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ネオ21(新しい仲間)

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。

次回投稿は3月17日(金)13時です。


 ユウキとの挨拶を済ませると、再び激しい話し合いが始まった。

(どうなってるんだこの人たち。

 ここに初めて顔を出した俺を、誰も警戒していない。

 これってやばい話だよ?!

 まあ……でも、知りたかった内容ばかりだ。

 とりあえず覚えなきゃ)


 そこには、ユウキが欲しかった情報がすべて詰まっていた。

 話し合いを見ていたユウキは、改めて自分が子供であることを思い知らされた。

(俺みたいなガキじゃこうはいかない。

 素直にこの人たちを頼りたい。一緒に行きたい)


 今、議論されているのは、最初の目的地をどこにするか、それとその経路だった。

 1)ネオ21を出発し、近くの茶の砦へ。北上しながらジャッジビー国内のコロニー4つを経由し、アッシビー国の青の砦を目指す。

 2)ネオ21を出発し、東にあるフリカ国の黒の砦を目指す。

 黒の砦まではかなり距離があり、車両での移動の場合は、燃料の積み込みも必要になる。

 到着までには数日かかるのと、集団ワイトが多く現れる地域のため、戦力も必要だった。

 

「青の砦にある解放軍の統合指令本部は、ワイトを焼いた茶の砦への制裁は行ったが、ネオ21に関しては何もしていない。

 ネオ21の存在を把握できていないのか?

 だとすれば、総合指令本部なんてたいそうな名前のわりには、情けない話だな」

 1人が吐き捨てるように言った。


「茶の砦はネオ21から燃料を引いているから、そんな制裁を受けても痛くもかゆくもない。

 ネオ21の存在と油田を確保していることを知っていたなら、別の制裁をしたはずだ。

 知らなかったんだろう。

 この世界らしい。

 知らなかったで済ませられる」


「でもさ、制裁を発動したってことは、青は敵になることを茶に宣言したわけだろう?

 それなら、青の砦に俺らが助けを求めれば、受け入れてくれるはずだ」


「受け入れてもらえたら、今度は青の砦からの脱出を考えなきゃいけない。

 我々は王府を目指すんだから」


「あの……」

 遠慮がちに手をあげたユウキを、みんなが一斉に見た。


「なんだ、ユウキ」

 ビスワが言った。


「みなさんが知っている話かもしれないけど……。

 数カ月前の話ですが、黒の砦の総司令官が、王府軍側につくかもしれないって話を聞きました。

 まだ公言はしていなかったとしても、すでに王府軍側についていたなら、かくまってもらえるんじゃないかって」


 みんなは顔を見合わせ、困惑した表情を浮かべた。

「その話は初めて聞いた。にわかには信じられんな。

 話の出所は? なぜそうなったんだ?」


「出所は、俺の友人で、王府軍の情報ですが……。

 すみません、友人の素性は明かせません。

 人工的に作られた寄生植物の種を植えられたことで、ワイトになったって話は知っていますか?」


「その噂なら何度も耳にしたし、我々も実際そうなんだろうと思っている。

 その話と、黒の司令官の話に何の関係が……」

 ビスワが言った。


「ワイトの種を作った研究者の1人は、王府軍に拘束されて、今特別な場所に収監されています。

 自殺されないように厳重に見張られているとのことです。

 そしてその研究者はグリーンゲートの職員だったと。

 そのことが、黒の総司令官の耳に入ったことで、風向きが変わったようです。

 数カ月前の話なので、現時点では総司令官がどういう考えなのか、わかりませんが」


 みんな、口を開けたまま固まってしまった。


「ちょ……ちょっとまて。

 おい、研究者が拘束された話、誰か聞いたことはあるか?」

 そこにいる全員が首を横にふった。


 15の世界を発展させるため、21から未来の技術や知識、そして人が、今まで大量に流入している。

 それに一役買っている代表的な民間企業は、グリーンゲートやアークエンジェルで、それらの企業の名前は15の世界では周知されていた。

 ここにいるゼロ民は、21での生活経験があり、みんなグリーンゲートのことは知っている。


「それじゃあ、グリーンゲートがワイトを世に送り出した張本人なのか?!」


「グリーンゲートがやらせたことを証明するには証拠がたりないと聞いています。

 それだけじゃありません、ネオ21はグリーンゲートそのものなんです」

 ユウキは、自分の言葉を信じてもらうには、裏付けがなさすぎることに気づいていた。

 ただ、王府軍の諜報員であるファビオのことを話すわけにはいかなかった。


「うそだろう……。

 解放軍に入った、21から来た有志たちが、ネオ21を作っていると思い込んでいたが……。

 グリーンゲートが作った都市だったのか。

 それが本当なら、甘いな俺たち、てか、マヌケすぎる……」


「世界が混乱していて、自分の身の振り方ばかりを考えていたせいか、足下に目がいっていなかった」


「黒の砦にかくまってもらうことができれば、ラシアへの道はだいぶ楽になると思います」

 ユウキが言った。


「そうだな、そこからなら、コンビナートの船を使って、ラシアへ行くこともできる……」

 ビスワが言った。


「その話の裏付けもだが……。

 どうやったら、黒の総司令官の考えを知ることができるんだ?」


「そうですね……。この中でコロニーに行き来している方はいますか?」

 ユウキが聞いた。


「ああ、何人かいるが、なんでだ?」


「1つ手があるかもしれません。ダメでも試す価値はあるかと。

 ただし、ここにいるメンバーの中でも、絶対に信用できる人にお願いしたい」


「まあみんな信用はできるが、そうだな、バルさんどう?

 足輪もはまってるし!」

 ビスワは少し笑いながら、バルにふった。


「足輪って言うな。いいよ、私が行こう。

 バルだ、よろしくユウキ。21のペンタグラムベースの軍人だ」

 背の高いその男性は、浅黒い肌に真っ白な歯をのぞかせてにっこり笑った。


「はい、よろしくお願いします。 じゃあ、さっそく説明しますね」


 1カ月後のイベント開催までに、監視体制が強化されることはみんな知っていて、その前の脱出が計画されていた。

 ここの集まりは1週間に1度だったが、脱出までは、頻繁に集まることになった。

 夜、時間が空いた者は、顔を出すようにとのことだった。


 修繕屋から出るとき、ビスワに呼び止められた。


「ユウキ、よろしくな。 同志が増えてうれしいよ」

「こちらこそ、誘っていただいたこと、感謝します。

 でも、初めて来た俺を、まったく警戒しなかったのはなぜですか?

 あんな大事な話を普通にしてるもんだから、こっちが焦りました」


「君が、解放軍に入りに来た、21の有志には見えなかったんでね。

 前のめりな熱気っていうか……そういうのがまったくなくて、冷めているのがわかった。

 21から来て捕らえられた軍人とも違う。

 こりゃあ、訳ありだなって思ってね」


 ユウキは久しぶりに聞いた『訳あり』という言葉に胸が締め付けられるような気がした。

(訳ありって……久々にその言葉を聞いた。 懐かしくて、せつない……)


「こういうことに関しての俺の読みは、当たるんだ。

 みんなそれがわかっているから、気にせず話をしていた……それだけだ」


 数日後、ユウキからタグペンダントを渡されたバルは、コロニーでニッキの店を探しあてた。


 その2日後の集会の席で、バルからの報告があった。

 ニッキに、ユウキの情報とタグペンダントを見せて事情を話すと、すんなりと情報がもらえた。

 バルが21の軍人であったせいでもあるだろう。


「ニッキからの情報を伝える。

 黒の総司令官は確かに協力を約束したらしい。

 まだ解放軍を名乗っているが、王都側についたのは間違いない。

 これでフリカの黒の砦を目指すことは決定だな」

 バルが言った。


「装備全般は問題ない。

 回収品も手入れして、かなりため込んである。

 地図読みと道案内はシュウさんがいるからこれも問題ない。

 あとは車両と、足輪だな……」

 ビスワが言った。


「足輪持ちはケガをするか、心神耗弱のふりをして足輪がいらない部署へ異動するしかないんじゃないか」


「後者だな……。もう時間もないし、さっそくやりますか」


「車両に関しては、工事の関係で車両の保管場所がよく変わっちまうのが問題だな」


「操縦士が3人もいるんだ、航空機盗めないか?

 垂直離着陸機か大型ヘリ」


「15に垂直離着陸機があるわけないだろう」

「いやあグリーンゲートのことだ、作ってあるかもよ」


「大型ヘリなら屋外待機場に、いつも数機置いてあるよな。

 乗員は3名だし、兵員も30名は乗れるだろう」


「脱出人数は20名以上か……。

 そのイベントっていうのがなんだかわからないが、都市の警備が厳重になるんだろう?

 なら、砦の警備は手薄になる。

 その日に脱出を決行するっていうのはどうだ」


 バルのその言葉に、あっけにとられた一同だったが、次の瞬間、どっと笑いだした。


「いいねえ、イベント当日か。 スリルありすぎだろう!」


「おっと、2時間近くたっちまった。追跡されないために、そろそろお開きにしよう。

 じゃあみんな、またあした!」

 バルがそう言ってから、その部屋の電気が消されるまでは早かった。

 次々に修繕屋から出て行くメンバーたちは、あっという間に夜の道に散っていった。


 翌日、門兵の任務についていたユウキの前を、きちんと軍帽までかぶった一団が通り過ぎた。

 その中に、明らかに女性だとわかる、背の低い兵士が1人。


(あ……チャム? チャムだ!)


 チャムはユウキに気づくと、軍帽のツバ越しに鋭い視線を向けた。

 言葉を発するなというチャムの合図であることを察したユウキは、下を向いて動揺を抑えるために下唇をかんだ。


(よかった……ケガは大丈夫そうだ。

 あのとき、床に倒れたチャムが、その後どうなったのかわからないままだったけど。

 ここに……赴任したのか?!

 絶対チャムは望んでここに来たんじゃない!

 どこかで話ができないか。

 チャムが望むなら、一緒に逃げたい!)


次回投稿は3月17日(金)13時です。

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