謀られた未来(2)
今日投稿予定だった(暗転)を土曜日に投稿しました。
本日は2話投稿。13時と20時です。
これは2話目です。
垂直離着陸機から降りると、示し合わせたように全員が深呼吸をする。
緑の丘を抜けてくる風は心地が良いだけでなく、体に生気が流し込まれるようだった。
「緊張感なさすぎるな、俺たち」
サトルの言葉にみんな笑った。
「お腹減りすぎてるんだけど、先になにか食べさせてよ。
じゃないと暴れちゃうよ」
ルイバディがそう言ったが、同行した男たちは黙ったままだった。
施設に隣接する倉庫のような建物に入ると、戦闘服を着込んだ女性から軍人が使うような大きなリュックを渡された。
同行していた見張りの男たちは、その女性から書類になにかを書き込んでもらうと、建物から出て行った。
「そちらに着替えと水や食料が入っています。
今から30分後に、ベースチップ以外の全てのチップの回収作業を行います。
着替えや食事をすませておいてください」
それだけ言うと女性はどこかへ行ってしまった。
「見はりもなしですか……逃げちゃうぞお」
ルイバディはもらったリュックのヒモをほどいて逆さにした。
服や食べ物の入った袋、そして飲み物が転がった。
みんなは着替えを始めたが、レミがためらうことなく脱ぎだしたため、男性陣は慌てて後ろを向いて着替えた。
飲み物は水とフルーツジュース、食事はサンドイッチや果物、それに菓子が入っているだけだった。
「まじか……これだけじゃあ力がでないじゃないか!」
ルイバディが怒っている。
「僕のを半分あげますね。こんなにたくさんは食べられないから」
ラバスはルイバディにサンドイッチを半分わけた。
「ありがとラバス! いいやつだな!」
「あはは……」
ラバスが苦笑いをした。
「ここが、第5、15、5ってこと?
何の施設なんだろう。
これから何をされるんだ」
モニークが不安そうにそう言った。
あたりをキョロキョロと見回したルイバディは、手のひらを上に向けて手招きをした。
全員が体を近づけると、口に頬張った食べ物を飲み込んでからルイバディが小声で話し始めた。
「今から驚く話をする。
声がでちゃいそうな子は最初から口をおさえてね」
ルイバディがそう言うと、ラバスは口を押さえた。
それを見たサトルとモニークが吹きそうになった。
「ラバスかわいいな、おもしろすぎる」
サトルがそう言ってからかうと、ラバスは口を押さえたまま顔を赤らめた。
「はい、みんな集中!
まず、15、5っていうのはPW15へ向かう施設の5番目ってことだ。
おいらの考えが正しければ、これから15へ時空超えをすることになる」
ルイバディの話に困惑したユウキたちは顔を見合わせた。
「あの……PW15って、なに?
もしかして、こことはまた別の世界があるってこと?」
15のことを知らないラバスが怯えるような目をルイバディに向けた。
「ラバスは……知らなかったのか」
ルイバディは刈り上げた後ろ頭に手をおくと、小さくため息をついた。
「どういうこと? みんなは知っていたの? ねえユウキも?」
ラバスの目には涙がたまっている。
「うん……」
ユウキは返事をすることしかできなかった。
(どう説明すればいいんだ……化け物がいる世界なんて)
ユウキは下唇を強くかんだ。
ルイバディが口を開いた。
「ラバスが思っているように、15はこことは別のパラレルワールドだ。
詳しいことは、追々話をしていく。
簡単には説明できないし、今聞いても余計に混乱するはずだ。
心配するなとは言わない。
ただ、ラバスは1人じゃない、仲間がいる。
気持ちを強く持ってほしい」
ルイバディの目を見つめ、微動だにせず話を聞いていたラバスは、袖で涙をぬぐった。
「僕、がんばるよ」
ルイバディはラバスをみながらうなずいた。
他のメンバーもほっとした様子でため息をついた。
「よし、んじゃあこの施設についてちょっと話す。
本来ここは軍が管理している施設だ。
運営の一部をグリーンゲートに任せることがあっても、シップの航行管理や出発の許可、それと移動する人員や物資なんかの情報はすべて国がにぎっている。
ここで起こること、起きたこと、全ては軍が掌握しているはずの場所なんだ。
おそらくこの施設は今、不法に占拠されている。
国が我々を連れ去ることはあり得ないからな」
ルイバディが言った。
「ちょっとまって、どうしてルイバディはこの施設のことがわかるの?
軍の管理がどうとか……なんでそんなに詳しいの?おかしいよ。
ルイバディって軍人なの?
赤組にいたから軍の人じゃないって思っていたけど。
民間人が知らないようなことを知ってる。
だいいちその冷静さもおかしい」
モニークが言った。
「冷静さもおかしいって……面白いこというねモニーク。
まあ半分当たり。おいらは元軍人だ。でも他には内緒だよ。
特に敵には知られないようにね。
おいらはずっととぼけておくから」
「そう……だったんだ。なら納得した」
モニークが言った。
「軍人だったんだ、すごく心強い。ちょっとほっとした」
サトルがはにかんだ。
(サトルも不安だったんだ。
ルイバディが元軍人で良かった。俺もほっとした。
レミもいろいろなことを知っているし、自分で決断して指揮ができる。
サトルやラバス、そして俺もメンタル弱者だし、この世界で多少変われていたとしても、いったん不安になるとそれが大きくなる速度が早い。
レミとルイバディがいてくれるおかげで、俺たちは取り乱さずにすんでいる。
ゼロにいたら大抵のことは逃げられたのに、この世界で追い詰められることになるなんて。
本当にこのまま15へ連れて行かれてしまうのか……)
「連れて行かれそうなのはわかったけど……。
15に行くのは絶対いやだ。そんなの困る。
ゼロにも帰れなくなりそうだし……。
なにか今できることはないの?」
懇願するようにユウキがルイバディやレミを見た。
「ない」
「ないなあ」
レミとルイバディの答えがかぶった。
下を向いたユウキの肩にラバスが手を置いた。
「15に連れて行かれるなら、そこで帰れる方法を探って、チャンスを待つしかないだろう。
希望はすてるな、6人でがんばろうや」
ルイバディが励ますように言ったが、レミ以外は黙ったまま下を向いてしまった。
「落ち込んでる暇はないよ。
元の場所に戻るために動かなきゃいけない。
何でも良いから情報を集めよう。
元気だそうよ、みんな」
レミのその言葉にみんなは顔を上げて少しうなずいた。
「おいらたちに渡された軍服は砂漠用迷彩だ。
ってことは、おいらたちが送られる15にあるワームホール施設は砂漠地帯ってことだ。
こんなささいなことでも先を予測できたり、気づけることはある。
6人の目と耳で情報を集めよう。
それと、装備品の中にバラクラバがあるんだが……目だけが出るかぶり物ね。
その上にヘルメットやゴーグルをつけたら、人数が多い場所だと誰だかわからなくなる。
だから目印を考えたい。
最初は血でもつけておこうかと思ったが、あまりに目立たないから、なにか良い案があったら申し出てくれ。
それと1つ大事なこと。
何も知らないまま15へ連行されるふりをするんだ。
おいらをまねして、みんなもとぼけるんだよ」
みんながうなずいたところで、戦闘服の女性が戻ってきた。
「ついてきてください」
一同はゆっくり立ち上がると、顔を見合わせてから歩き出した。
◇
21の世界にはワームホールステーションと呼ばれる施設が9つあり、それぞれに施設番号がつけられている。
ゼロ行きの施設は4カ所で施設番号は0-1から0-4、15行きの施設は5つで施設番号は15-1から15-5。
施設番号の前には必ず国番を明記し、メインパレットに関してはMをつけることになっている
施設番号
メインパレット M-0-1、M-0-2、M-15-1,M-15-2、M-15-3
第1国 第1-0-3 第1-15-4
第2国 第2-0-4
第5国 第5-15-5
◇
今日投稿予定だった(暗転)を土曜日に投稿しました。
本日は2話投稿。13時と20時です。
これは2話目です。




