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嘘か誠か(2)

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。

次回投稿予定日は未定です。今月中にあと1話か2話投稿予定です。


(ジャッジビー国には王族がいないのに、どうしてネオ21に王宮があるのかずっと不思議だった。

 イライザのためだったのか!)

 国ではなく、ただの都市であるネオ21に、王宮が存在することは誰が見ても不自然だった。

(イライザはジャッジビー国の王になるつもりなのか?

 それとも……まさかネオ21を国にするのか?!

 いずれにしても、最初から王になる筋書きは出来ていたんだ。

 昨日今日の話じゃない)

 ネオ21の都市計画に、最初から王宮建設が含まれていたなら、そこにイライザが鎮座することは何年も前から決まっていたのだとユウキは思った。

(ずっと前から、イライザは王になることを望んでいたんだ。

 そのことのためのワイトだったのか?

 簡単にことを運ぶため、世界を混乱させるためにワイトの種をばらまいたなら、イライザの命だけじゃ安すぎる)


 ユウキは1街区、バルは2街区で待機していた。

 小爆発が始まったら混乱を始める群衆に紛れ、ポールの制御部に爆発物を仕掛ける。

 設置から修繕屋まで走って戻る時間の制限は20分。

 バギー奪還組は30分をめどに修繕屋への到着を目指す。


「ラシア国王と21の政府軍がワイトの種をまいたって? そんなこと信じられるか?」

「初めて見た女の言うことを、信じろって方が無理だ」

「もし嘘を言って俺たちを煽っているとすれば、許せんな!」

 群衆の中には、懐疑的な物言いをする人たちが多くいた。

「おい、証拠はあるのか! 証拠を出せ!」

 モニターに向かって、いくら不平不満を叫んでも、イライザは王宮の中にいる。


「シーッ! 演説が聞こえないだろ!」

 衝撃的な内容に動揺した群衆は、口々に好きなことを言って騒ぎ始めた。

 そのとき、モニター越しのイライザが声を荒げた。


「うるさい、黙れ。

 こちらのモニターに、あなたがたの姿が映し出されています。

 そしてあなた方の声は、この部屋まで響いています。

 言いたいことがあるなら、私の話が終わってからにしなさい。

 騒ぐ者はネオ21から追い出します」


 あっという間に群衆は静かになった。


「先ほどの話の続きをいたしましょう。

 なぜラシア国王と21の政府が、寄生植物であるワイトの種を作り、それを15にばらまくことにしたのか。

 まず、ラシア国の目的は、全ての国を従えてこの世界を統一すること、そして21の政府の目的は、15への移住と21民の国を作ることです。

 その目的を容易に果たすためにワイトを使い、各国の国力をそぎ、機動力を失わせ、世界を混乱させました。

 現在、ラシア国の王都には、アッシビー、フリカの王族が身を寄せ、王府と呼ばれています。

 王府と名付けたのは、アッシビー、フリカの王族の意向をくんだと言われていますが、それは嘘です。

 その2国の王族は捕らわれているのです。

 アッシビーの北東、ラシアの西南に位置する豊かで広大な土地は、21民の移住地として寄贈され、開発が進められています。

 そしてそこは、新生国という国家として認められているのです。

 誰がその土地を寄贈し、新生国を国家として認めたのか。

 それはラシア国王です。

 ワイトで混乱するただ中、自分の持ち物でもない土地を勝手に寄贈し、ラシア国王の判断だけで、新国家を認めたのです。

 これからも、ラシア国王の傍若無人な行為は止まらないでしょう。

 こうした情報を流してくれているのは、ラシア国の一部の貴族たちで、我らと志を同じにする者たちです。

 ワイトにより住む場所も限られ、不自由な生活を強いられる中、裏でこのような謀略が進んでいることなど、だれが想像できましょう。

 挙げ句の果てに、ワイトを作ったのがグリーンゲートであると、濡れ衣を着せられ、私は21での全ての権利を剥奪されました。

 そしてグリーンゲート社は、現在王府で絶大な力を持つベーカー博士の、21に住む娘の手に渡ってしまった。

 私の屈辱はさることながら、ワイトをこの世に生み出したことへの償いは必ずさせなければなりません」


(ベーカー博士って……シイカ様の父親。

 それらしい目的と証拠のように感じてしまう内容まで出してきた。

 なんだよこの説得力……話がうまくできすぎてる。

 確証も得られない内容なのに、証拠をだされたような勘違いをしてしまう。

 ここで言っている目的は、イライザの目的だと思うけど……。

 この話……嘘だよな?

 ファビオから聞いた王府側の情報が真実のはずだけど、それも確証があるわけじゃない……)

 ユウキは何が真実なのかわからなくなった。


(もし、イライザが言っていることが本当だとしたら。

 どうやって見極めればいいのかわからない)


 脱出を目前にした今の状況で、これまで起きたことを思い起こしたり、落ち着いて考える余裕など到底なかった。

(考えてもわからない……バルが言ったようにゼロに帰ることだけに集中しよう。

 嘘か本当かを暴くのは、俺の役目じゃないし、やろうと思ってもできっこない)

 ユウキはきつく口を結ぶと、モニターの建っているポールを囲っている1メートルほどの高さの、柵のそばに立った。


「今ここに、グリーン国の建国を宣言いたします。

 もうジャッジビー国は存在しません。

 国の中心となる都市はここ、ネオ21。

 これよりグリーン国は、平和な15の世界を取り戻すため、悪しき者たちと全力で戦います。

 必ずやワイトを人に戻す方法も探り当てましょう。

 我らの考えに賛同し、忠誠を誓うのであれば、なんぴとも拒まない。

 この機にグリーン国の国民になった者を、第一国民と呼び、末代までの特別待遇を約束します。

 みなの力を貸してほしい」


(グリーン国って……。マジかよ、そうきたか)

 ユウキはあきれたように苦笑した。


 群衆はどう反応していいのかわからずにいた。

 この話が真実かどうかの見極めをできる者もいない。

 誰かがパチパチと拍手を始めると、つられるように手を叩く者が現れ、波のようにそれが全体に伝わっていった。


「すぐに信じろって言われても無理だが……ここから追い出されても困るし」

「ここにいれば、勝ち組になれそうな気がするぞ」

「そうだな、今はここで生きて行く選択が正解だと思う。ネオ21で働けたおかげで生活にも困らない」

「ここは腹をくくって、この国に忠誠を……」

 半ばあきらめたかのように、自分を納得させる言い訳を並べ立て賛同していく群衆の拍手は、次第に大きくなっていった。

 歓声や指笛、応援の声もあがり妙な盛り上がりをみせていく。


(みんな……適当だな。

 俺だってゼロに帰る目的がなければ、こんな感じだったかもしれない)


 画面が切り替わり、ジェームズが映し出された。

「はーい、ジェームズです。

 イライザ様のすばらしいお話、ジェームズの心に突き刺さりました!

 生涯グリーン国に忠誠を誓います!

 それではこれより、建国のセレモニーへ移行いたします!

 イライザ様がお召し替えを行い、再登場するまで……」


 そのとき小爆発が始まった。

 あちらこちらで閃光とともに爆発の音が聞こえる。


 ユウキは黒いキャップを深くかぶり直すと、黒いマスクで口元を覆った。

(よし、いくぞ)


 何が起きたか把握できない人たちは、どこへむかうでもなく逃げ始めた。

 爆発の近くにいた人々は、大きな音と光に驚き、悲鳴を上げながら人垣をかきわけた。

 混雑のなかで転倒する者や、道をふさいでいる者を殴る者まで出てきた。

 こうなると集団ヒステリー状態で、少しばかりの説得ではこの騒ぎは収まらない。


 ユウキは混乱に乗じて、柵を飛び越えポールに近づくとズボンのサイドポケットから筒状の爆弾を取り出した。

 ポール脇を通り過ぎながら、爆弾の磁石部分を制御盤のフタの上に貼り付け、再び柵を跳び越えると、走ってその場を後にした。

 人混みを縫うように修繕屋へ向かう。

 ドゥンっと鈍い音とともに、後方で悲鳴が上がった。

 接触するほど近くにいなければ、ケガはしないはずだが、悲鳴を聞いたユウキは誰かが傷ついていないか気になった。

 近くにあった小さな噴水の縁に上がりポールの方を見ると、その辺りだけは人がはけていて、ポールの下部からシューシューと花火のようなすだれ上に落ちる炎のラインが見えた。


(大丈夫そうだ……)

 ポールの柵の中に誰も入っていないことを確認し、噴水の縁から飛び降りるともう後ろは振り向かなかった。


「おい、モニターも消えたぞ! どうなってる!」

「早くここから逃げたほうがいいわ!」

 人々の会話でモニターが消えたことは確認できた。


 そのころ王宮内では、衣装替えをしていたイライザの部屋に、血相を抱えた側仕えの1人が飛び込んできた。

 王都のあちらこちらで爆発が起こっていることと、1街区と2街区のモニターが破壊されたことも伝えられた。


「ええい、建国のセレモニーを邪魔しおって!

 謀反人を即刻捕らえて、始末しなさい!」


「はっ! ただちに!」

 側仕えが外の兵に連絡をするため部屋から出て行った。

 イライザは頭につけた飾りをむしり取り床に投げつけた。

 身支度を手伝っていた者たちはどうしていいのかわからず顔を見合わせた。


 ユウキが修繕屋の裏口へまわると、そこには面識のない若者が立っていた。

 その若者はユウキが預けたリュックを手渡した。

「ここの修繕屋の者です。ビスワさんから案内するように言われて。

 すぐに隣のガレージに向かってください。

 あそこ……光が漏れている所です」


「わかった、ありがとう」

 リュックを受け取り隣のガレージに向かおうとしたところに、息をきらしてバルが走ってきた。

 バルは無言のままユウキと片手を握りあってハグをした。

 そばにいた若者がバルにもリュックを渡した。

「ご無事でなによりです。

 バギー部隊が到着するまで、隣のガレージで身支度を整えて待機してください」


 2人がガレージに入ると、みんな近寄って肩をたたいたり言葉をかけてきた。

 その中に見たことのない初老の男性が、腕組みをして立っていた。


「え、10人になったんですか?」

 ユウキが聞いた。

「ああ、いやこの人は、この修繕屋のボスだよ。

 バギーに照明を付けてくれるって言うから」

 ビスワがそう言った。


「おお、5分で付けてやる。

 今夜の事件に俺は関係ないし、何も知らない。

 お前の尻は拭かないが、照明は餞別だ」

「はいはい、ありがたくちょうだいいたします」

 そう言ってビスワは笑った。


「ワイトにせよ敵兵にせよ、暗い中で戦えば、味方をやりかねない。

 蛍光マーカーを持たせるから、バギーに乗ったらみんな靴や手元、それにヘルメットにも塗るんだぞ。

 敵に見つかるより相打ちの方が怖いからな。

 それと、ビスワ……死ぬんじゃないぞ」


「ああ……絶対死なないよ。

 世話になったね、ボス。

 ってか、俺が世話してやったのか?

 ハハハ!」


「なんだとこの……相変わらず生意気な。

 その減らず口も聞き納めか」

 そう言ってビスワに手を差し出した。

 ビスワはボスの手を握り、その上に手をのせた。

「今までありがとうございました」

「ケッ、そんな言い方は似合わねえよ」

「ヘヘ……」


「バギーが到着しました!」

 裏口に立っていた若者が叫んだ。


「よし、ひと仕事だ」

 そう言ってボスは、頭に乗せていた溶接用のゴーグルを目にかけた。


 到着したバギーの前後、左右側面にサーチライトタイプの照明が付けられ、バッテリーも増設された。

 照明の設置をしている間に、ユウキとバルは急いで身支度を整えた。

 フォーススーツの上に、防刃で爆破にも耐えられ、胸にはセラミックプレートが入っているボディーアーマーを着用すると、黒いヘルメットをかぶった。

 脳波に順応するよう視覚制御を行うゴーグルは、ヘルメットの横のボタンを押すと両サイドに隠れる。

 アッシビー組の9名は全員がフォース持ちで、武器は多少違いがあるが、防具はみな同じものを装着している。


 照明の設置が終わると、2台のバギーは勢いよくガレージを飛び出した。

 振り向くと、ガレージの外には修繕屋のボスと若者が並んで、去って行くバギーを見ていた。


(走り出した、もう後戻りはできない)

 ユウキは恐怖とはまた違う緊張感で体が熱くなるのを感じた。

 フォーススーツと脳波を伝達するヘルメットをかぶった時点で、気持ちというより脳に対して敏感に体が反応してしまうのを感じていた。


 バギー同士は無線で会話ができる。

 9名を乗せた2台のバギーは、検問所が解放されている北の出口に向かった。


「この騒ぎで検問が再開しているかもしれない。赤色灯をまわしてくれ。

 止められても慌てずに、上からの指示で茶の砦へ向かうと言えばいい」

 バルが言った。


「了解!」


「みんな、さっきうちのボスが言ったように、蛍光マーカーで塗ってね。

 ヘルメットは……そうだな。

 ユウキのまねをして21星ZEROって書こう。

 ユウキも上書きしておいて。

 相打ちだけは避けたいからね」

 それぞれが蛍光マーカーで靴やそでさきに、ラインや模様を入れた。

 運転している2名のヘルメットや手足には、他のメンバーが塗ったが、苦笑するほどひどい塗り方だった。


「と、とりあえず仲間だとわかればいい……。

 それにしても、ひどいな!」

 そう言ってビスワが笑うと、緊迫した状況にもかかわらずみんなも大笑いした。


 仲間のヘルメットに光る21★ZEROの文字がユウキはうれしかった。


次回投稿予定日は未定です。今月中にあと1話か2話投稿予定です。

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