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PWー21では

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。

次回投稿は3月6日(月)13時です。


 15からのシップが10月1日に帰還し、乗組員への聞き取りがほぼ完了した、10月8日。

 ペンタグラムベースは厳重な監視体制になり、軍人や職員の入室できる部屋も極端に制限された。

 受託業務を行っていた企業は全て施設から出され、外注契約に切り替わり、ペンタグラムベース内の全ての人員の行動調査も行われた。

 もともと、行動の把握や作業改善のため、個人の行動データは一定期間蓄積されている。

 それをAIで判定させるだけだが、判定基準をあげて、少しでも外部企業、具体的にはグリーンゲートとの接触が多いものは一部権利を剥奪され、行動判定の必要ない部署へ異動となる。

 家族にグリーンゲートがいる者も同様な措置がとられた。

 このことは当然グリーンゲートも知ることとなったが、苦情はおろか問い合わせさえしてこない。


 ドルトルとグレゴリーは軍の庇護をうけて、グリーンゲートのGPSははずされ、ペンタグラムベースに隣接した軍の施設で生活している。

 ドルトルがシュリに助けを求めたのは、グリーンゲートが技術者の家族の隔離を始めたからだ。

 隔離された家族が不当な扱いを受けるわけではないが、その目的は明かされなかった。

 15へ行くための新たな手段を手に入れたグリーンゲートは、21の人々が移住するより先に、15に都市国家を打ち立てたかった。

 主要な技術者や研究者を従わせる手段として、家族を隔離したことは明白だ。

 グリーンゲートは、15からの帰還者により、自分たちが国を欺き秘密裏におこなってきたことが暴露される懸念があった。

 そのため全ての計画を、急くであろうとドルトルは考えた。

 自分の家族が隔離されてしまう前に、逃げ出す決意をしたドルトルは、意を決してシュリに相談し、同じように考えていた仲間10数名とともに保護をもとめた。

 ドルトルが寝返ったことで、グリーンゲートが軍に渡していなかった新しい武器の設計図や、秘密裏に行われていた15への人の移送、そして新技術である、送り先を特定できるワームホール確率の技術が伝えられた。


 特区にあつめられた各国の軍の最高司令官たちは、連日話し合いを重ね、証拠がそろわない限りは処分ができないため、まずは軍に関わるグリーンケートを遠ざけることで見解は一致した。

 水面下で調査と証拠集めを行い、出そろったところでグリーンゲートの全ての権利剥奪と、かかわった人間の拘束、処分を行う。


 ドルトルたちは、早くしなければ当事者たちが15へ逃げてしまうと再三申し立てたが、簡単にそんなことができるはずはないと、集まった軍の司令官たちは考えていた。

 マクベスはドルトルたちの言葉を信じ、危機感を感じていた。


 ――PW-21(リューズ)暦2122年10月20日

 ペンタグラムベースにはマクベスに招集された者たちが集まった。


「はあ、少しほっとするね。

 勝手知ったるというか、探り合わなくていい面々なんで、気が楽だ。

 まあ、いつものように、普通に話をさせてもらう」

 連日、関係者ごとの会合や会議を立て続けに行っているマクベスの顔には疲労の色がにじんでいた。


 そこに集まったのは、

 マクベスとジャキオ、サンジェストとシュリ、シイカ、リーシャとバッチ、ドルトルの8名だった。


「集まってもらったのは、各国代表との会議で決定した事の報告と説明もあるが、1番の理由は頼み事があるからだ。

 まず会議で決定したことで、一般公表の承認を得たものについて話しておこう。

 1つめは、5つある国がセントラルに統合されセントラル国1つになるということ。

 これは数日中に公表される。


 現在セントラルを含めた5つの国の人口は8億ほどだ。

 土地がなくなっていくだけでなく、平均寿命は短くなり、出生率も下がる一方。

 今回の問題を機に、国をセントラル1つに統合しようという案がでてな、みんな了承した。

 セントラルは今までも行政制度や政策などで、統括的な役割を果たしてきたから別に困ることはない。

 統合案に賛成した者たちは、15へ移住したいんだ。

 政府の仕事を続けていたらいつまで拘束されるかわからないから、早めに撤退したいのだろう。

 各国の運営システムは今まで通りで、人員は残すが、決定や指示を行ってきた上の者はほとんどが職務を離れるらしい。

 食うには困らない連中だ。

 その風潮がセントラルの役人にも影響を与えて、各所で退職を希望する者が増えているって話だ。


 2つめは、15への移住希望者の募集開始の案内。

 これは、今から15へ向けて送り出すシップの試用がうまくいけば、2週間以内には発表できるだろう」


「え?15へシップを出すのですか? しかも移住を開始するって」

 リーシャは驚いた様子でマクベスを見ると、次いで何かをしゃべり出そうとしたが、それをマクベスが遮った。

「リーシャ、まずは話を聞いてくれ。後で質問は受ける」

 そう言われたリーシャは少し不機嫌そうにうつむき、横にいたバッチがリーシャの肩に軽く手をおいた。


「じゃあ、ジャキオ説明してくれ」

「はっ!」

 マクベスに言われ、ジャキオは手元のパネルを見ながら話し始めた。


「まず、今からグリーンゲートのことはGGと呼ばせていただきます。


 それでは1つめ。

 15へ送った者たちの所在について。

 先日の帰還者からの話で、15に送られた者が、無事到着できている可能性が高まりました。

 まだ可能性の域を出ないのは、解放軍とやらに占領された砦に到着してしまうと、そこからセンターコロニーに戻ることができず、安否確認ができないからであります。

 15の王府軍の諜報員を解放軍に多数送り込んでいるようでして、その情報だと、21から来た軍人が、各砦に数十名以上確認できているようです。

 到着先に問題があったとしても、シップは行方不明ではなく、15に到着できていると考えます。


 2つめは、15への次回移送について。

 こちら側についてくださったドルトル氏のおかげで、GGの新しい技術が多数もたらされました。

 新しいフォース武器もありますが、何より我々も知らなかった、WHSを指定して到着できるシステムのことです。

 すでにGGでは運用を始めており、15のジャッジビー国にある茶の砦へかなりの人員の送り込みに成功しているようです。

 今後は15のセンターコロニーのWHSを目指して出発することができます。

 つきましては、次回、15へのワームホール兆候が現れた際に、軍の者を200名送り、そのテストを行います。

 それが成功すれば、次はリーシャ様一行も含めた800名を送る予定です。

 GGが、なぜ国が管理しているWHSから、シップを出せたのかですが……。

 第5国にある閉鎖中だった15、5のWHSがGGに利用されていたことが発覚しました。

 そこに常備してあったシップは別のWHSへ引き上げしてあったので、GGはオリジナルのシップを持っていたと思われます。

 ドルトル様は15へ人を送っていることはご存じでしたが、どこからどのようにして送っていたのかは知らなかったそうです。

 軍の不徳のいたすところではありますが、このことはまだ伏せておりますので、他言無用にてお願いいたします。


 3つめは、移住について。

 移住も早く行わなければなりませんが、技術者や研究者、政府関係者以外の住民の住居を、一挙に整えることは不可能です。

 21の住民を集める土地を確保し、そこで自力で生活を始めてもらうことになり、最初は混乱も予想されます。

 ですので事前にそのための教育放送を連日流していきます。

 現在21の人口は8億。全ての人を送るには40年以上かかってしまいます。

 希望者のみ20年以内の移送、そして出産の可能性がある若い世代から送ります。

 こちらで人口を増やすわけにはいきませんので。

 その後は……。

 今はいい案がなにもでず、20年の間に考えることになるかと。

 機体は1000名収容のジャンボ型をWHSに24機ずつ配備して、ワームホールが出現してから消えるまでの24時間の間に、できるだけ多くの人を送りたいと思います。

 機対数は現在まだ半分しかありませんので、シイカ様の企業にご協力いただき、早急に製造ができればと。

 ここにいるみなさまに関しましては、希望にそうように15へお送りいたします」


 そこまで話してジャキオは席についた。


「ありがとう、ジャキオ。

 それでだ、今後のGGへの対応なんだが。

 証拠がかたまり次第、活動休止になる。

 今までGGが受け持っていた、国や軍にかかわる全ての事業は、シイカに引き継いでもらう。

 これは各国の政府代表者の同意もとりつけてある。

 機体の製造のこともあるが、断らないでくれよ、シイカ。

 そして、アークエンジェルにはそのサポートを頼みたい」


「問題ありません。

 私は21に骨をうめるつもりですから、命ある限り国に尽くします」

 シイカがさらりとそう言った。


「そ、そうだったのか。

 21に残る決意をしていたのか。

 おそれいったね……。

 サンは? サンはどうするんだ?」

 マクベスがサンジェストの方を見た。


「人にものを尋ねる前に、まず自分のことから話すべきだろう」

 サンジェストは腕組みをしたまま、年のはなれたマクベスに上から言った。


「お、おお、それもそうだな。

 俺かあ……。

 ワームホールは確実にできにくくなっている。

 15へのワームホールも良くて週に2回、月に1度しか出現しないときもある。

 ゼロへは概ね2、3日に1回。

 こんな状況で国民をどんな順番で送るか、まだ見当がつかない。

 15にはワイトの問題もあるしな。

 シイカが21に残ってくれると言ったので、それで光明が見えた。

 国の施設の運用をしている主要な企業が15へ行ってしまえば、残された人々でその運用をしていくには無理がある。

 ワームホールは出現しなくなる可能性があるから、15に住みたい者は21との行き来を嫌がるだろう。

 残された人々のことなど考えずに、21を捨てていく。

 21の政府が15への都市国家づくりに本腰を入れれば、ワイトがいても15へ移住したがる者も増える。

 兵や指揮官は最優先で15へ送り込むが、俺があっちに渡るのはおそらく……10年後くらいかな。

 ワームホールが現れなくなったら、シイカ同様、俺もここに骨をうずめる。

 で、サンは?」


「私は、15にエッグブースを作る」

 横にいたシュリが吹き出し、シイカも笑いをこらえている。

 他の者は口を半開きにしてかたまってしまった。


「あ、いや、サンよ、ってことは移住するってことなんだな?」

 マクベスが動揺しながら質問した。


「どうかな、まだ決めてない。

 15では僕がエッグブースを運営するんだ。

 ペトロなんかよりずっと良いアイデアを持っているからね」

 サンジェストが一人称を、私から僕に変えたときは、自分の考え一色で、子供のような言い方になってしまう。


「私が代弁します」

 シュリが手を上げた。


「サンジェストは、21でのアークエンジェルの運営があるので、簡単に15に移住はできません。

 ですが、新しい武器のテストなどにも役立つVRゲームの施設は、状況が許せば、早々に作りたいと、そう考えております」


 シュリが言っている内容に、サンジェストはうなずいている。


「な、なるほどな。よくわからんが、まあいい。

 アークエンジェルも運営を続けてくれるなら、シイカも助かる」


「あの……」

 シイカが手を上げた。


「ここで話す内容ではないかもしれませんが、GGと無関係とも思えなかったので、少しみなさまの意見を拝聴したく存じます。

 現在、行方不明になっているものが数名おります。

 椅子取りゲーム終了後に最後に残った赤組のメンバー全員が姿を消し、行方知れずです。

 その者たちの情報は皆無で、施設内の監視カメラに、ゲーム後の彼らの映像は一切ありませんでした。

 通信障害で、その時間帯の通信情報もない。

 施設外の監視カメラにもいっさい映っていないので、グリーンゲートの施設からは出ていなかったと思います。

 この件があって、私どもの私兵がたびたび行方不明になることと関係があるのではと思いました。

 ただ、仮に拉致されたとして、その目的が釈然としません。

 15に連れていって仲間にするにしても、大きなリスクを冒すほど必要となる人材だったのでしょうか?」


「すみません、私がお話してもよろしいでしょうか?」

 ドルトルが遠慮がちに手を上げた。


「今回マクベス様に新しいフォース武器の設計図をお渡しいたしました。

 GGでは試作品のテストを終えて、量産体制に入っていたと思います。

 その武器はフォースの量に比例して攻撃力と攻撃速度があがります。

 体の反応や視界認知が間に合わないため、専用のフォーススーツやゴーグルも制作されました。

 本人の戦術の知識量にもよりますが、人によっては百人力の働きができるでしょう。

 まさに人型の戦闘する機械になるのです。

 フォーススーツにより疲れもほとんどありません。

 GGがいくら人を送り込んでも、解放軍として集った人々を掌握しても、絶対的に人数がたりません。

 ですのでランクが高いフォース持ちや、戦術に長けたフォース持ちを手に入れるために、拉致をしているのではないでしょうか」


「百人力って……」

 シイカは椅子の背もたれによりかかると、黙ったままテーブルの上を見つめた。


「現在、行方不明者の捜索は続けていますし、もし15に連れて行かれたとすれば、今後の15との行き来で情報があがってくるはずです」

 ジャキオが言った。


「ユウキたちなら大丈夫だ。 レミがついてる」

 サンジェストの少しずれた物言いが、なぜか場をなごませた。


「シュリ、あの話を。今しておいた方が良い」


「わかった、サン。

 では……アークエンジェルから1つ提案を」

 シュリはそう言いながら手元のパネルを打ち出した。


「ジャキオ、画像データを数枚送ったから正面のモニターに表示して」


「はい!」


 そこに映し出されたのは武器の設計図と、模型の3D画像だった。


「こ、これは……」

 ドルトルが前のめりになってその画像を見ている。


「フォース対応のバトンだ。

 降り出せば3倍の長さまで伸びる。

 もう刀はいらない。

 返り血をあびながら戦うなんて悪趣味だ。

 叩いて相手がとまればいい。

 これが殺傷能力がないわけではない。

 強く叩き続ければ人を殺すことはできる。

 我が社が開発したカーボンスチールで弾性もあるが対衝撃度は通常のダガーの半分以下だ。

 相手を切り刻むような戦い方はやめたほうがいい」

 サンジェストが言った。


「さっきドルトルが言っていた武器の頭をこれに変えられないか?

 それができれば、対人戦になっても、死なず殺さず……とまではいかないが、死傷者の数を減らせると思う」

 シュリがドルトルに言った。


「いいですね。過去型の15に行けば血を見る争いばかりになると思っていました。

 そう、叩いて止められればそれでいい。

 刃の部分のすげ替えをすぐにやってみます」

 ドルトルはうれしそうに言った。


「アークエンジェルと一緒にねえ……。

 悪い話じゃあないから、了承するけど、ドルトル、君は軍の人間だからね」

 ドルトルが苦笑いをしている。


「あの……私が15へ帰るまでにその武器を完成させてください」

 リーシャがそう言うとマクベスがほほえんだ。


「リーシャ、長い間よくがんばったね。

 君に持たせる土産を、全力で準備させるよ」


 少し頬を赤らめたリーシャはコクリとうなずいた。


次回投稿は3月6日(月)13時です。

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