 ヘルメットの文字を見たとき、本当に胸が熱くなった!」


「いやあ、それが偶然でもないんだ。

 確かにニッキからの情報でユウキたちが脱出を決行しようとしているのは知っていた。

 だが正確な日付はわからなかったんだ。

 まあ、おいらたちがなぜ青の砦の部隊と一緒にいるのか、詳しいことは後で話すが、とにかくユウキを見つけたのは偶然じゃない」

 ルイバディが言った。


「どういうこと?」


「リーシャ様が、ここへ向かうよう頼んできたんだ」

 ジャッカルが割って入った。


「え……」


「我々はネオ21からの招待を受け、明日会合を行う。

 今夜はここから少し北にあるコロニーに滞在する予定だ。

 話はコロニーに場所を移してからにしようか」

 ジャッカルが言った。


 一行はヘリにのり、滞在予定だった、茶の砦とアッシビー国の国境のほぼ中間地点にあるコロニーに向かった。


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