嘘か誠か(1)
本日は1話のみ、13時の予約投稿です。
すみません次回投稿日がお約束できません。今月中にあと3話か4話、投稿する予定です。
王宮や砦から出て、コロニーなどへ赴く外地任務がある者は足輪を装着されている。
その者たちは脱出までに、ケガや心神耗弱のふりをして足輪の必要ない部署へ異動する手はずだった。
バルが足輪をつけない部署へ異動してしまう前に、今1度ニッキの店を訪ねてほしいとユウキが頼んだ。
「フリカ国の黒の砦、アッシビー国の青の砦に入る際、無事に検問を通れる方法がないか確認してほしいです」
「それは私も考えていた。
アッシビーのコロニーまではかなりの距離がある。
コロニーへの侵入は難しくないだろうが、青の砦となると何か手が必要だ。
わかった、ニッキに聞いてみよう」
「他にもニッキに聞いてもらいたいことがあります。
この間、ワイトの種を作った研究者が、王府軍に拘束されているって話をしましたが。
その者はグリーンゲートの研究者ではあるのですが、グリーンゲートがやらせたという証拠が足りないと、知人は言っていました。
その証拠が見つかったのかを知りたいです。
それと……これは話していなかったのですが。
ワイトを数体、人に戻すことに王府が成功したらしいのです。
現実的な方法ではないため、別の方法を探しているようだったのですが、その後進展があったのか。
この2点を検問の件と併せて確認してほしいです」
「ワイトを人に……そんな研究もしていたのか王府は。
すごいな、見直した。
15の人にとっては吉報だな」
バルが目を見開いて言った。
「指示したことの証拠が出たら、世界を敵にまわすことになる。
グリーンゲートは終わりだ」
メンバーの1人が言った。
「ワイトを作った犯人が明かされるのは大事なことだし、ワイトを人に戻すことに成功したなら、確かにそれは良い話だ。
でも、我々は、ただゼロや21に帰れればいい。
その目的だけをみつめていこう」
ビスワのその言葉に、みんなはうなずいた。
(結局……ワイトのこともグリーンゲートのもくろみも、ここを去る人にとっては、たいした関心事じゃないんだ。
俺はかかわった人がいるから気になって仕方がない)
数日後、バルがニッキからの情報を持ってきた。
「びっくりする情報が目白押しだったよ。
まずは、検問について。
脱出した我々を黒の砦で受け入れてもらえるように、王府から打診をさせると、ニッキが約束してくれた。
入国する際のこちらの代表者はチャーリーで、30名ほどでヘリで向かうと説明しておいた。
もう黒の砦は完璧に王府側だな。
連絡1つでどうにでもなるんだから。
次にアッシビー国の青の砦。
ここは、青の砦にある解放軍統合指令本部が、茶の砦に燃料を止める制裁を与えている最中だ。
だが最近になって、ネオ21の存在や、タルティカに掘り当てた油田のことなどの情報が、統合指令本部に入った。
腹を立てた統合指令本部は、茶の砦を解放軍から追放する方向で話し合いをしているとのことだ。
そんな理由から青の砦では、ジャッジビーからの逃亡者を無条件で受け入れる姿勢らしい。
それと数日前、王府軍の輸送機が青の砦に着いて、近日中に、休戦か同盟かが決定するということだ。
安心して青の砦へ向かえばいいと、ニッキは言っていた。
もし青の砦と王府軍が手を組めば、王府側は青の砦と黒の砦、ネオ21側は茶の砦という図式になる。
スリトアがどちらにつくかまだわからないが」
「良かった。ひとまず検問は大丈夫そうですね」
「ああ、大丈夫だろう。
それと、ワイトの種を作ることに加担したグリーンゲートの研究者だが。
グリーンゲートの指示だったと自白した。そしてその上で、王府軍に寝返ったそうだ。
種の仕組みも全て吐いたということだ。
王府軍のワイトを人に戻す研究は足踏み状態だったらしいが、この研究者のおかげで、別の解決策が見つかるだろうとニッキが言っていた」
「そうですか。
ワイトの問題解決が加速しますね。
そしてネオ21は孤立する。
バルさんありがとうございました」
「いや、礼なんていいが。
ユウキ、もうこれ以上は干渉するな。
ゼロに帰ることだけを考えるんだ」
「はい……わかっています」
ユウキははにかみながら小さくため息をついた。
イベント開始1週間前になっても、詳しい内容は発表されなかった。
ワイトが発生してから、国を挙げての派手な催し物は、どこの国も行えなかった。
以前は、王族がいる国なら、国家行事的に多くのイベントが行われていた。
ジャッジビーは王家が滅亡していたせいで、国民は国をあげての行事への参加はほとんど経験がない。
当時はタップルという国家元首の独裁国家だった。
非民主的で政権側の者の蛮行が繰り返されても、罰する者はいなかった。
ワイトになったのか暗殺されたのか定かではないが、ある日タップルが行方不明になった。
それを機に、茶の砦の解放軍と21民によって、ジャッジビーの治安維持が始まった。
タップルの行方不明事件もグリーンゲートが関わっている可能性はある。
タップルがいなくなったことを、多くのジャッジビー国民は喜んだ。
ネオ21は国ではなく都市ではあるが、今回、ネオ21と茶の砦に向けたイベントを大々的に行う準備を進めていた。
「1週間前だ。今日は装備品を渡す。
追跡装置のついた、支給品の武器や端末などは、全て置いていくことになる。
リュックに必要な物は一式入れてあるから、各自持ち帰ってチェックをすること。
フォース装備と一般装備がある。
名前のタグを確認して間違わないように。
見習いのバングルを着けている者はいないな?
足輪を着けていた者は、みんな対処できたそうだ」
バルが言った。
少し前にフォース持ちかどうかを全員に確認し、見合う装備品をビスワが準備していた。
「各街区にいくつも建てられている、細長いポールを見ましたか?
てっぺんに箱みたいなのが乗っている。
あれ、セレモニーを行うためのものらしいですよ」
メンバーの1人が言った。
「ああ、その箱みたいなものは巨大モニターって話だ。
あっという間にあんなの建ててしまうから、それだけでも、15民には相当なインパクトだな。
いったい誰が映し出されるのかね」
ビスワが言った。
イベント当日は、夜7時から茶の砦につながる北側の検問所が解放され、誰でもネオ21に自由に入れるようになる。
兵舎に戻ったユウキは、渡されたリュックから、新しい真っ黒なヘルメットを取り出した。
(これを使わないといけないのか……)
ずっと使っていたヘルメットをユウキは見つめた。
「今までありがとな。ここでお別れだ」
新しいヘルメットをリュックに戻し、リュックごとベッドの下に隠すと、ユウキは兵舎を飛び出した。
紙やすりと、白と黒の太いマーカーを買って兵舎に戻った。
21★ZEROをヤスリでこそげ落とし、傷ついたその部分を黒いマーカーで塗りつぶした。
新しいヘルメットを取り出し、そこには、白いマーカーで21★ZEROと書いた。
(やばい……子供の落書きみたいだ)
できばえは良くなかったが、ユウキは満足してほほえんだ。
翌日、修繕屋へ向かう途中、ユウキはシュウと一緒になった。
シュウは日本人で、その話は興味深く、参考になることばかりだった。
そして何より楽しくて、ユウキは落ちついた場所で、もっとたくさんの話を聞きたかった。
それが許される環境や状態でないことは承知していたが。
ここジャッジビー国はゼロで言うところの、南アメリカに当たる。
ラシア国の東の果て、目指すセンターコロニーがある王府は、ほぼ日本の位置に該当するとシュウが言った。
「じゃあ俺たちが目指すのって……」
「ええ、ゼロで言えば日本です」
「なんかちょっと……感動しました」
「フフ、日本を目指してがんばりましょう」
日本と言う言葉自体、耳にするのも、口に出すのも本当に久しぶりだった。
ユウキは胸にこみ上げる切なさで涙ぐみそうだった。
(俺、日本に帰りたいのか? ただ単に懐かしいだけだ……きっと)
作戦決行の日。
兵舎を出るとき、ユウキは残していくヘルメットの頭をポンポンとたたいた。
いったん修繕屋に立ち寄りリュックを預けると、門兵の任務に向かった。
ヘリ組は28名、バギー組は9名になった。
ヘリで逃げる者たちは、持ち場の任務を放棄して、ネオ21の北側の検問所が開放されるとすぐに茶の砦へ向かう。
夜8時までには砦の北東側にある、ヘリの駐機場へ集合し、フェンス外のコンテナの間に隠れることになっている。
丘陵型のバギーの格納庫は王都の西側にあり、リングエリアからのみ、出入りができる。
盗み出すバギーは2台。
リングエリアへ出入りできる身分証を持ったメンバー2名が盗みに入る。
電気系統を遮断する役目は、ユウキとバル。
建ち上がったばかりのモニターの遮断を試みることになった。
残り5名は修繕屋で待機。
ユウキとバルは、小爆発であたりが混乱し始めたタイミングで、モニターを支えるポールの下についている電気系統の制御部に少し大きめの爆発物を仕掛け、30秒で爆発させる。
爆発と同時に延焼材が付着し、その部分はしばらく燃え続け、うまくいけばモニターは消える。
成功や失敗を見届けることはせずに、すぐに修繕屋へ向かう。
修繕屋で待機している5名と合流し、修繕屋裏の出口でバギーを待つ。
ユウキはその日の昼の勤務を終え、イベント中は巡回警備の任務を言い渡されていたが、それを放棄した。
人々がごった返し、指揮系統も混乱する中、行方不明になった者を探す人手も暇も軍にはなかった。
夜7時。ネオ21の北側の検問所が解放された。
安全地帯の道を通り、茶の砦から押し寄せた人々が、ネオ21に流れ込んで来る。
まだ8時前だが巨大モニターの電源が入った。
「はーい! みなさま、こんばんは。
21から来た、ジェームズです!
今宵のイベントの司会を務めさせていただきます!」
(ジェ、ジェームズ……って。うそだろ!)
ゲームを始めるかのような軽いのりでしゃべっているジェームズを見て、ユウキはあっけにとられた。
(なんだよこれ……まるで21じゃないか)
ジェームズの挨拶だけでも周りは大盛り上がりだった。
ポールを囲うように設置された低い柵を越えて爆発物を設置するのを、誰かに目撃される恐れが十分にあった。
「予定時間より少し早いですが、これよりセレモニーを開始いたします!」
時刻はまだ7時50分だった。
(少し早まったが、大丈夫か?
とにかく、8時を過ぎてもモニターに注目していてほしい)
「それではみなさま、一緒にカウントダウンをお願いします!
いきますよ! 10,9,8……」
ジェームズとともに観衆が一斉にカウントダウンを始めた。
「ゼロ!」
ゼロの叫び声とほぼ同時に、モニターに映し出された女性は、顔の下半分が布で隠され髪はグラデーションのかかった緑色。
椅子取りゲームの下級兵士に選抜されたときのことを、ユウキは瞬時に思い出した。
「イライザ……」
その姿は間違えなくイライザだった。
(あのときバシュが「あの頭、鳥が住めそうだな」って言ってた……ってそんなことはどうでもいい!
イライザがこの世界に来たのか!
じゃあ、セレモニーって……)
「初めまして、もとグリーンゲート社のイライザです」
その時点で、カウントダウンの盛り上がりは嘘のようになくなり、周囲はざわつき始めた。
「わたくしは、グリーンゲート社の代表としての地位を追われました。
私の会社を奪ったのは、ラシア国王と21の政府軍です。
そしてその両者が結託をして、15の世界にワイトの種をばらまきました」
(な、なにを言っているんだ……)
ざわつきは波のようにどんどん音を増し、やがて怒号が飛び交い、その声は振動として感じられた。
すみません次回投稿日がお約束できません。今月中にあと3話か4話、投稿する予定です。




