赤の砦(赤バングルの見習い兵)
本日は1話のみ、13時の予約投稿です。
テント番号を確認するため、ユウキは首から提げているタグを見た。
YUUKI
Z-R10151
AB POS
ORG -----
T-30
(へえ、なんかそれっぽい。
血液型なんて誰にも言ったことなかったけど調べられていたのか。
テント番号は……30ってことだよね)
地図をみながら5人で男性用のテント場へ行くと、小型のテントが整列していた。
「100、いや200くらいあるな」
ルイバディが言った。
幸い、5人のテントは隣り合わせに並んでいた。
みんなで共同のシャワー室を見に行くと、タオルや石けん、下着や歯ブラシなど必要なものは全てそろっていた。
テントの中には簡易ベッドと木製の収納箱があり、その上に木製のコップや水差しが置いてある。
(狭いな。 それにこのベッド……絶対体が痛くなる)
服をかけるハンガーもテントの内側に何本かかけてあった。
リュックの中から黒の軍服を取り出しハンガーにかけたユウキは、ベッドに座るとそれを眺めた。
(椅子取りゲームで勝ったことがずっと前のことみたいだ。
本当に……15に来てしまった。
リーシャにはあんなに強く拒否ったのに)
はぁ、とため息をつくと、ユウキは顔を両手で覆った。
21の生活はゼロでは経験できないめまぐるしさと緊張、刺激があった。
だが命の危険はなかった。
15での緊張はすべて、命にかかわるおびえからきている。
パンッと顔を叩くとユウキは立ち上がった。
(得られる情報は頭に詰め込むんだ。
体はしっかり休めよう。
そうしないと動けないだけじゃなく、心が折れる。
早くシャーワーを浴びて授業まで仮眠だ!)
ユウキは常に万全な体勢で動けるように、体を管理していくことを決めた。
シャワーを浴びてテントに戻りベッドに横になると、手首に固定された端末を立ち上げた。
世界名ゼロ、国コード77と最初に表示された。
(事前に俺の情報でセッティングされている。
しかも表記は英語と日本語だ……。
21のときも感じていたけど、やっぱりパラレルワールドはゼロの違う姿なんだ。
ゼロをオリジナルと呼ぶってことは、時代の進み方の違いがあってもゼロの複製。
それなら同じ歴史があってもよさそうだけど。
もしかしたら星が……地球が生まれた時には、パラレルワールドは存在しなかったのかもしれない。
あるとき突然、地球の歴史の一部が切り取られるように複製されてそこから別の時間が流れ出す。
であれば同じ言語や人種が存在することも、違う歴史ができあがっていても違和感はない)
ユウキはそんな仮説をたて、複製が可能ならば削除されることもあるという結論に至った。
(21は……パラレルワールドを作った何らかのエネルギーによって消されるのかもしれない。
そのエネルギーって何かの……誰かの意思とかじゃないよな。
世界の間を行き来することは、あっちゃいけないことだったのかも。
いずれにしても消える可能性のあるパラレルワールドに長くとどまることは危険だ。
ゼロに帰らなきゃ)
端末を立ち上げたことで止まっていたメッセージが届いた。
『20時、訓練棟3-1に集合』
時間より早めに3-1にいくと案の定、仲間たちも集まっていて、席を寄せて話し込んでいる。
部屋の中には仲間の他に、少し離れた場所に金髪の男女がいた。
2人は集団に背を向けるように並んで座り話をしている。
ユウキが入室すると、チラッと視線を向けるだけで無関心の様子だった。
「来たねユウキ」
レミが空いている椅子を近くに寄せ、座るように促した。
「うん、みんなは早かったんだね」
「まだ集まったばかりだよ。
気になることがてんこもりで、じっとしていられなかった」
サトルがそういうとモニークやラバスがうなずいた。
「さて、全員集まったから話したいことを遠慮なく言っていこうか。
今後の予定が見えないから会えるときに話しておこう」
みんながうなずいた。
「まずおいらから。
ここの組織の印象だが、理不尽なことをしてくる軍ではなさそうだ。
アリシアは、逃げ出せないぞと脅しながらも、我らの仲間だとか言っちゃってる。
乱暴に扱われることはなく、なんとなく混ぜられてしまった感じだ。
ここに集まっているのは15民と21の有志で、自分たち解放軍は、21の侵略者たちからこの世界を守るとアリシアは言っていた。
ってことは、15はワイトの問題だけでなく、国の中に反乱分子まで湧いちゃってるってことだろう?
まさにここはその反乱分子の拠点で、おいらたちは国と敵対するがわにいる。
集まった15や21の人たちがどういう考えと意思でここに来ているかまだわからないから、信用はしないことだ。
おいらたちのように、拉致されてきた人間なら仲間になれるかもしれないけどね」
そう言ってルイバディは離れて座っている2人にチラッと目をやった。
「グリーンゲートの施設から連れ出されたから、この砦の組織もグリーンゲートかと思ったけど、解放軍とか名乗ったから混乱している。
解放軍とグリーンゲートは絶対無関係じゃない。その関係性を知りたい。
ルイバディが言ったようにワームホールの施設を不法に占拠していたとすれば、なぜ国はそれを放っておいたのかも気になる。
俺は……イライザ様の名前で釣られた。
俺が誘わなかったら少なくともユウキとレミはあの部屋にいかなかったし、事態は違う結果になっていたかもしれない。
ごめん……」
サトルはそのことでずっと自分を責めていた。
「やった人間が悪いんだよ。責めるべきは拉致したやつらだ。
気にするなサトル」
レミが言った。
「そうだよサトル。
僕たちが帰るために必要なことを全力で考えよう。
それ以外はどうでもいい」
モニークのその言葉にみんながうなずいた。
「あのさ」
離れて座っていた男が立ち上がって近づいてきた。
「こそこそ何話してるのか知らないけど、君たちここへ来たばかりだろ?
知りたいことがあったら聞いてよ。
僕はファビオ。で、あっちにいる女の子はツクタン」
「ツクタンです。どうぞよろしく」
ツクタンは立ち上がって敬礼をした。
「あ……よろしく。僕はラバス」
ラバスは慌てて立ち上がると頭をさげて挨拶をし、それにつられるように、他のメンバーも名前を名乗って軽く頭をさげた。
「おいらたちは今日この施設にきたばかりで、確かに知りたいことは山のようにあるが。
君たちはいつ来たんだい?」
「僕らがこの赤の砦に来たのは2カ月ほど前。
僕らの親は10年以上前に21から移住したんだ。
ラシアって国に家があって、ワイトが出てからはラシア国内のコロニーに移り住んだ。
国はワイトについての情報をあまり発信しないから、解放軍で教えてもらおうと思って応募したんだ。
最初は青バングルだったんだけど、いつのまにか赤になっていた。
あ、そろそろタイロンが来る。席につかないと。
話はまた。
僕のテントは8だ。良かったらたずねて来てね」
そう言ってファビオは席についた。
(ゼロにいたころだって人を疑ったり警戒することはあった。
でもここでは、どんなことを疑えばいいのかそれすら見当がつかない。
このファビオだって話を聞いていると疑う余地がないように思えてしまう。
むしろ好意的で仲間になれそうな気がする)
ユウキたちが机に向かって座り直すとすぐに講師が入ってきた。
背が高く一見きゃしゃに見えるその男性は青い瞳で周りを見渡した。
「私はタイロンだ、8名全員いるね。
今回は少ないな。
さて、教科書なんてないから、筆記用具を持たない君たちは、ひたすら覚えるしかない。
ちゃっちゃと話して終わらすよ。
君たちも疲れているだろうが、私はもっと疲れているのでね。
まず首から避けているタグを見て」
言われたようにみんな首のタグを見た。
「ああ、ファビオたちは見なくていいよ。知っているでしょ」
「はーい、心得てます」
ファビオは手を上げて返事をした。
「まず、そのタグは君たちの身分証。
バングルは見習いの階級章のようなものだ。
赤は一番上のクラス。
タグは書き換えをしながらずっと持ち続ける。
識別番号はタグ以外に体にも書かれているが、すぐ言えるように覚えておくこと。
識別番号の頭の文字はどの世界の者かを示し、連番の前の文字はどの砦にいるかを示す。
赤の砦ならばR。
次に血液型、組織。今は組織に何も書かれていないが見習いが終われば打刻される。
その下がTから始まるテント番号。
テント番号も見習いが終われば居住番号に変更される。
バングルには位置を追跡する装置がついている。
見習いが終わればバングルは階級章に変わり、今度は武器に追跡装置がつけられる。
武器をもたずに脱走はできないからね。
ワイトになった者は、持ち物全てをその場に置いて行くから、高価な武器を後で回収するためでもあるんだ。
ここで武器を手に入れるのは至難の業だ。絶対的に品薄だからね。
見習いが終わると階級章がもらえる。
服につけるバッジのタイプだが、足にも階級を刻印される。
だからわざわざ軍服に付ける必要はない……ああ、何人か付けまくってるやつもいるか。
そんなの部屋に置いておけばいい。
見習いが終わらないのに気の早い話に思えるかもしれないが、赤バングルの者で脱落者が出たことがないからね。
さて君たちのことについてだが。
どこからどうやってここに来たのかは詮索しないし、私が持っている情報もわずかだ。
すぐワイトになってしまうかもしれないし、まだ責任ももたせないから知る必要がないんだ。
見習いを終えて、さらに2階級あがるころ、配属先の監督官だけが君たちの素性を照会出来るようになる。
問題があれば……また見習いをやらされるか、致命的な内容であれば追い出される」
タイロンはそう言うとファビオに一瞬視線を向けた。




