3階戦(6)
本日は1話のみ、13時の予約投稿です。
ユウキとリーシャの戦いを目にした戦士たちの手が止まった。
「な……なんだよこの2人。人型のモブみたいじゃないか」
誰かがつぶやいた。
動揺する白組の戦士に向かってエイデンが叫んだ。
「貴様ら、軍人なら任務を果たせ!」
その叫びではっとした兵士たちは、再び攻撃を開始した。
開始からすでに30分以上が経過し、赤組は15名 白組は18名が残っていた。
「砦の攻め手が足りない。こっちはあと4人。
砦を守ってる白組の戦士はガトリングを含めて10人近くいる。
この状態でこれ以上設置品を削るのは難しい」
部隊音声でモニークが言った。
「わかった、モニーク、指示はいいから参戦して。
アッガイ、手伝いに行って!」
レミが叫んだ。
「了解! アッガイいきまーす!」
ユウキとリーシャの戦いはずっと打ち合いが続き、なかなか決着がつかなかった。
そのとき、敵に打たれて飛ばされたハルが近くに落ちてきた。
ハルを追ってきた敵はハルに覆い被さると首元を刺してハルが消えた。
戦うことのみに反応していた脳だったが、ハルが消されたことの刺激で、ユウキは感情を取り戻した。
「ハル!」
ユウキはリーシャから離れ、ハルを刺した敵兵に突進した。
「俺の仲間になにすんだー!」
敵兵に飛び乗ると、両手のソードで顔面を刺した。
兵士は一瞬で消えたが、その隙をリーシャは見逃さなかった。
リーシャはユウキの背中にソードを2本突き刺した。
ソードで刺されたユウキは、それでも消滅せずに、無言のままゆっくりと立ち上がった。
2本のソードはユウキの体を突き抜け、前に出ている。
驚いたリーシャは、その驚きが刺激になり、感情を取り戻した。
ソードに手をかけたまま、引き抜くことが出来ずに戸惑っている。
ユウキは天を仰ぐように上をむくと雄叫びをあげた。
そしてユウキと、刺さったソードとともにリーシャも砕け散った。
それを見ていた戦士たちは、あまりの出来事に動きが止まった。
ガトリングの音だけが鳴り響いている。
「と……とまるなーー!」
再びエイデンが叫んだ。
◇
「白組ナンバー3、リーシャ、心拍、脈拍ともに異常が出ています!」
運営ブースで誰かが叫んだ。
「救護班は出ているか?」
シュリがグレゴリーに聞いた。
「現場で監視をしていますので、すぐ処置にあたるはずです」
「そうか。リーシャは離脱、ユウキだけが復活することになるのか……」
シュリは顎に手を置くと小さくため息をついた。
「グレゴリー、ユウキも似たような状態になりかねないのか?」
「いえ、今の消滅で全ての状態が初期化されますので、ゲームを開始した当初の安定した状態になると思います。
2体の……2人が放出した驚異的なエネルギーが、相乗効果によるものだとすれば、それはまた新たな発見になります」
「化学反応でもあるまいし、反応しあってより強いフォースを生み出す……か?
それが本当なら、すごい話だな」
「いずれにしても、身体にかかわるほどの影響が出てしまいました。
1人は離脱したのでもうないと思いますが、もしまたメタル人形のように体が異常に輝き出した場合、同じ兆候と判断して、ただちに赤組ナンバー8を離脱させます」
「わかった」
リーシャの侍女ベスの連絡先を知らないシュリは、すぐにバッチにメッセージを送った。
エッグブースでは、参加者の体調を監視していた救護班がリーシャのもとに駆けつけていた。
リーシャのエッグは停止され、痙攣をおこしているリーシャに応急処置がされた。
なんとか痙攣がとまったところで誰かが叫んだ。
「早く運び出せ!」
リーシャはグリーンゲートの医療棟へ運ばれた。
◇
ハルが復活し、そこにレモンが援護に来て、2人は2階を目指して走り出した。
その後ユウキもすぐに復活したが、自分が何をしていたのか記憶が曖昧だった。
体や武器の輝きはゲーム開始当初の状態に戻っている。
(俺は確か……そうだリーシャと戦って)
「ユウキ!」
背後からユウキを叩きに来た敵をラバスが盾で防いだが、敵は容赦なくラバスへ連打をはじめた。
「ユウキ、ぼっとしないで! 僕を守ってくれるんでしょ?」
(あ……)
ラバスのそのセリフでユウキは我に返った。
「ご、ごめんラバス!」
ユウキは敵の後ろに瞬間移動して、クロスさせたショートソードで切り裂き、敵はその一撃で消滅した。
「やっぱり強いね、ユウキ!
復活の援護に来たんだけど、必要なかったかな。
きっと君は最後まで消えない。
さあ、2階に行くよ!」
そう言ってジャンプを始めた。
「ありがとうラバス。
俺はラバスがどうなっていたか気にとめることもできなかった。
戦っていた時の記憶が曖昧なんだ。
おかしいよな」
そう言いながらユウキはラバスのあとに続いた。
「なにも気にすることはない。
お互いやりたいようにやろうよ!
さあ、いっくよー!」
目の前の敵にラバスがカウンターを浴びせ、ユウキが一太刀浴びせると敵は消滅した。
2階部の回復塔2機も壊され、赤組は劣勢だった。
ソード4人にレモンとハルが囲まれていた。
助けに行こうとしたユウキとラバスの前にエイデンを含む3人の敵兵が立ち塞がった。
「ユウキ、いま君たちに手出しをされると困るんだ。
あと2,3人で3階戦は僕たちの勝利だからね。
1対1で君に勝てるとは思わないけど、行く手を阻むことならできる」
そう言い終わらないうちにエイデンはユウキにソードを振り下ろした。
片方のソードでそれを打ち払うと、手をつかず横に側転をした。
残り2人はラバスを打ち据えている。
エイデンは身を低くしてロングソードをクロスさせると、振り払うようにユウキに切りつけ、よけたユウキの後方に1回転して回り込み、再び切り込んだ。
「クッ……」
ユウキは切り込まれた場所が多少痛みはしたが生命ダメージはあまりなかった。
ただエイデンの動きは予想ができずイレギュラーな攻撃が続くためにハルたちのそばに近づくことができない。
(俺なんでこんなにモタモタしてるんだ。
いや、エイデンにそうさせられているんだ!)
先に進めないいらだちが募るユウキの視界の先で、ハルとレモンが消えて行くのが見えた。
(ハル……)
『最上階戦終了です。
メタルフロアへの置き換わりまでしばらくお待ちください』
電子的な声の案内がながれ、視界が真っ暗になった。
しばらくして視界が戻ると、ブラックメタリックのフロアにキングドームが2つ配置され、その脇に戦士たちは姿を現した。
白組との間にはまた半透明のシールドがおりている。
『最上階戦、勝敗が決しました。
残人数 白組7名 赤組5名
勝者は白組となります。
所要時間57分。
砦破壊率 白組75% 赤組55%
白組キングの生命ゲージは2倍となります。
これより、椅子取りゲームが開始されます』




