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ネオ21(ゼロ民の人脈)

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。


(4月4日……今日だったな脱出決行日。

 みんな無事にフリカに到着できればいいけど……)

 離れてしまった仲間を思いながら、相変わらずリングエリアを見下ろす壁の上での警備を続けていた。

 人とは距離を置き、自分から話しかけることはほとんどなかった。

 それはゼロにいたころと、さほど変わらず、しゃべらないことへのストレスはまったくなかった。

 安全なこの場所にいれば、不安や恐怖は感じないですむ。

 センターコロニーへ向けて動き出すことへのためらいは、徐々に大きくなっていった。


(生きているだけで価値がある、無理に意味を見つけなくていい……誰かがそう言ってた。

 誰だったかな。 昔すぎて思い出せない。

 記憶を矯正したせいだろうか……)

 ユウキは小学校の頃から、精神科や心療内科に通っていた。

 それにより、過去のつらい出来事に多少向き合えるようになったものの、塞ぎ込みや他人への不信感は増す一方だった。

 心の奥深く沈めた記憶が、頭をもたげないよう、中学に入ってもカウンセリングや薬を続けていた。


(誰かにとっては間違いでも、他の誰かにとっては正しい……か。

 ミナトさんのその言葉は、みんなを救えちゃうよな。

 自分勝手でいいって言ってくれてる。

 俺がここに残ることを選択しても、それは間違っていないってことだ。

 って、何言ってるんだ俺……情けない)

 警備をさぼって、壁を背にしてユウキは座り込んだ。


(みんな心配してるかな。

 そうだよ、ためらうな、早くみんなに追いつくんだ。

 まずはコロニーに行ってニッキから情報をもらう。

 でもそこに行く方法が見つからない。

 手詰まりかよ……って、俺まだ何もしてないや!)

 コロニーに行く方法を探すためにも、情報を集める必要があり、それには知り合いを増やさなければならない。

 人見知りをしている場合ではなかった。

 ネオ21の兵隊になりきって、信用を得る努力をしなければとユウキは思った。

 その日を境に、積極的に人に話しかけるようになった。


 警備部は王宮警備隊と一般警備隊に分れ、ユウキの配属は一般警備隊だ。

 隊の中でも徐々に知り合いが増え、寝る時間を割いてでも幹部が出席する兵士たちの集まりに参加した。

 王宮警備隊は信用度で配置される場所が変わる。

 経験が浅い者が1番狙いやすいのは、門兵だった。

 王宮門の門兵は王宮警備副隊長の許可がないと就くことができない。

 集まりにまめに参加した甲斐あってか、王宮門の昼の門兵に就くことが出来た。

 12時間勤務で休みは週に1日。


 そのころには、門を通る知り合いも増え、みんなと目で合図し会う時の仲間意識が少しうれしかった。

 門兵には専用の待機場所がある。

 交代のタイミングで、待機場所で食事をしながらおしゃべりをして、兵舎に帰る。

 飛び交う情報はユウキが欲しかったものばかりだった。

 兵舎は大きな建物の中にユニット型の部屋が並べられ、中にはベッドと天井まである棚、小さなテーブルが置かれている。

 ドアはハンドルだけが着いた鍵のかからないドアだったが、プライベートな空間は保たれていた。


(1カ月以内に大きな組織変更があるって言ってた。

 パイロット訓練も始まるってことは、航空機も数がそろってきたのか。

 ワイトからの生還者が出たって噂も出始めている。

 この噂がもっと広まれば、燃やすことへの反発は増す。

 ネオ21のやり方に反発する者が増えてここが混乱すれば、逃げやすくはなるけど……。

 ここにいる人たちは、ネオ21の主がグリーンゲートであることに気づいていない。

 普通、誰がつくった都市なのかは探るはずだけど、うまいこと代表者の存在を隠している。

 もっとも、みんな誰でもいいのかもしれない。

 自分たちの生活さえ安泰であれば。

 ワイトを作ったのがグリーンゲートだって知ったら……その考えは変わるだろうけど。

 証拠はないしな……」


 兵士の使う装備品の管理を行う部署はリングエリアの中にあり、修理や整備をしたい装備品を持ち込めば、修繕屋に出してくれる。

 修理したものを受け取るときは、自分で店まで取りに行く。

 町の街区は王宮に近いほうから順に付番され、すべての街区はドーナツのようにリング状に区切られていた。

 内側から徐々に町を広げるやり方は、ワイトを懸念しながら工事を進めるのに、安全で効率的だとの判断からだった。

 軍の認可品ではない新品を扱う装備屋、修繕屋、ホームセンターのようにあらゆる工具などを扱う店は、1街区に建てられている。

 2街区は食品や衣料品、食事処などが軒を連ねているが、今後は量販店が立ち並ぶ予定になっていた。


 装備部から修理完了の通知を受けたユウキは、勤務を終えたその足で、指定された1街区の修繕屋へ向かった。

 修繕屋と聞いて町工場のようなイメージを抱いていたが、そこにあったのは、あまり大きくはないが、近代的な工場だった。

(こんなきれいな建物に、でかでかと修繕屋って……あの看板、手書きだよな)


 そこは、24時間装備品の受け取りが可能で、深夜でも当番勤務の技術者が数名はいる。

 受付で修繕品受け取りの書類に書き込みを終えて、待合の長椅子で待っていると、受付の右はしにある扉が開いてそこから男が手招きをした。

 近寄ると部屋の中に入るよう促され、受付から装備を渡されると思っていたユウキは、首をかしげながらもそれに従った。

 部屋に入るとまず大きなカウンターが目に入った。

 壁一面には作り付けの、細かく仕切られた棚があり、その中に様々な装備が並んでいる。


 カウンターの向こう側にまわった男が、話だした。

「受付で渡してもよかったんだけど……。

 取りに来たのはこのヘルメットだよね?」

 男は21★ZEROのステッカーが貼られたヘルメットを、カウンターの上に置いた。


「あ、そうです。 良かった、元通りだ」

「中の脳波伝達部分の回路と、視界制御のゴーグルは破損していたから、使い物にならなかったんだけど……。

 新品じゃなくて修理を依頼したってことは、この文字を残したかったからでしょ?」


「はい、その通りです。

 仲間が作ってくれたステッカーだから。

 それをつけていたら、また会える気がして」

「そうか、なら修理した甲斐があったな。

 職人の先輩たちからは、新しいのを渡した方が良いっていわれたけど。

 回路は全て交換して、がわは叩き出して、補強もした。

 でも強度は悪くなっているから、本当は新品に取り替えた方がいいんだけどね」


「ありがとうございます!

 この文字が見えなくなったら取り替えます」

 そう言ってユウキはにっこり笑った。


「あ、自分はユウキと言います。

 お礼をしたいですが、お金はもちろん、他にも何も持ってなくて……」


「俺はビスワだ。 お礼なんていい。

 代金は軍からもらえるし、君の喜ぶ顔をみれたから俺もうれしいよ」

 ビスワはヘルメットをユウキに手渡した。


「何も持っていないって、ここへ来て間もないの?

 ZEROって書いてあるけど……君はゼロ民?」


「はい、ゼロ民です。

 21でゲームの大会に参加していましたが、なぜか今ここ……って感じで。

 ここへ来てから2カ月くらいです。

 このヘルメットは砂漠で壊してしまって」


「ふーん、2カ月ねえ。で、ここでの任務は決まったの?」

「今は、王宮門の昼の門兵です。もうじき初給金がもらえそうです」

 ユウキははにかんだ。


「なるほどね。だから受け取りがこの時間になったわけか。

 じゃあ、平日の夜は時間があるね。

 3日後の夜、ここでゼロ民の集まりがあるんだ。

 疲れているだろうけど、良かったら顔を見せないか?

 21の連中も混ざってるけどね。

 同郷の者が多い方が楽しいから、ゼロ民を見つけたら誘っている。

 嫌なら断ってくれていい」


 ユウキにとっては願ってもない誘いだった。

(情報を集める機会が増える。しかも王宮外の知り合いができる!)


「ありがとうございます。是非伺います」

 ユウキが即返答したことに、ビスワはニッと笑った。


「あったばかりなのに、あっさりと誘いを受けるか……思った通りだな。

 ああ、気にしないで。

 3日後、表が閉まっていても、裏は開いているから。

 3階の一番奥の部屋だ」


 兵舎に戻ったユウキは、受け取ったヘルメットを眺めた。

(ルイバディ、このステッカーのおかげで、ビスワと知り合えたよ……)


 そのときノックもなしにドアが開き、ミナトが部屋に入ってきた。


「ミナトさん……」

「遅くにすまない。少し、話しておきたいことがあってね

 手短に話すね。5分以内にはここを出るから」

 ベッドに座るユウキに向き合うように、荷物入れになっている椅子を移動させて、ミナトは腰をおろした。


「1カ月後、ネオ21は大きなイベントがある。

 それまでに監視体制を21に近づけるため、足りないシステムを整えたり、配置の見直しが、今急ピッチで進んでいる。

 そのイベントまでに、試作品装備の検査場もできあがる予定だ。

 君はそこで、フォース装備のテスト要員になる。

 VRゲームの試験場はまだ着工できずにいるが、21のVRゲームで収集されたデータを元に、新しい装備品の設計図はいくつもできあがっていた。

 その設計図で作られた装備品のテストを、君は行っていくことになる。

 住まいは兵舎ではなく部隊棟の中の個室になって、行動データは全て残る。

 そうなったら……抜け出すのは難しい。

 正直、現時点でも策はないが、何か手を探すんだ。

 私もデータを取られている口でね。

 往診のふりをして、おしゃべりをしてまわっている。

 それじゃあ、おやすみ」


 ユウキに口をはさむ隙を与えずに、一方的に話してミナトは出て行った。


「ミナトさん……ありがとう」

 ミナトが出て行ったドアを見つめてユウキはつぶやいた。

 どうも腑に落ちなかった。

 この前の、ミナトの冷たく打算的な物言いと、今のミナトにはギャップがありすぎる。

 ユウキのために身の危険を冒しながら情報を伝えにくる行為は、打算的とは真逆の行為だ。


(フォース装備のテスト要員になることが決まっているなら、それまでは今の配属から異動はされない。

 1カ月後のイベントまでにって……急がないと。

 ここの兵から得られる情報だけじゃ足りない。

 ビスワのところで集めるんだ)


 3日後、装備屋の裏口から3階へあがった。

 突き当たりの部屋の前に、立っている若者がいる。

「あの、ユウキと言います。ビスワさんから……」

 ユウキがそう言いかけると、その若者は扉を開けた。

「ああ、聞いているよ、入って」


 部屋に入るとすぐに服掛けがあり、そこには様々な上着が掛けられていた。

(いろんな職業の人が集まっているのか?)


 そこを抜けると、電球色の部屋の中には木のテーブルがいくつも並べられ、20名ほどが集まっていた。

 激しく会話をする人たちは、ユウキが目に入っていない。

 テーブルの上には飲み物しかなく、図面や資料が散乱していた。


 立ち尽くすユウキに気づいた1人が、ビスワを叩いて、ユウキの方へ親指を立てた。


「おお、ユウキ、こっちへ」

 ビスワはユウキの肩に手を置き、集まった者たちに紹介した。

「ユウキだ。ゼロ民だよ。みんなよろしくね」

 そこにいた者たちが口々に挨拶をした。


「名前はおいおい覚えていけばいいよ。

 とりあえず、そうだな、そこの窓際の椅子に座って、しばらくはみんなの様子をながめていてね」

 ビスワはそう言ってニッコリ笑った。


「やっぱりフリカのコロニーを目指した方がいいんじゃないか?」

「いやあ、ジャッジビーとフリカのボーダーを北上するのはワイトに会いに行くようなもんだ。

 それよりジャッジビーのコロニーのうち一番東にあって、アッシビーの国境にあるコロニーはどうだ?」

「海沿いを通ってってことか? かなり距離があるぞ」


 彼らの会話の内容にユウキは驚いた。

(これって……脱出の相談だよね?!)


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