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ネオ21(シューティングスター)

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。

次回投稿は3月20日(月)13時です。


「ミナトさん、この間、砂漠でケガをした兵士が面会を希望しているそうです。

 調子が悪いみたいですよ。 脳波検査やり直しますかね……」

 検査部の若い職員がミナトのもとに来てそう言った。


「そうか……わかった。

 少し神経質になっていたみたいだから、話をしてみるよ」

 体調が悪いと嘘をついてユウキが訪ねてきたと、ミナトは思った。


 チャムを見かけたユウキは、いても立ってもいられずミナトのいる検査部を尋ねた。

 検査部は、チップ回路を入れている者の検査全般と、シップの乗降前後の検査やチップ装着も行う。

 機材やシステムが不十分な15では、処置後の予後を往診などでチェックしている。


 15に来てミナトと初めて話をした庭園のベンチに、2人で腰をおろした。


「突然すみません、ミナトさん」

「ユウキ、こういうことは、今回限りにしてほしい。 急ぎのようなのか?」

(きついな……ミナトさん)


「はい……。

 実はチャムを見かけて……話ができないかと思って」

 チラリとユウキに目をやったあと、正面を見据えたミナトは不機嫌そうに言った。

「チャムを危険にさらしたいのか?」

「え……」


「助けたいとか、ばかげたことを言い出すんじゃないだろうな。

 チャムにとってはありがた迷惑だ。

 ここはゲームの中じゃなく戦場だ。

 そんな話ならもう行くが」


「どうして……どうして、そう言い切れるんですか?

 チャムも一緒に逃げたいかもしれ……」


「ふざけるな。

 少しは成長したらどうだ。

 手をつないで一緒に危険な道を進むのか?

 本当に助けたいなら、高みに登って、そこから手を差し伸べてやるべきだ。

 グリーンゲートの職員は、ベースチップにソケットがついている。

 そこに発信器を付けて生活しているんだ。

 下手な動きを察知されれば、すぐに拘束される」


 ショックで黙ってしまったユウキは、下を向いたまま動けずにいた。

 ミナトはユウキの両肩をつかむと少し揺すり、顔を上げさせた。


「君がチャムを救いたいように、チャムも君を救いたいと思っている。

 グリーンゲートの人間にはかまうな。

 君も危なくなるんだ!」

 ユウキの目からあふれ出した涙は、頬をつたいポトポトと服に落ちた。

 ミナトは手を離してため息をついた。


「王府軍に合流して、早くゼロへ帰るんだ」

 涙を流すユウキを置いて、ミナトは立ち去った。


(俺……バカだ。

 ミナトさんは俺を守るために突き放していたんだ。

 今まで気づかないなんて……。

 チャムも体をはって俺たちを守ってくれた。

 ここでまた、俺が関われば、同じようにチャムは助けようとしてしまう。

 なんで気づけないんだ!

 最低だ!)

 自分が情けなくて、悔しくて、拳でももを叩いた。

 袖で乱暴に涙を拭き取ると、立ち上がって、大きく深呼吸をした。

(チャムやミナトさんをグリーンゲートから解放するんだ。

 そのためにも、早く王府へ!)



 翌日、修繕屋の集まりで話し合われたのは、ヘリを攻撃されたときの脱出方法と、おとりの件だった。

「ヘリを攻撃されたとき、パラシュートでの脱出になる。

 パラシュートの装備はビスワがそろえてくれる。

 未経験者は経験者とペアで飛び降りる方向で。

 誰か、そのへんを調整して欲しい」

 バルが言った。


「私がやりますね」

 若いメンバーの1人が手をあげた。


「ありがとう。

 砂漠の上まで逃げられれば、地対空ミサイルはまずない」


「そんなもの、はなからここにはないよ。

 あるとすれば、携行型の地対空ミサイルくらいだ。

 もともと15は過去型の世界だし、21の影響を色濃く受けている。

 ゼロみたいに、破壊ごっこになるようなバカな戦争はしないはずだ。

 まあゼロも、核やら最新鋭のミサイル持ってますって、武力誇示はするが、それは交渉のツールで、実際にすぐ使うことはないし、簡単に戦争を始めるわけじゃないが」


「それでも隣国に手を出す大国は、あるじゃないか。

 その争いに、こぞって各国が手を貸して、戦争が長引く。

 加勢する者が現れれば、いくところまで行くしかない。

 あれは血を流すゲームだ」


「時間がないからゼロの戦争論議は他でやってくれないか」

 バルがそう言うと、話していた2人は肩をすぼめた。


「出発までに、自分も乗せてほしいと言ってくる者が、増えるはずだ。

 知り合いに声をかけている者がいると聞いた。

 パイロットの数からして、飛ばせるヘリは1機だけだ。

 連れて行きたい者がいるなら逐一報告すること。

 乗せられるのは30名までだから、あとで断るようなことになれば気の毒だ」

 メンバー数名は苦笑いをしている。


「かく乱とおとりを担当するメンバーが必要になる。

 それで……そのメンバーたちは丘陵地用のバギーでアッシビーへ逃げる。

 だからヘリの人員からは外れる。

 要は二手にわかれることになるんだが……反対意見があったら言ってほしい。

 強制的に選ぶつもりはないが、そのメンバーが集まらないと、作戦は成功しないだろう。

 私はアッシビーの組になる。

 他に、有志はいるか?」

 バルは少しためらいながら、そう説明をした。


 ビスワと他にも3名が、すぐに手をあげた。

 ユウキも次いで手をあげたが、あげたあとに後悔が押し寄せた。


(お、俺になにか取り憑いてないか?

 手をあげちゃった……。

 でも、人をおとりにして、自分だけ逃げるよりはましかな。

 戦えないわけじゃないし……怖いけど。

 この選択は、きっと間違っていない)


「私を含めて6名か、ありがとう」


「今日来ていないメンバーにも確認してみるよ」

 ビスワが言った。


「頼んだビスワ」


「私も、アッシビー組に混ぜてもらえませんか? 戦いの方はからっきしですが……」

 穏やかな声と笑顔でそう言って手を上げた男性がいた。


「シュウさんが来てくれればアッシビー行きは本当に楽になる。

 ヘリと違ってバギーで進むから、迷う可能性が大いにある。

 ずっとバギーの中に乗っていてくれて大丈夫だよ。

 かといってワイトにならない保証はできないけど」


 シュウはゼロ民で、地図読みと道案内が得意だった。

 ゼロでは、地質調査や地図を作成する会社に勤めていた。

 シュウの会社はアークエンジェルから21の世界へスカウトされ、21に支社を持っている。

 現在の15の世界は、2億年ほど前のパンゲア超大陸と呼ばれたゼロの地形に酷似していて、ゼロに起きた大陸移動の実体を、実際に記録できる貴重な世界だった。

 まだワイトの存在が知られていないころ、ジャッジビー国で調査を行っていたシュウと同僚がワイトに出くわした。

 仲間はみんなワイトになってしまい、崖から落ちたシュウだけが奇跡的に茶の砦まで逃げおおせた。


「ハハ、そんなことは百も承知です。

 もしワイトになってしまったら、いつか人に戻してくださいね。

 戦闘では役に立ちませんが、地図と道を読むことは任せてください」

 シュウが加わり、アッシビー行きは7名になった。


「チャーリー、ちょっとあの件を話してもらえないか?」

 作業用のつなぎを着た若者に、バルが言った。


「了解です。僕は飛行場の維持管理をしています。

 ヘリの駐機場についてお話します。

 まず置かれている場所について。

 ヘリが置かれているのは、飛行場の東ゲート付近です。

 普段から東ゲートと北ゲートは使用されておらず、常に施錠されています。

 整備後のヘリを駐機させているので、ヘリを利用するとき以外、人が近づくことはありません。

 航空機の使用自体少ないので、長らく置きっぱなしになることも多いです。

 その周囲の、フェンス外には、部品コンテナの置き場があります。

 そのコンテナとフェンスの間は、夜は完璧な死角になり、多少草も生えているので、身をかがめれば絶対に見つかりません。

 サーチライトの光もほとんど届かないので、隠れるにはもってこいです」


 駐機場の検問は南門付近にあるが、そこは通らずに、チャーリーが話したそのフェンスから侵入することになった。

 フェンスへはあらかじめ細工をし、当日はそこを蹴破って中に入る。


「大所帯になるから、ヘリ組は念入りに打ち合わせをすること。

 指揮はチャーリーとパイロットの3人でやってほしい。

 ヘリの鍵もチャーリーが持ち出し、それをビスワがコピーして、再びチャーリーが元あった場所へ戻す」


「了解」

 そう言って、ビスワは片手を上げ、チャーリーは小さくうなずいた。


「アッシビー組は私が指揮をとる。

 かく乱作戦についてだが、小爆弾を使用する。

 24時間後に爆破するタイマー式の単純な物だ。

 破損させることが目的ではないから、小さな爆破しか起こらないが音は大きい。

 全員で手分けをして、各自5個を、前日の夜8時半から9時の間に設置する。

 設置場所は、王宮内とその周辺、リングエリアの外も3街区くらいまで。

 屋根の上や、酒樽の裏、どこでもいいが、人への被害が及びにくい場所に貼り付けてほしい。

 イベント会場への入場は夜の7時からで、セレモニーは8時から始まるらしい。

 何のセレモニーか明かされていないが、その最中に爆発が始まる。

 会場内がざわつきはじめたタイミングで電気系統を遮断。

 この担当は、アッシビーへいくメンバーの中から決める。

 私からは以上だ。

 話しておきたいことがあれば言ってほしい。

 なければ、解散」


 みんな一斉に席を立ち、部屋を後にした。


 ユウキは兵舎へ帰る道すがら夜空を見上げた。

(ここの星は、ゼロで見る星と、同じ配置なんだろうか……)

 ふとそんなことを思い、真上を見ながら足を止めた。

(ゼロと……つながっていればすぐに帰れるのに)


「あ……流れ星」

 夜空にいくつもの流れ星が流れ、次々と落ちてくる。

 ユウキは思わず手をあわせた。

(早くお願いしなきゃ……えと、無事にセンターコロニーへ着けますように。

 みんな……みんな無事でいてくれますように)

 祈りながら、知っている人たちの顔を思い浮かべた。


「ほお、シューティングスターですか。良い兆しと受け取りましょう」

 話しかけてきたのはシュウだった。


『ユウキ……ユウキ……』

 空耳なのか、風の反響なのか、誰かの声が聞こえた気がして、ユウキは耳を押さえた。


「ん? どうしました?」

 シュウが心配そうにユウキをのぞき込む。


『ユウキ……どこに……ユウキ』

 今度は確実に、人の声だとわかった。

 ただ鮮明ではなく、声が重なったような聞こえ方で、誰の声なのかはわからなかった。


「す、すみません。誰かの声がして……。

 おかしいな、近くじゃないところから声がしているような……」


「ふむ、電離圏の反射でしょうかね」


「電離圏の反射?」


「ええ、聞いたことはありませんか?

 流星がながれた後などに、普段では聞くことができない地域のラジオ放送や、無線の音声が聞こえる現象。

 にわか知識ですが……と、前振りしておきますね。

 地表から高さ100KMほどのところに電離圏というプラズマ密度が高い場所があります。

 平たく言うと、プラスとマイナスの電気を帯びた大気の粒子がたくさんある場所です。

 流星が流れた後に、その電離圏に更に濃い密度の電離層が発生して、電波を反射させる。

 それで聞けないはずのラジオが聞こえることがある……とまあこんな感じです。

 でも不思議ですね、あなたはラジオではないのに、ハハハ」


「アハハ……そ、そうですね。

 空耳だったかもしれません」

 ユウキは笑うしかなかった。


「おっと、早く帰らないと。あなたも。 では、おやすみなさい」

 シュウは片手をあげると、去って行った。

「おやすみなさい……」


 ユウキは再び空を見上げた。

 流星群は止み、星が小さくきらめいていた。


(誰の声だったんだろう……)

次回投稿は3月20日(月)13時です。

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