表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/71

時空超え再び

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。

次の投稿は17日(金)13時です。


 ほこりの混じった空気のにおいと人の話し声でユウキは目が覚めた。

 鈍い意識のなか、手に当たる冷たいなにかに目をやるとそれはベッドのパイプだった。


「ここって……ゼロ……」

 意識を失う前、それが何日前なのか何時間まえなのかもわからないが、そのときいた場所は確かに未来的な所だった。

 この風景はゼロのようにも見えるが、それよりもっと過去の風景のようにも感じた。


「はっ!」


 思考が戻りはじめ記憶が今につながっていく。

「ここは……15だ!」


 慌てて上体を起こしたユウキは、頭に走る激痛で耳のあたりを押さえたまま動けなくなった。

 その瞬間、無造作に手をつかまれ注射をうたれた。


「鎮痛剤だ。どこかが壊れちまったわけじゃないから安心しな。

 到着したあとはたいがいこうなる」

 痛みで顔をみることもできず、前につっぷしたまま手だけを伸ばしていた。

 ものの10分もすると、嘘のように痛みがなくなった。

「はあ、助かった……」

 ため息をついたユウキは、周りを見渡した。

 コンクリート敷きに金属製の折板屋根がついた車庫のような建物のなかに、大量のパイプベッドが並べられ、大勢が横になっていた。


「歩けそうならベッド空けてね」

 痛みが取れてぼーっとしていたユウキに、通りすがった男が注射を持ったままそう言った。

 横を見るとまったく知らない人が寝ている。


「みんな……どこだ」

 建物の一部を切り取ったような、大きな出入り口が1カ所だけある。

 出口に向けてのろのろと歩いていたユウキは、サトルとラバスの姿を見つけた。


「あ……」

 その途端体に力が入ったユウキは走り出した。


「見つけた!サトル、ラバス!」

「おお、ユウキ!良かった。別々の場所に行かされてないかと心配したよ」

 サトルが胸に手をあててほっとした表情をうかべた。

「うん、ほんとうに、はぐれなくてよかった。

 すごい人数だね……僕たちだけじゃなかったんだ。

 ここって……15の世界なんだよね?」

 ラバスが見渡しながら言った。


「そうだと思う。

 次の時空超えはゼロに帰るはずだったのに……」

 ユウキが言った。


「この人たちも一緒に時空超えしたのかな?

 だとすればかなり大きなシップか、じゃなければ数機のシップが飛んだのか……。

 今はそんなことよりルイバディとレミを探さなきゃ!」

 顔を見合わせてうなずくと、3人は早足で出口へ向かった。


 出口ではチェック待ちの列ができていた。

 そこで手首に装着された金属のバングルをチェックしている。

 21にいたときは手首に固定した端末を操作して、メッセージのやりとりや様々な情報の確認ができた。

 自分の情報も指先1つで相手に渡すことができたから、こんな行列ができることはまずない。

 ここのやり方はかなりローカルで、ゼロの世界でよくあるコード読み取りの光景を見ているようだった。


 ユウキの順番が回ってきた。

 担当官がバングルにハンドスキャナーを当て、読み取ったものを机上の端末で確認しながら、書類に書き込みをした。

 それが終わると首元から軍服をめくって、鎖骨のしたあたりを見ながら何かを書類に書いている。

 最後に、ゼロでも見たことがある軍人のドッグタグのようなネックレスを渡された。


「そのタグは、バングルをスキャンしなくても普段必要となる情報を確認できるものです。

 あなたの識別番号以外にテント番号や管轄なども書かれています。

 階級があがればそれも書き込まれます

 施設の生活全般に関する案内はこの冊子に書いてあります。

 砦の地図もお渡ししますね」

 小さな冊子と折りたたまれた地図を渡された。


「それと当面の予定表を……あなたは赤いバングルですね。

 であればこれか。 この予定表に目を通してください」

 薄い書類を渡された。


「ありがとう」

(バングルの色で渡す予定表が違うのか……。

 この色分けに何の意味があるんだ)


 そこを通過したあとに、3人でそれぞれの鎖骨の下あたりを見た。

「鎖骨の下に……番号が入ってる。

 タトゥーされちゃった……」

 ラバスが困った顔をしている。


「死んでもすぐ素性がわかるように、体に書いたのかな」

「物騒なこと言わないでよユウキ……」

「あ……ああ、ごめんラバス」


「これはタトゥーっていうか刻印だな。

 かっこわるいなあ、牛じゃあるまいし」


 サトルの物言いにユウキとラバスは吹きだした。

「緊張感のないサトルのそういうところいいよね。

 深刻に考えるのがばからしくなる」

 ユウキがそう言うとラバスもウンウンとうなずいた。


 建物の出口から屋根のついた通路が続き、そこは屋外だった。

 人の波に押し流されるようにその通路を歩いていくと、先に赤い屋根のドームが見えた。

 入り口近くにはレミとルイバディ、モニークが立っていて、ユウキたち3人は走り寄った。

 ひとまず6人が会えたことに、みんな一様に安堵の表情をうかべた。


 赤い色のドームの中に入るとすでに200人ほどの人が詰めていた。

 ルイバディのあとについて壇上に近い位置まで、人垣をかきわけて移動した。


「みんな気づいたかな。バングルの色。

 私たち6人とも同じ赤だけど、他に白や青のバングルもいる。

 予定表は色によって渡される書類が違っていた。

 なにかの振り分けのためだろうが、6人が同じ色でよかった」

 レミのその言葉に周りを見ると、袖のすそからチラチラと見えるバングルには、確かにいろいろな色があった。


「あの、ここって本当に15なの?」

 ラバスが聞いた。


「ああ、間違いない。

 15のワームホールステーションは5つで、屋根が色分けされていると聞いた。

 その屋根には六角形の模様があるって話だから、まさにこれがそうだな。

 赤色で六角形の模様の屋根」

 ルイバディが説明した。


「いったんここで閉めろ!」

 大声で叫びながら壇上にあがる女性の軍人がいた。


 胸に大量の略綬を並べるその姿は、まるでゼロの軍人のようだった。

 唯一、ゼロでもこれはない……と思わせたのは、手に持ったステッキだった。

 光沢があり鉱物も織り込まれている21の軍服を着ていたせいか、その姿は古めかしくかっこ悪かった。

 更にステッキを持っていることが、古めかしさに追い打ちをかけていた。


 その女性の叫びで後ろの扉が閉じられた。


「解放軍赤の砦、司令官のアリシアだ。

 ここには15の民、21からの有志、そして特殊能力を持つ者たちが集っている。

 君らは今日から我らの仲間だ。

 おじけずいて逃げようとしても、ここを出て次に水を口にできるのは100キロ先だ。

 その間には当然ワイトの大群もいる。

 拒否や抵抗は無駄な行為だと心しろ。

 我々解放軍がかかげる主たる目的は、ワイトを殺さずに停止させ、将来、停止させたワイトから人を救うことだ。

 それともう1つ、21の侵略者たちからこの世界を守る!

 そのために諸君らの力をかしてほしい。

 6つのうち、すでに5つの砦を支柱に収めた我々にこそ勝機がある。

 世界を手に入れた暁には、我々の望む世界を、そして不自由のない贅沢な暮らしを諸君らに約束する。

 同志諸君、君たちの活躍を期待する。 以上」


 ドーム会場の扉が開かれ、数名の軍人が小走りに人をさばきながら出口へ誘導していく。


「特殊能力を持つ者たちが集っているって……。

 まさかフォース持ちの俺たちのことか? ふざけるなよ。

 無理矢理連れてきたくせに……」

 サトルが怒りをあらわにした。


「ねえ、ワイトってなに?」

 ラバスの問いにユウキはどう答えていいかわからなかった。


「詳しくはわからないが、人がなんかの原因で人じゃなくなってしまった……。

 化け物になったって言われている。

 おいらも見たわけじゃないからわからないけどな」


「そ……そうなんだ」

 ラバスは下を向いてしまった。


「あのさ、ラバス。

 俺たちがここに連れてこられた理由が、その特殊能力だったとしたら、普通の人よりワイト戦で活躍できるからだと思うんだ。

 ゲームのとき、周りが見えなくなった俺はラバスを守れなかった。

 でもここでは暴走しないように注意して、ラバスを守るようにがんばるよ。

 って、実力もないのに偉そうだけど……。

 早くここを逃げ出すチャンスを見つけて、一緒にゼロに帰ろう」


 ラバスは歩きながら涙をぬぐって、小さな声でウンと答えた。

 サトルはユウキの肩をたたいて顔を見てほほえんだ。


 ドーム会場の出口のところで、首からさげたタグを確認した係員が、1人1人にスマートウォッチのような端末を手渡した。

「砦やコロニーでは問題なくどこでも使えます。

 それ以外の場所……外地と呼びますが、外地では通信距離は1キロほどです。

 砂漠地帯で砂嵐がある場合は200メートルまで落ちます。

 場所によって通信状況は大きく変わります。

 よく使うことになるのはメッセージと会話の機能でしょう。

 最初にもらった冊子に説明があるので目を通してください」


 ドームを出ると近くの草の上に6人で円陣を組んだ。

「結構自由にさせてくれるから、それは驚きだった。

 もっとも逃げ出せないからだろうけど。

 予定表を見ると今夜からさっそく教養の授業があるね。

 ここを知るにはありがたいけど、のんきにそんなことをしていていいのかと思ってしまう」

 レミがそう言った。


「100キロも離れてるって言われたらうかつに動けないな。

 それって本当かね? 実は間になにかあるかも。

 そういうのも探りたいなあ。

 でも、今しばらくは、様子を見るしかないだろう」

 ルイバディの言葉にみんな小さくうなずいた。


 テントに行き、シャワーや食事をすませて夜の授業にそなえることにした。

 砦の地図を見ながらテントに向かったが、女性用のテントはかなり離れたところにあり、レミとは分かれることになった。


本日は1話のみ、13時の予約投稿です。

次の投稿は17日(金)13時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ