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椅子取りゲーム(1)

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。


 ◇

「はーい、ジェームズです。

 最上階戦は白組が優勢でしたね!

 残念ですが、結果発表の前にBETは締め切られています。

 現在掛け率は白組が約70%と、圧倒的な人気です。

 赤組には黄色い炎の戦士が残っていますから、番狂わせがあるかもしれません。

 赤組に賭けられている方は乞うご期待!」

 ◇


『キングドームが開きます』

 電子的な声のアナウンスが流れた。


 そのまま椅子取りゲームに移行していき、ユウキはハルを守れなかったことを悔やむ暇もなかった。

 赤組メンバーはレミ、ユウキ、ラバス、モニークとルイバディの5名で、盾持ちはラバス、ショートソードはユウキだけだった。

 半円状のキングドームは、左右に分かれるように開いて、大きな透明の椅子が現れた。

 氷彫刻のようなその椅子に、真っ赤なローブに身を包んだキングが座っている。


「え? サトル?」

 ユウキがつぶやいた。

 赤組のキングはサトルだった。


「サトル!」

 ユウキの呼びかけにサトルは立ち上がりながらニッと笑った。


 白組との間のシールドが徐々に透明になっていく。

 白組のメンバーの中には、海賊ゲームで一緒だったキンジャルが盾を構えていた。

 真っ白なローブを羽織った白組のキングは女性で、立ち上がったそのキングが声を上げた。


「レミ! キングはあなたじゃないの? 残念!」

 ぶっと吹きだしたレミは、片手のソードを高く上げてそれに答えた。


「久しぶりだねベルベッド。

 私よりこのサトルの方が強いから戦いがいがあるはずだよ!」


「ふーん。 まあ全部倒しちゃうから誰が相手でも関係ないけど!」

 そう言ってベルベッドはケラケラと笑った。


「チッ……」

 レミは舌打ちをしながらも、ほほえんでいた。


「さあ、泣いても笑ってもこれが最後。

 悔いが残らないように楽しもう!」

 レミのその言葉に、メンバー全員は武器を上げて「おおー!」と叫んだ。

 サトルが赤いローブを前方に投げると、白組のキングも同じように投げ捨てた。


『シールド解除されます。

 5秒前、4、3、2、1……椅子取りゲーム開始』


 ラバスは開始早々、唯一白組の盾持ちだったキンジャルに突っ込んでいった。

 レミは、ロングソードが一番光っている大男に突進した。


 ユウキの所には4人が攻めてきたが、そのうちの1人、エイデンのソードをモニークがはじいた。


「ユウキばかりを攻めるなよ、君の相手は僕がやらせてもらう」

 モニークがそう言った。


「君じゃあ物足りないかもしれないが、せっかくの申し出だからお受けしよう」

 そう言ってエイデンは思い切りモニークに打ち込んだ。


 ルイバディは残った者と戦い始めた。


 3人を相手にすることになったユウキだが、抵抗できる自信はあった。

 少し前から敵に打ち据えられても、生命ダメージをそれほど受けなくなっている。

 なぜそうなったのかはユウキの理解の範疇をこえていたが、それは外界のフォースを受け入れたことによるものだった。

 ただ守る者がいない時のユウキはなぜか力があふれてこない。

 守ろうとする気持ちが強くなると、エネルギーの放出が大きくなるようだった。

 そしてリーシャと対峙したときのように、その限界点を超えると今度は感情が消えて、脳は戦いのための反応をするだけになる。


 ユウキに戦いを挑んでいるロングソード3人は囲い込むようにして代わる代わる攻撃をしてくる。

 1打撃のヒットで受けるダメージで、さほど生命は削られないが、3人からの連打のため、被弾する数は相当なものだった。

 徐々にユウキの生命ゲージが減っていく。


 早々に敵を倒したルイバディがユウキの加勢に来た。

 ユウキを叩き続ける3人のうちの1人に後ろから跳び蹴りをした。

 蹴られた白組の兵士はユウキの横をかすめ、メタルフロアをすべっていった。

 

「このやろうー!」

 蹴られた白組の兵士は大声で怒鳴った。

「おいらが相手をしてやる。かかってきなさい」

 ルイバディはそう言うと手のひらを上にむけて、挑発するように手招きをした。


 相手が2人に減ったおかげでユウキは反撃の手数を出せるようになっていた。

 ショートソードでもユウキの攻撃は強く重い。

 しかもソードさばきは目で追いきれないほどだった。

 1人の兵士は少し後ずさりを始めた。


 そのとき、白組の盾キンジャルと戦っていたラバスが悲鳴をあげた。

 見るとキンジャルのショートソードで胸を刺され、握りしめた盾にしがみつくようにラバスは座り込んでいる。

 ユウキの心に火がついた。


「ラバス!」

(待ってろ、俺が守る!)


 ユウキは戦っていた2人から離れラバスのもとに駆け寄った。

 ソードの黄色い炎は大きくなり、体の光が徐々に強くなっていく。

 キンジャルはラバスにとどめを刺そうとしている。


「触るなー!」

 2本のショートソードを重ねるように、ユウキは叫びながらキンジャルの盾に突進した。

 キンジャルは数メートル宙を飛び、落ちたところで更に数回転がった。


「ユウキ、ありがとう」

 力なくそう言ったラバスは、痛みで立ち上がることができない。

 そこへユウキと戦っていた2人が向かってきた。

 だがユウキには、ラバスにソードを打ち込んだキンジャルしか目に入らなかった。

 先の方で立ち上がろうとしてるキンジャルめがけ、ジャンプして頭にソードを突き刺し、キンジャルは消えた。


 標的を倒し終えたことで気持ちが落ち着いたユウキが振り向くと、2人の戦士にラバスが倒されていた。

「あぁぁ……」

 ユウキは小さな悲鳴のような声を漏らした。


「俺……また……」

 怒りで我を忘れ、周りが見えていなかったことに気づいた。

 守りたかったラバスへの配慮はせず、標的にしたキンジャルにしか注意が向かなかった。

 ラバスを消した敵2人に対する怒りと、自責の念が入り交じり、混乱して動けなくなった。


「クッ……」

 そのとき、エッグに座っているユウキの頬に本物の涙がつたった。

 歯を食いしばりながら涙を流し続けた。

 涙を流すことで不思議と心は落ち着きを取り戻していく。


 ラバスを倒した2人が容赦なくユウキに攻め込んでくる。

 ユウキは無表情で軽くその攻撃をさばいた。


(少しわかってきた。

 誰かを守ろうとして熱くなると、俺はおかしくなる。

 その感情をなんとかおさえなきゃ。

 でも、どうしても許せないんだ。

 大事な人を消す奴が!)


「ウオォォ!」

 ユウキは声をあげると、打ち据えてくる1人の戦士の顔面を肘で殴打し、もう1人の腹に蹴りをいれた。

 顔面を打ち付けた敵の胴のあたりを、旋回しながら2本のソードで切りつけ、最後に1本のソードを首に差し込んだ。

 その敵が消えると、低い姿勢からジャンプしてもう1人の戦士の両足を刺した。

 ソードを抜くと瞬時に握り方をかえて2本を胸に突き刺し、あっという間に2人を消し去った。


 最初の頃とは明らかに戦いの思考が変わっていた。

 攻めや受けに対して、脳が下した取るべき対応に、体がただ反応しているような感じがしていた。


(戦うことが簡単になってきている。

 戦い方をもっと脳に詰め込めば、俺はどんどん強くなれる)

 戦闘の知識や知恵を持てば持つほど、強くなれることに気づいた。


「あんた、すげえな」

 敵と対峙しながらユウキの戦いを目の当たりにしたルイバディは、ガハハと笑いながらそう言った。


「おいらも終わりにしないとな」

 そう言ったルイバディは、飛びかかってきた敵兵のソードをかわしながら脇腹を足蹴にした。

 倒れそうになった兵士の背中を片方のソードで切りつけ、兵士が片膝をついたところでジャンプをしてとどめをさした。


「ふう、白組はあと2人か。

 俺はキングの援護にいくから、レミとモニークのサポよろし……。

 あ、モニークがやられた。

 えっと……ユウキ。

 モニークやったやつを倒してよ」


「わかった!」

 戦うことへの恐怖やためらいはなく、心のそこから楽しめていた。


 ◇

 戦士たちの広場では、先の戦いで離脱した戦士たちがモニターに釘付けになっていた。

 2階戦までとは違い、離脱者のチップ取り外しは、離脱後すぐではなく、今日の午前中に予定されていた。

 ただ離脱後はエッグブースから退出しなければならず、両組の離脱者は戦士たちの広場に集まって勝敗を見届けることにした。


 味方の戦いに一喜一憂しながら歓声を上げていたが、徐々に声が出なくなっていく。

 もうじき勝敗が決する予感を誰もが感じ、無言のまま真剣に見守っていた。

 手を組んで祈る者や指をかんでいる者もいる。

 ハルは勝敗には関係なく、ユウキやサトルの姿を見て涙ぐんでいた。

 ◇


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