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赤の砦(コロニーへの配属)

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。


 ――少し遡り、ファビオがスリトアから姿を消した頃。


 ファビオが去ったのちも、ユウキたちは赤バングルの見習いのままだった。

 ある日突然装備品回収の任務からはずされ、施設内警備についていたレミとツクタンも呼び戻されて、7名全員が対人訓練をさせられるようになった。


 その頃、休日の朝食会に、ザッツーロも毎回参加するようになっていた。

「おかしくないか?

 もう5カ月近くたつのに、おいらたちはバングルをつけた見習いのままだ。

 逃げ出す心配があるなら、逃げ出せない部署に配置すればいいだけだ。

 卒業して早く武器を手に入れたいが、いつになるやら。

 見習いじゃあ、タイロンに監視されたままだし。

 武器ももらえなきゃ、バングルの追跡装置もとれない」

 ルイバディが不服そうに言った。


「確かに、なんか変ですね。

 自分たちだけ訓練ばかりやっているような。

 しかもいったん配置されたレミやツクタンも呼び戻されて、対人訓練やれって。

 タイロン教官の一存じゃなくて、誰かが指示をだしているとか?」

 ラバスが言った。


「その可能性が高いと思う。

 教官はそんなに権限がないはずだから。

 目的がわからないから不気味だな。

 ただ卒業についてだが、それは近々あると思う。

 であれば武器の心配はなくなる」

 ザッツーロの言葉にみんなは顔を見合わせた。


「そりゃあ確かなことなのか?」

 ルイバディが言った。


「ほぼ間違いないと思う。

 赤バングルや黄バングルで、対人訓練をしている見習いたちを、早いとこ卒業させて、コロニーに常駐させるって話だ。

 ワイトじゃなく人と戦える兵の配備を急いでいる、というより、そうせざるを得ない状況のようだ

 だから卒業は近いだろう。

 ファビオとの待ち合わせもコロニーの出口だから、好都合のように思えるが、そうとも言えない。

 戦闘に参加するんだからな」


 途端にラバスは不安そうな顔になり、ユウキをみつめた。

 ユウキは少しうなずきながら大丈夫だとラバスに目で伝えた。


「いきなり……どういう展開?」

 レミが言った。


「まず、ちょっと位置関係も含めて説明する」


 そう言ってザッツーロが地図をテーブルに広げた。


「手書きですまないが、ちゃんとした地図を持っていると怪しまれるから。

 みんなが持っている地図と、ほぼ一緒だ。

 まず、ジャッジビー国にある茶の砦はこの位置」

 ザッツーロは地図を指でなぞりながら説明を始めた。


「ここスリトア国の北西にあるタルティカから更に北にある国だ。

 この国は、タルティカ、フリカ、そしてこの国の北から西に広がる砂漠地帯に接している。

 赤の砦が掌握したコロニーは、スリトア国と砂漠地帯の境の辺り。

 コロニーまでは砦から、ワイトの心配をせずに行き来できる道が完成していることは、みんな知っているよな。

 コロニーから、他の国へ行くために砂漠を抜けるとき、タルティカ国に近い経路をとるとワイトが出にくい。

 ワイトの集団に至っては全く出ないと言われている。

 だから茶の砦や黒の砦に行く場合は、その経路を使うことが多い。

 その経路で、北西に進むとジャッジビー国、北に進むとフリカ国の国境があるが、その辺りまで来るとワイトの集団がやたらと出現しはじめる。

 少し前に、ジャッジビー国境に近い砂漠地帯のワイトを、茶の砦の車両が焼き払っていると情報が入った。

 解放軍なのにワイト殺しをしているという、その情報をつかんだ解放軍の統合指令本部が証拠集めを始めた。

 ああ、統合指令本部っていうのは青の砦で、アッシビー国にあって、油田とコンビナートを保有している唯一の解放軍だ。

 茶の砦の軍は隠すこともせずにフリカ国の近くや、砂漠東端にある王府軍所有のコンビナートの方まで遠征してワイトを焼き尽くしているらしい。

 容疑が固まったため、統合指令本部は制裁を決定した。

 青の砦の持つコンビナートから、茶の砦へ供給していた燃料を、すべてストップすることを数日前に決定したんだ。

 今まで、ここ赤の砦では、ワイトと王府軍の問題だけだったが、茶の砦とのいざこざの方が急を要する案件になった。

 茶の砦は兵隊集めや領土を広げにくるだろう。

 対人訓練をしている見習いを卒業させて、少しでも多くの兵隊をコロニーに送りたいんだ」


「茶の砦のやつらって、僕たちがケンカした相手だな。

 今なら、ケンカしても勝てそうな気がするけど、武器を持って命がけで戦うのは嫌だ」

 モニークが言った。


(モニークの言う通りだ。

 どうにもならないことはわかっている。

 逃げ出す手立てがないことも。

 でも、人と戦うなんて……。

 ワイトよりもっといやだ!)


「状況にあらがうのは難しい。ファビオと合流できるまで、なんとか頑張ってほしい。

 僕はコロニーへは行けないから、あっちにいる代わりの者を教えておく。

 コロニーにはいくつも占いの店があるが、ニッキ占い館を探して、そこの女占師ニッキに、身分証を見せればいい。

 君たちの情報は渡しておくから、照合できれば協力してくれる。

 部屋がせまいから行くときは2人までってことだ。

 もし君たちが離ればなれになってしまった場合だが……今は何も案がない。

 だがあきらめずにセンターを目指すこと」


 今までの環境のなかでも、仲間と離れてしまうことの想定はしてきた。

 対人戦がある戦闘地域に送られれば、その可能性は高くなる。

 離ればなれになることが現実味をおびて、緊張が高まったみんなの表情はこわばった。


「あのさ、もし離ればなれになっても、仲間を待っちゃいけない。

 チャンスがあればセンターに行って、21に帰るんだ。

 俺も待たないから、みんなも待たないで。

 とっとと21に帰るんだ。

 ためらう必要はない。

 これだけは、約束しよう」


 ユウキはそう言ったが、みんなはうなずくことが出来ないまま黙ってしまった。


「わかった、ユウキ。

 とっとと帰って、待つことにする。

 私が置いていかれても、みんな待たないでよ。

 すぐに追いつくから」

 レミが言った。


 みんな小さくうなずいた。


 5カ月ほどの間、訓練と任務をこなし、ユウキたちは体も大きくなり、見せかけではない戦うための筋肉が整っていた。

 フォース武器を使った対人訓練では、幹部クラスが見学にくるほどになっていた。

 その日は、アリシア司令官が見学に来ていた。

 ここ最近はよく姿を見かける。

 対人訓練室は30室ほどあり、2名か3名が入室し、負傷しない武器で戦う。

 防具は衝撃を吸収する作りだが、攻撃力や速度などは数値化され、どちらが強いか判定を行うことができた。

 21のような技術がないため、放出されたフォース量まではデータ化できなかった。


 部屋の外には見学が出来るように通路があり、部屋は全面透明のシールドで覆われていた。

 見学に来ていたアリシアと、教官のタイロンが言い争いを始めたようで、手をあげたアリシアにタイロンが叩かれたのをユウキたちは目撃した。

 ユウキとサトルは対戦形式の訓練を行っていたが、シールド越しにみえる、タイロンたちが気になって仕方がなかった。

 声は聞こえないがアリシアは怒り狂っているようで、叩かれたタイロンも負けじと反論している姿が見える。


 そのときだった、武装した兵士が数人、その通路に入ってきた。

 アリシアはその兵士たちにもどなりちらしているようだった。

 兵士たちが両脇からアリシアを抱え込み、アリシアは後ろ手に拘束されて部屋を出て行った。

 唖然としたタイロンだったが、あとを追うように走っていき、通路から姿を消した。


 ユウキとサトルは手を止め、訓練室を飛び出した。

 外で訓練システムの管理をしている兵が、アリシアたちが出て行った出口の方を見つめたまま、立ち尽くしていた。


「あの、部屋から出てしまったので、訓練プログラムを止めてください」

 サトルが兵士に言うと、我にかえったように機械装置に向かい、動作を停止させた。

「ああ、そうか……」


「あの、何があったんですか?」

 ユウキが聞いた。


「いや……よく分らないが、アリシア司令官が何かの罪で拘束されたらしい。

 よく聞こえなかったが、罪状の宣言をしていたようだった……。

 そうだ、他の部屋のシステムも止めなきゃ。

 いったん全部中止かな。

 上に確認にいかないと……」


 ユウキとサトルは顔を見合わせた。


「あの、司令官とタイロン教官は何を話していたんですか?」

 サトルが聞いた。


「さあ、あ、でもジャッジビーに連れて行くとかなんとか……。

 言い争いをしていたようだった。

 すまないが、いったんここを閉めるから出て行ってもらえないか。

 今後の予定はタイロン教官から連絡があるだろうから」

 ユウキとサトル、そして別室で訓練を行っていたルイバディたちも対人訓練の施設から追い出された。


 施設の外でユウキたち7人が立ち話をしていると、タイロン教官から訓練棟、3-1への集合のメッセージが届いて一同は向かった。

 部屋にいるタイロンは平静を装ってはいるが明らかにいらだっていた。


「今日の対人訓練は中止だ。

 それと君たちは、コロニーに常駐してもらうことになる。

 赤バングルも卒業になり、武器も供与される。

 最新の武器ではないが、ワイトになった王府軍が落としていった特級品の良い武器だ。

 アッシビーから定期的に支給されるが、これを手にできる者は限られている。

 出発は追って連絡するが、1週間後くらいになると思っていてくれ」


(ザッツーロが言っていたとおりになった……)


 7名は顔を見合わせた。

 ザッツーロから話を聞いていなかったら、もっと困惑しただろう。

 ただ、早すぎる展開にいささか腑に落ちない点があり、それがみんなの不安をあおった。


「あの、随分急な話ですね」

 レミが聞いた。


「そうだな。

 胸くそが悪いから、グチついでに話しておく」


 そう言うと、タイロンは生徒用の机に座り、ユウキたちと同じ目線で話を始めた。


「君たちがこの砦へ来た頃、私のクラスは卒業できなかったファビオとツクタンだけだった。

 ファビオとツクタンは青バングルだったが、人事院からフォースランクがAだから赤バングルにってことで私のクラスに入ってきた。

 だが2人とも家族査定で問題があって、赤バングルを卒業できずにいた。

 そこへここにいる6人が加わった。

 君たちにワイト訓練と回収任務をさせていたら、対人訓練だけにしろとアリシアから文句を言われた。

 施設内警備に送った女子2名も呼び戻して一緒に訓練をさせろだの、卒業はさせるなとか、再三注文をつけられた。

 おもしろくはなかったが、従ったさ。命令だからね。

 今日に至っては、君たちをジャッジビーの茶の砦に連れて行くって言い出したから、それなら総司令官に確認しにいくと言ってもめていたんだ。

 頬は叩かれるし……クソ」

 そう言ってタイロンは手で頬のあたりを触った。


「そしたらそこにいきなり憲兵があらわれて、連行されたから、私も何がおきたのかわからず動揺した。

 まあ、嫌疑はなんだったかわかったが……」


「その嫌疑って、なんですか?

 ジャッジビーに連れて行くって、それがどういう意味なのかおいらにはさっぱりわからない」

 ルイバディが言った。


「君たちだけじゃなく、他の赤バングルもジャッジビーに連れていくつもりだったらしい。

 連れて行くと言うより、渡すつもりだったのだろう、戦力として。

 ジャッジビー国の茶の砦は、問題を起こして解放軍全体の審判をまっているような状態だ。

 従うような連中じゃないから、近いうちに敵対関係になる。

 さっき聞いたんだが、アリシア司令官については、以前から裏切りやスパイといったたぐいの疑いがあったそうだ。

 たまたま私ともめている時に連行されたから、私は混乱したが、内定はされていたらしい」


「司令官の逮捕と、おいらたちが急にコロニーにいかされることになったのは、なにか関係があるんですか?」


「対人訓練で一定以上のレベルのあるものは、全てコロニーの警備にまわされることが、今日付で通達されることになった。

 もめるであろう茶の砦の兵への対応のためだ。

 アリシアが逮捕されなくてもそうなっただろうが、急に決定したのは、アリシアがスパイのようなことをしていたから、総司令官の危機感が爆発したんじゃないか?

 すぐ対処しろって総司令官の顔が真っ赤だったらしい。

 コロニーは、ここスリトア国の入り口にも等しい場所だ。

 赤の砦までの安全な道が完成した今、コロニーが落ちれば赤の砦へ総攻撃をかけるのは簡単だ」


 そして3月21日、ファビオからの知らせをザッツーロが伝えに来た。


 ――脱出決行 4月4日


 赤バングルの見習いを卒業したユウキたちには、特級品のフォースダガー2本と、その他に通常武器の単発ボーガンも支給された。

 そしてユウキたちはコロニーへ配属された。


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