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暗転


 3人がブースを出たところで、端末に目をおとしながら歩いていたサトルが立ち止まりつぶやいた。

「チャムからだ……。 んー、今からって、どうしよう」


 チャムの名前を聞いて、ユウキはアッガイから頼まれていたことを思い出した。


「あっああ! チャムと連絡がとれないってアッガイが心配してたんだった。

 良かった、ちゃんといるじゃん」


「確かに連絡がとれないって私も聞いた。

 端末とかメッセージ用ソフトのエラーかもね。

 アッガイに知らせてあげるか……」

 レミはすぐに端末を操作したがエラーになった。


「あれ? 言ったそばから私のもエラーになった。今日使えていたけどな」

「え? 俺も試してみる……」


 端末を操作し始めたユウキに、グリーンゲート職員の制服を着たきゃしゃな男性が近づいた。


「少しよろしいでしょうか?」

「あのさ、今から時間ある?」

 その男性とサトルの言葉がかぶった。


「え?」

 ユウキとレミが、サトルと男性を交互に見た。


「失礼しました。お先にどうぞ」

「あ……もしかしてあなたが迎えの人?」


「はい、チャムからのメッセージをご覧になりましたか」

「うん、なんか仰々しい書き方でチャムらしくないけど……内容は確認したよ」


 ユウキとレミは何のことかわからずぽかんとしている。


「ああ、ごめん。2人とも少し時間もらえないかな?」


「今から? 正直、疲れ切ってるから早く寝たいけど」

 レミは口に手を当ててあくびをした。


「イライザ様がみな様に会われたいと仰せで、お迎えにあがった次第です。

 あ、申し遅れました、私はゲルズと申しまして、イライザ様の秘書の1人です」

 ゲルズはそう言うと胸に手をあてて軽く頭を下げた。


 驚いたユウキとレミがサトルを見た。

「そういうこと。

 拒否してもいいけど、望んでも会うことがかなわない人だから、会っておいて損はないと思う」


 ユウキとレミは顔を見合わせる。


「よくわからないけど、サトルが行くなら俺も行くよ」

「まあ、2人が行くなら私も行く」


「ありがとうございます。ではご案内いたします」

 エッグブースの周囲を囲むように作られている細い通路を、ゲルズは3人の先に立って歩きだした。


「にしても、今まで一度もエラーなんて出たことがなかったけど。

 サトルが使っているグリーンゲートのツールは大丈夫なのに、へんなの。

 もう1度送ってみるか……」


「ああ、お待ちください。

 只今、エッグブース周辺の設備を管理する施設でトラブルが起きていまして、そのせいで通信が不安定になっているものと思われます。

 朝までには復旧すると聞いておりますので、送られても再びエラーが表示されるかと」

 ゲルズはチラッとレミに視線を向けたが、すぐ前にむき直してそう言った。


「そうですか、じゃあ起きてから送ろう」

 レミは少し怪訝な顔をして、真っ赤な長い巻き髪を後ろにはらった。


 VIP観戦ルームのエレベータホールへ向かう途中、石畳の通路を歩く3人は幻想的なその風景に思わず足を止めた。

 幾度か目にしている風景だが、その位置から見ると、戦士たちの広場の建物やその上のテラスも見える。

 それぞれの場所に光の装飾がされ、今まで気づかなかった景色がそこにあった。


「ここからも絶景だな」

 サトルがつぶやいた。


「これも見納めか……」

 ユウキは小さくため息をついた。


 すでにエレベーターホールの前に到着したゲルズが振り向いて言った。

「申し訳ありません、少しお急ぎ願えますか」


「あ、すみません」

 ユウキが謝り、3人はエレベーターホールへ急いだ。

 まさか乗ることができるとは想像していなかった観戦ルーム行きのエレベータに乗った3人は、透明のボックスから見える外の風景に釘付けだった。

 降りた場所には小さなエントランスホールがありそこから左右に伸びた通路ぞいに、いくつかの扉があった。


「観戦ルームとは思えないね、この広さ。 どこかの邸宅みたいだ」

 レミが周りを見渡しながらそう言った。


「こちらの待合室でお待ちください」

 案内された部屋に入るとそこにはラバス、ルイバディとモニークがいた。

 顔を見合わせた6名は一瞬固まったように静止したが、すぐに歓喜の声をあげながら抱き合った。


「お疲れ様、良い戦いだった。ものすごく感動したよ」

 モニークはそう言ってそれぞれの手を握った。


「しっかし強かったね君らは。

 おいらは思ったより活躍できなくて面目なかったが、それでも十分楽しめたよ」

 ルイバディはガハハと笑いながらそう言った。


 ハグをしたあと静かに体を離したラバスを見たユウキは涙ぐんだ。


「ごめんラバス、俺……」

「どうして謝るの? 楽しかったじゃない。 それでいい。

 いい思い出ができたよ」

 ラバスが笑顔をむけてくれたことがユウキはうれしかった。


「うん、そうだな、いい思い出ができた」

 そう言ってユウキもほほえんだ。


「どこかで観戦していたんでしょ?

 勝負が決まってからここに呼び出されたの?」

 レミがモニークに聞いた。


「そう、戦士たちの広場で観戦していたんだけど、勝負がついたらすぐにメッセージが来て部屋の外にでた。

 案内人はすでにそこに待機して僕たちを待っていたんだ。それでここに案内された」


「ふーん、最後の戦いに残った赤組メンバー全員が集められたわけね。

 イライザ様がわざわざ挨拶とは……」

 レミは頬に指をあてながらなにか思案している。


「サトル、チャムは来るのかな?ゼロに帰る前に会いたかったけど」

 ユウキが聞いた。


「さあどうかな、メッセージには来るとは書いて……」

 サトルがそう言いかけたとき、ドアが勢いよく開いてチャムが飛び込んできた。

 顔を赤らめ焦ったようすのチャムの表情は緊張しているように見えた。


「みんな、逃げて」

 声をころすように、でも強くチャムが言った。

 その様子を見たレミはすぐに動いた。


「みんな出るよ、もたもたしない!」

 チャムの後をついて全員が部屋を出たところで、ハンドガンを構えた職員が数名立ち塞がった。


「おだやかじゃないね。子供相手に銃をかまえるとは」

 レミが相手を睨みながら言った。

 銃を構えた職員の後ろからゲルズが歩いてくる。


「チャム、がっかりさせないでくれ」

 ゲルズが手をあげると1人の職員がチャムを撃った。


「チャム!」

 叫んだユウキは、反射的に撃った相手に飛びかかろうとしたが、それをルイバディがつかんで止めた。


「なにすんだ、離せよ!」

「落ち着け! 気を失っているだけだ」


 よく見ると出血はなく、かすかだが動いている。

 気が抜けたユウキだったが、ゲルズを睨んで叫んだ。

「おまえ絶対許さないからな!」


「ゲルズ、これはイライザ様がさせているのか?

 なぜチャムを傷つけた! 俺たちを連れてきた目的はなんだ!」

 サトルは顔を紅潮させてどなった。


 ゲルズが職員に目配せをすると、1人がチャムを担ぎ上げて通路の奥へ去っていった。

 レミは下唇をかんで、運ばれるチャムの姿を目で追っている。


「誰がさせているのかって……それは答えられません。

 あなた方に危害を加えるつもりはない。

 チャムが土壇場で裏切るとはとんだ番狂わせでした。

 難しいことではなく、ただご同行願いたいだけです。

 騒ぐようでしたらあなたがたもチャムのように意識を失ってもらいます。

 おとなしく応じてもらえるなら何もいたしません」


 レミとルイバディは視線をあわせて小さくうなずいた。

「わかった、従おう。だから手荒なまねはしないでくれ」

 ルイバディが言った。


「懸命な判断です。

 チャムが余計なことをしてくれたので、少々予定より早いですが、ご案内することにいたしましょう」


 ◇

 その頃、戦士たちの広場で観戦を終えたハルやレモンもユウキたちと連絡がとれなくなっていた。


「おかしいね、何度やってもエラーが出る。

 まあ午前中にチップを外したら、そのあとは打ち上げのパーティーだから、そのとき会えるよ。

 みんな疲れているはずだから部屋に戻って寝ちゃったかもしれないし」

 心配するハルにレモンはそう言って励ました。


「そう……だね。すぐ会えるもんね」

 そう言いながらも、ハルの不安な表情は消えなかった。

 ◇


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