3階戦(4)
白組の砦は1段目のガトリングを2段目のガトリングが守る形になっている。
赤組は盾持ちが多かったため、ほとんどのソード者は盾とペアを組むことができた。
そのペアが分散しながら1段目を攻めこんだせいで、1段目のガトリングは焦って的外れな乱射を続けることになった。
2段目の2機は冷静に、ジャンプしながら移動を続けるソード者をめがけて撃ち込んでくる。
ユウキたちも1段目のガトリングを破壊するためジャンプしながら1段目に上った。
そのとき不思議な光をまとったロングソードが赤組の砦の方へ向けてジャンプしていくのが見えた。
ユウキは思わず目で追ってしまう。
そのロングソードは強い光を放つソードの外側に赤いもやのような物が見えて、まるで燃えているようだった。
気がそれてしまっているユウキめがけて、ジャンプした敵がソードを打ち込んできた。
「ユウキ!」
先に気づいたラバスは大声で叫んでユウキのもとに走り盾で守った。
ガンッっと敵のロングソードで盾が叩かれ、その勢いを受け止めきれなかったラバスとともにユウキは登ってきた岩場から下のバリケードへ落とされた。
「いっつ……」
ユウキは逆さにバリケードの間に落ちこみ、ラバスは盾を持つ反対の腕から落ちてバリケードの先端が腕に刺さり悲鳴をあげた。
その悲鳴を聞いたユウキは自分がしでかしたことを悟った。
(俺が……よそ見をしていたせいだ)
敵はバリケードに挟まったユウキめがけてロングソードを差し込もうとしている。
それを止めるために、ラバスは盾をにぎりしめるとバリケードの先端を足で踏み込んでジャンプした。
足裏に食い込むバリケードの痛みで顔がゆがむ。
ジャンプしたラバスの盾は敵に当った。
敵は一瞬ひるんだがすぐに体制を立て直す。
自分の組の設置品ではダメージもなく痛みも感じない。
ラバスはバリケードの間でもがくユウキを守るため、盾を背負うようにして上に覆い被さった。
「どけー!」
猛り狂った敵がラバスの盾を叩きまくり、そのたびに盾が体にぶつかる衝撃と、バリケードが手足に食い込む痛みにラバスは耐えていた。
ひっくり返ったままラバスのその表情を見たユウキは全身が熱くなった。
「ワアァァァ!」
大声を出しながら、挟まれている周りのバリケードめがけ、もがきながらソードを振り回した。
ユウキのソードはバリケードを叩きながらどんどん光をまし、はっきりと見える黄色い炎がソードにまとわりついた。
「壊れろーー!」
そう叫んだとほぼ同時にその辺りのバリケードが木っ端みじんになりユウキと、ラバス、そして盾を叩いていた敵も一緒に地面におちた。
ユウキは倒れたままの状態からソードを持ったままの片手を地面に強くつき、体を宙に浮かせると1回転して、起き上がろうとしている敵にソード2本を同時に突き刺した。
「消えろーー!」
敵は一瞬で消滅した。
興奮したユウキは何かを叫びながら夢中で辺りのバリケードを壊していった。
敵ではなくバリケードしか見ていないユウキは無防備になっている。
「ユウキ!僕の後ろにつくんだ!落ち着いて!」
はっとしてラバスをみたユウキは小さな声で言った。
「ラバス……ごめん。 本当に、ごめん」
(俺は、完全に他に気をとられていた。
こんなつまらないミスでラバスを失うところだった。
ラバス……必死に俺を守ってくれた)
申し訳なくて情けなくて、ユウキは自分に腹が立った。
「行くよユウキ!」
傷だらけのラバスはそれでも冷静だった。
すぐにジャンプをしながら1階層に登りはじめていた。
「うん。
ラバス……傷だらけじゃないか」
「まだ大丈夫! 今度はユウキが守ってね」
(敵にやられることよりラバスが消えてしまうことのほうが怖い。
なくしたくない。
今の俺なら守れる気がする……大事なものたち)
「わかった!」
盾持ちはガトリングの被弾でカウンターゲージが溜まると、カウンター攻撃を数回当てることでバリケードを破壊していった。
ユウキのように一太刀で破壊はできず時間がかかっている。
それでも1階層のバリケードは順調に壊されていった。
だがすでに離脱者は出始めている。
◇
「さあ、開始から10分ほどしかたっていませんが、白組の陣地では早くも見せ場がありましたね。
バリケードを簡単にたたき壊した赤組ナンバー8のソードから黄色い炎が見えるのはジェームズだけでしょうか?!
おおっと、白組ナンバー3のソードからは赤い炎が出ているように見えます!
あの2人のバトルが見たいものです!
白組のバリケードは3割近くまで削れていっていますが、赤組のバリケードは手つかずのようです。
白組はバリケードは無視しているようですね。
3段部分のガトリングを一斉攻撃しています!」
◇
「ユウキ、最上部のガトリングを潰しに行って!」
モニークから部隊音声で指示がとんだ。
モニークのように敵のホバーも白組砦の周りを飛んでいるが、その者も指揮者なのか、ホバー同士はお互い遠巻きにしながら戦うことはしていない。
「了解! ラバス行こう!」
2人で最上部へ向かうとガトリングのそばに2人の戦士が待ち構えていた。
キングドーム右側のガトリングはドームのせいで左側が射程外になっている。
その射程外にユウキとラバスは立った。
「おやおや早くも及び腰ですか。
射程外に行けば助かると思っているのかね」
そう言いながらドームに沿うように2人の戦士がこちらに歩いてくる。
ラバスはカウンターゲージが溜まっていたため、近づいた1人の戦士めがけて盾でカウンター攻撃をした。
吹っ飛んだ戦士は近くの岩肌にぶつかり2段目に落下した。
「おっと、フェイントですか。
君、ナイスだ。 やっぱり盾は強いね。
でもそのカウンター攻撃、フォース持ちは一発では消せないよ。
フォースの影響で防御力があがっているから。
今落ちていった兵士はレベルCだけど消えていない。
自力で回復をしてから戻ってくる。
勝機は強いフォース持ちにあり。
僕はマリモ。ゼロから移住した口で、フォースレベルはB。
君、ユウキでしょ? すごいねそのソード。
恐ろしいよ、君だけは」
そう言い終わる前にマリモはジャンプしてロングソードをユウキに向けて振り下ろした。
すかさずラバスがユウキの前に出て盾で受け止めたが、その打撃の重さに下の階にたたき落とされた。
「ラバス!」
「フッ、惜しかったね。弱いくせに、身代わりのつもりか」
煽られているとわかっていても、ユウキは逆上した。
ユウキのソードの黄色い炎が大きくなる。
「お前なんかに、お前なんかに……」
ユウキはジャンプし、キングドームの側面を足で蹴って速度を上げた。
「やられてたまるか!」
ソードを2本重ねるようにしてマリモに一直線に突っ込み、ソードはマリモの頭に刺さった。
一瞬のことでマリモは何もできずに消滅した。
そこに先ほど下に落ちた戦士が上ってきて、ユウキのふくらはぎを刺した。
「グワァァ」
痛みで足をかかえて転がるユウキに、着地した戦士はとどめを刺そうと胸の辺りをソードで突いた。
だがユウキはもがき苦しむだけで消えなかった。
「ばかな……これでも消えないのか」
そこへ下の階から戻ったラバスが、ユウキから敵を離すため、ショートソードを握ると攻撃を始めた。
「おっと、危ない危ない。
兵士としてはそんなつまらない攻撃でやられる訳にはいかない。
君、消えたいらしいね」
憎々しく悪体をつく敵にラバスは冷静に攻撃を続け、敵はユウキから離れるしかなかった。
だがここで、さっき消滅したマリモが復活し、目の前にいたラバスの盾を猛攻し始めた。
ラバスは攻撃ができずに盾を構えて身を低くしている。
ユウキは体制を整えて、自分を刺した敵の後ろに瞬時に移動した。
自分でも驚くほど移動速度があがっている。
敵の背中を、クロスさせたショートソードを左右に引くように切りつけ、敵は一瞬で消えた。
それを見たマリモは舌打ちをし、盾を連打していた手をとめ、盾を蹴り上げた。
その拍子にラバスは盾とともに後ろに転がった。
間髪置かずラバスの肩をマリモのソードが貫いた。
「いたいぃー!」
ラバスが悲鳴を上げ、マリモがニヤリと笑った。
ラバスの悲鳴を聞いた時点でユウキは泣いていた。
(俺が、俺が……守るんだ!)
マリモに向かってユウキがジャンプすると、マリモもすかさずジャンプした。
空中で2人のソードが勢いよくぶつかる。
「消えろーー!」
ユウキのソードの黄色い炎が強く発光すると、直接マリモには触れていないのに、ソードとともにマリモが砕け散った。
そこに再びもう1人の敵兵が復活し、姿が現れた途端ユウキは軽く片方のソードで叩きつけ、その者も砕け散った。
あっという間に2名を離脱させた。
「ユウキ、ナイス!」
肩を押さえ痛みをこらえながら笑顔でそう言ってくれたラバスを見たユウキは、また涙腺が緩んだ。
「ラバスがいたから!」
涙をこらえながらユウキは笑顔で叫んだ。
2段目にいた回復役が最上部のユウキたちのもとへ上がってきて回復玉を振りまいた。
「回復ありがとう!」
ラバスが叫んだ。
ユウキとラバスはドームの後ろからガトリングの背後に近づき、ガトリング本隊を叩いてあっという間に潰した。
復活を待って再度ガトリングを破壊。操縦者は離脱となった。
「最上部ガトリング潰れました!」
部隊音声でラバスが叫んだ。
「すごいね君たち、簡単に潰しちゃった。
これで2段目の戦いが楽になる。ありがとう。
じゃあ今もっとも激戦な2段目に……って言いたいところだけど、防衛の方に難ありだな。
砦でとんでもない戦士が暴れているみたいだから、そっちへ加勢に行って」
モニークから指示が出た。
「はい!」
(もしかしたらあの燃えているようなソードを持った人かな……まさかリーシャ)
回復玉で生命力は回復したが、傷の痛みがひかない。
「ラバス行ける?」
「うん、痛いけど行くしかないでしょ!」
「確かに痛いな……」
2人で笑いながら下に飛び降りた。




