赤の砦(味方)
ファビオはテーブルの上で手を組むとユウキたちを見た。
「最初に謝っておこうかな。
初めて君たちに会った日に僕は、国がワイトの情報を発信しないから解放軍に応募した……って言ったけど、あれは嘘。
僕は王府軍の諜報員だ。
嘘をついて悪かった」
ユウキとサトルは、あまりに突拍子もなく重大すぎる告白に、困惑した表情を見せた。
その様子を見たファビオは少しほほえんだ。
「敵の陣地で、付き合いが浅い君たちに、こんな秘密を明かしたら驚くし、話の信憑性も疑うだろう。
安易に手の内を見せてしまう君たちに、他意を感じなかった。
純粋にゼロに帰りたい気持ちと、その本気度が伝わった。
僕の目的はいくつかあるけど、最終的には王都へ無事に帰ることも目的の1つ。
君たちも王都にあるセンターへ行きたいなら、そこは共通しているよね。
だからお互い協力しあって目的を果たすのもいいかなと思った」
(この展開って……もしかしたら、すごい味方が見つかったんじゃないか!)
ファビオの話をユウキは疑わなかった。
暗闇にトーチが並んだ道が出来たようで、うれしくて涙が出そうだった。
(見つかった……希望が、見つかった!)
5年ほど前からワイトが出現し、家族や大切な人がワイトになってしまった人々は、簡単にワイトを処分していく国に反感をもった。
その結果、解放軍に入ることを希望する人が増えていった。
その人たちと解放軍の窓口になる斡旋人が、さまざまな地域のコロニーに出始めた。
ワイトが増えるほど、寝返る人も増えていった。
ファビオはラシア国内のコロニーで、解放軍への入隊斡旋者に接触した。
集まった入隊希望者はラシア国の南にあるソウザ港から、国営のタンカーに乗船してフリカ国の東の半島にあるコンビナートまで行く。
タンカーの乗組員も買収されているから、国営にもかかわらず解放軍の協力をしている。
コンビナート到着後、近くのコロニーで待機していればフリカ国の黒の砦から迎えの車両がきて、いったん黒の砦に滞在したのち、それぞれの砦に振り分けられる。
「ここまでの話で王都へ行く手段が1つあることに気づいただろう?」
ファビオはそう言ってユウキたちを見た。
「タンカーで……、フリカから海を渡ってラシア国へ行くことができる」
「そう、そういうこと。
この世界は、ワイトのせいで何もかもがいいかげんなんだ。
それを利用して動けばいい」
ユウキとサトルは顔を見合わせた。
斡旋業者は、集まった解放軍希望者を各砦に送ることが、一番大変な作業だった。
特に砂漠地帯のワイトは、移動速度も攻撃力も群を抜いている。
「斡旋の業者は各砦の助けをかりて人を運ぶんだけど、人選は誰もやっていないんだ。
いいかげんだよな。
僕らはチームで行動しているから、斡旋業者に金を握らせて、チーム全員を、ここスリトアへ送らせた。
任務の対象国はフリカとスリトア。
フリカには別のチームが入っている。
集めた情報は王府軍に衛星携帯で送り、そこから指示も受ける。
任務の内容は言えないが、協力する気があるなら、僕らの仲間に迎えてもいい。
というか……仲間になるよね?」
「頭が整理できない。
少しでも知っていることがあれば、質問もできるけど、初めて知ることばかりで……」
ユウキはそう言ってサトルを見た。
「でも王都に行くっていう目的が一緒なら、仲間になってもいいんじゃないか?」
「か……かるいなサトル。
でも確かにそうだ。
みんなにも話をしてみるから返事は少し待って欲しい。
今いる赤バングルの6名は一緒に拉致されたんだ」
「わかった。僕らの仲間になってくれればもっと情報をあげられる」
「ねえ、さっき衛星電話って言ってたけど……それは解放軍にばれないの?
ばれたらワイトの中に放り出されちゃうよね?」
サトルが言った。
「ああ、バレない。
解放軍は衛星をもっていないからね。
それに衛星電話を持てるのは諜報活動をするときだけで、定期的にシステムの書き換えがあるんだけど、認証方法をしらないと更新できずに使用ができなくなる。
王都の北東にドヴェ島という、宇宙センターしかない島があって、そこで必要な衛生があげられている。
21の人たちが作ったんだ」
「なんかものすごくこんがらがるんだけど……。
今言った21の人っていうのは王府側ってこと?」
ユウキが聞いた。
「えっと、紙……。
この砦の地図しか持ってないけど、この裏でいいか……」
ファビオは説明をしながら、戦いの構図を地図の裏に書き始めた。
「わかりやすいようにチーム分けしよう。 ゲームみたいだ」
そう言ってファビオはクスッと笑った。
(1)昔からの争い。
【構図】
王族チーム(対)貴族チーム
王族チーム(王族、王族側の貴族、ラシア国軍)
貴族チーム(ルイバー伯が率いる反王族の貴族、貴族の私兵軍)
昔からラシア国の政治はルイバーが中心となり他の貴族は付き従う形で国政をまわしていて、王族は飾り物だった。
だが、国軍は絶対的に王族の味方であり続けた。
※このころの王都とは、ラシア国王の王宮がある場所。
(2)ワイト発生後に解放軍が現れ、王府打倒とワイトを救うことを目指して争いが始まる。
政府は3国の政府が合わさり、王府と呼ばれ、その軍は王府軍と呼ばれた。
【構図】
王府チーム(対)解放軍チーム
王府チーム(王族チーム+貴族チーム)
王族チーム(王族、王族側の貴族、王府軍、21の協力者)
貴族チーム?(反王族の貴族、貴族の私兵軍、GG)
解放軍チーム(解放軍、GG)
「2の構図にある貴族チームは、解放軍との争いに関しては王府チームということになっているが、本当のところはまだわからない。
解放軍は王府チームと戦っていると思っているが、中身は王族チームと貴族チームに分裂している。
王族チームの21の協力者っていうのは、21から来た研究者や技術者で、宇宙センターを作った人たちも含まれる。
反王族の貴族もめんどくさい存在だが、くせものはGGと書いた集団。
貴族だけじゃなく、密かに解放軍ともつながっている。
反王族の貴族の目的はいわずとしれた自分たちの中央集権の確率。
そのために王族を排除したいが、王族には軍がついているから長年うまくことを運べなかった。
どういう経緯かわからないが、そこにGGが加わった。
GGは力を貸しているように見えるが、実際どうだろうか。
まだ目的がよくわからない」
ワイトをどんどん処分していく王府のやり方に世論は反発したが、処分しているのが反王族の貴族チームだということを知らない。
多くの人は王族がやらせていると思っている。
15のワームホールは双方向の行き来が出来るのはセンターだけで、出現は残り4つのWHSのどこになるかわからないと言われていた。
ところが5年ほど前から、センター、ジャッジビー、そしてここスリトアにしかシップが出現しなくなった。
アッシビーとフリカにはもう出現しないだろうと専門家はみている。
「解放軍ができて、4つの砦はあっという間に陥落した、というより無条件降伏して解放軍になった。
21から送られてくるシップが、解放軍の掌握する砦に到着すれば、その者たちは逆らえずに解放軍になる。
3年ほど前、ここスリトアに到着した、21のペンタグラムベースから送られた軍人が、今僕たちの仲間になっている。
その軍人たちが言うには、シップが21に帰らなくなった4年程前から、ペンタグラムベースからは軍人しか送っていないということだった。
にもかかわらず、軍人以外を乗せたシップが到着する。
しかも乗船者は、21からの有志という触れ込みだが、ほとんどが戦うタイプの人間じゃない。
みんな本当のことは話さないが、誰かが移民を15に送り続けている。
それとここ2年ほどの話だが、シップの出現場所がコントロールできているのではないかと噂がたっている。
ジャッジビーに集中的にシップが入っているらしい。
あそこは危険すぎてなかなか潜入することはできないが、砦の南には大きな都市の建設も始まっている。
21から持ち込まれたシップは、解放軍に砦を占拠される前はラシア国へ引き取られて21に戻されていたが、現在はジャッジビーとスリトアのシップ置き場に数十機が放置されている。
それが21のどの企業が準備したものなのか調べはついている」
「だめだ……全部は理解できないし、覚えきれない。
俺とサトルの頭じゃこの情報量に太刀打ちできないよ。
ラバス呼んでくれば良かった……」
「まあ、仲間になればいつでも話してあげられるよ」
「アハハ……そ、そうだね」
ユウキは苦笑いした。
「さて、姿を見せない策士が誰か教えよう。
GGっていうのは、グリーンゲートのことだ」
ユウキとサトルは少し驚いた表情をみせたが、納得もできた。
自分たちを拉致したゲルズは指示を出したのが誰か明かさなかったが、絶対にグリーンゲートの誰かだ。
「ファビオは、グリーンゲートを知っていたんだね」
ユウキが聞いた。
「ああ、諸悪の根源だと思っている。
決定的な証拠はつかませず、最後に貴族の下につくのか、それとも裏切って、15を手中に収めるのか。
後者だとすれば、イライザがこの世界の女王になるな」
「俺たちが拉致されたのもグリーンゲートの施設からだった」
サトルが言った。
「そうか……。
君たちよっぽど優秀なんだね。
ジャッジビーがフォース持ちを集めまくっているらしいが、それは対ワイトのためだけじゃないんだ。
ま、その話はまた今度、機会があれば話すよ。
しゃべりすぎて疲れた。
仲間と相談するといい。吉報を待っているよ。
話すときは、くれぐれも周りに注意をはらってね!」
ファビオはウィンクをすると去って行った。
ユウキとサトルは、少しの間黙ったままだった。
「先に進んだな、ユウキ。 みんなを集めるか」
「うん、遠征隊が帰るまでの休みの間に、ファビオに返事がしたい。
俺の気持ちは決まっているけど」
「俺も決まった」
2人は顔をみてうなずき合った。
すぐにメッセージを送ってみんなを呼び出した。
砦の地図はみんな持っているから、すぐに集まったが、ルイバディだけがなかなか来ない。
「遅くなってごめんよ」
遅れてきたルイバディが、そう言いながら石のテーブルの上にステッカーをばらまいた。
「な……なにこれ」
レミが座って腕組みをしたまま、得意げなルイバディを見上げた。
「ほら、前に言ったじゃん。目印。
これをさ、ヘルメットに貼り付けたり、リュックや水筒なんかにも。
大中小ってプリントしてもらった。
みんなの分も! つや消しだから光ったりはしないよ」
そのステッカーには21★ZEROと書いてあった。
「ありがとうルイバディ。貼り付けるかわからないけど、大切にするよ」
ラバスがそう言うとみんなが笑った。
「ところで、呼び出したのは何か大事な話があったからじゃないの?」
レミが言った。
ユウキとサトルはあたりを丁寧に見回した。
「ものすごく大事な話をする。聞かれたらまずいから、人がきたら教えてね。
まだ、半信半疑なところがないわけじゃないけど、掴む綱があるとすればこれだと思った」
真剣な表情でサトルが言った。
「おいおい、なんか緊張するな。早く聞かせて」
「今日俺たちは、強力な味方をみつけた。
暗闇の中に光がさした気がした」
ユウキはそう言うと、ファビオから聞いた話を始めた。




