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3階戦(2)


 食事を受け取るカウンターでアッガイは食べ物や飲み物を適当にトレーに乗せた。

 頭を少し傾けて、ついてきてとユウキに合図を出すと、戦士たちの広場の奥にある階段からテラスに出た。


「うわあ、こんな場所があったんだ」

 いくつかの木製のテーブルが距離を置いて配置され、木漏れ日がテーブルにちょうど良い陰を作っている。

 アッガイは一番すみのテーブルを選んで座った。


「ここなら誰かが近寄ることもないね」

 そう言いながら腰をおろした。


「え? 何か聞かれちゃまずいこと?」


「さあ、どうかな。

 天気もいいし、風が心地良い」

 アッガイは茶色いマッシュルームヘアをかき上げた。


「うん……気持ちがいいね」

(はっきりと否定しない……内緒の話なんだろうか)


 アッガイはユウキの前にサンドイッチや果物を置いて自分はコーヒーを飲んだ。


「さっき、軍の誘いを受けたんでしょ?」

 アッガイの問いに、ユウキはコクリとうなずいた。


「でも俺は軍に入る気はないよ」


「そうか良かった。

 ユウキ、ゼロに帰ったほうがいい。

 僕は余計なことをするのが元来好きじゃないけど、こうして話す機会があったから言っておきたくなった。

 帰ることを薦めるのには理由があるんだ」


「理由?」


「うん」

 アッガイは紙のカップをテーブルに置くと背もたれによりかかり腕組みをした。


「理由1つめ、21の世界が終わってるから。

 理由2つめ、他の世界へ連れて行かれないために」


「と……唐突に衝撃的なことを言い出すな」

(アッガイはアークエンジェルだから、すごい話が出てきそうだ……)

 ユウキはかろうじて言葉を返したが、動揺して目が泳いでいる。



「21は全てがあるように見えるけど、実は多くのものが失われてしまい、これからも消えていく世界。

 資源も土地もそして未来もない。

 みんなそのことは承知しているけど、切羽詰まる前に誰かがなんとかしてくれると高をくくっている。

 この世界は人々に不自由をさせない社会を優秀に作り上げてきた実績があるから、みんなその力と誠実さを信じて疑わない。

 21で人が住める面積はゼロの3分の1しかないんだ。

 しかもどんどん陸地は海へ沈んでいっている。

 国も5つだけで国家元首もいない。

 国を統べる者はいないが、特区の議会で決められたことを各国が遂行してなんとかうまくいっている」


「あ……もしかしてそれで15への移住が始まったとか?」


 アッガイは目を見開いてユウキをみた

「驚いたな、ユウキは15のことも移住している人たちがいることも知っているんだね。

 当たり、そういうこと。

 過去型で君主制の15に、なぜ21から人が移り住むのか。

 あちらに21の町……いや、国を作るために公が主導をとって送っていたのさ。

 じゃあなぜ15への移住が必要か、それは21の終焉がみえているから。


 移住に公が加担していることを末端の人々は知らない。

 金持ちが道楽で15へ移住しているくらいにしか思っていないだろう。

 15はゼロよりもはるかに立ち後れているから、移住させることが可能だった。

 未来型世界のあらゆるものを15の貴族は珍重して、ほしがり、そのおかげでなんなく移住の許可がおりた。

 自分たちの世界に21が国を造ろうとしているなんて知るよしもない。

 国を造る計画のために必要な公人やその関係者が先んじて送られた。

 15から戻れなくなるという問題が起こらなければ、今も次々と人を送り込んでいただろうし、遠くない将来、21の全てが15へ引っ越しを終えることができたはず。

 今は時空のゆがみとやらが始まり、他世界への航行もままならなくなった。

 もう21の未来は真っ暗だ。

 仮にこのまま、21が時空の狭間においやられたら、この世界とともに人も滅びる」


 笑いながら話すアッガイを見つめたまま、ユウキは返す言葉が見つからなかった。

 勢いよく飲み物をあおると、紙のカップをゆっくりと握りつぶした。


「でも……。

 それならどうして、こんなゲームを開催したの?

 どうして訳ありのゼロ民をここへ連れてきたんだ?

 今の話が本当ならこんなゲームに興じている場合じゃないはず」


「それは、シイカ嬢と国が望んだから……かな。

 ここからはシイカ嬢の部下であるバシュの受け売りの話になるけど。

 21民でフォース持ちになれるのはゼロ民の半分もいない。

 フォースにはレベルがあるんだけど、21民はほとんどがレベルCでBはわずか。

 ゼロ民はほとんどがレベルBでAも何名かいる。

 シイカ嬢は訳ありのゼロ民を救いたい気持ちもあったが、同時に研究もしたかったんだ。

 21民が15へ行くことになれば、フォース持ちは対ワイトの要員として大量に必要になる。

 だから21民のフォースレベルを上げるヒントがほしかったはずだ。

 ゼロ民に関しては帰りたい者はすべてゼロへ帰してしまうからね。

 シイカ嬢は21民が生き残るためのあらゆる可能性を探っていたんだ。

 その考えは国の考えでもあったからマクベスは全面的に協力をした。

 でも時空がゆがみだした今、そんな回りくどい方法をとっている場合じゃない。

 椅子取りゲームもこれが最後になる。


 それと……他の世界へ連れて行かれないためにって言うのはね。

 前回の椅子取りゲームでここに残った者が10名ほどいたらしいんだが、うち数名は誘いにのって軍に入隊した。

 そして自ら志願して15行きのシップに乗ってしまった者がいたそうだ。

 何名がいったのか、どうして志願したのか、その辺りのいきさつは知らないけど。

 ゲームを楽しめたのなら元気にゼロに帰るべきだった。

 訳ありで21に来て、本物の命をかける15へ自ら赴いてしまったって……。

 人の気持ちってわからないね」


 アッガイは遠い目をしてコーヒーをすすった。


「その……なぜ軍に入ってしまったのかは、なんとなくわかる。

 軍に声をかけられたら、期待されているような気がして、それに応えたくなったんじゃないかな。

 そのゼロの人たちは15のことなんか知らないから、21で頑張ろうと思って軍に入ったんだと思う。

 俺だって15のこと知らなかったら軍の誘いに乗っていたかも知れない。

 ここは戦争もないって話だし……。

 志願してしまったのは……周りに流された気がする」


「まあいずれにしてもユウキはゼロに帰るんだよ」


「うん……。 すごい話を聞いちゃった。

 本当はここに残ろうかなって心が傾いていたから、話を聞けて良かった。

 ありがとうアッガイ」


「それは良かった。

 あ、そうそう。

 バシュから聞いたんだけど、ゼロから来た君の友達はグリーンゲートと契約をしているんだってね」


「ああ、サトルのことかな。

 チャムも知ってるよサトルのこと。

 2人ともグリーンゲートだから」


「そのチャムと連絡がとれないんだ」


「え? だって1階戦のときは……」


「それが終わってから連絡が取れなくなったらしい」


「そうなんだ、ただ連絡がとれないだけじゃ……」

 そこまで言いかけたユウキはハッとした。

 連絡が取れなくなったミナトのことを、サトルと話していたことが思い出された。


「そのサトルって子に頼んで、それとなくチャムと連絡が取れないか聞いてみてもらえないか?

 フレンド以外にも企業の連絡ツールがあるはずだから」


「うん、わかった」


 アッガイの手首の端末に通知音がなりメッセージを見たアッガイが席を立った。


「おっと、時間か。

 砦の打ち合わせに行ってくる。

 フレンド申請飛ばすから許可して」


 電子音がなりユウキの端末に申請のメッセージが来た。

 許可をしてアッガイとフレンド登録が完了した。


「僕の本名がばれちゃう!

 なんてね。じゃあユウキたん、上級戦で!」


「うん!」

 ユウキはアッガイから言われた話の内容を整理しようとしたが、動揺してしまい考えがまとまらない。


(21の世界は15へ移住を開始しなければならないほど危機的な状況だったのか。

 今はまた時空のゆがみの問題が起きている……って、なんだよ時空のゆがみって。

 あーあ、ゼロに帰るしかないってことか。

 ゲーム前なのに盛り下がったこの気分をどうやって上げればいい!

 あ、そうだチャム)


 チャムのことを聞くためにサトルにメッセージを送ったが反応はなかった。

(ゲームで会えるからそのとき確認するか。

 チャム……何もなければいいけど)


 21時半を過ぎた頃にユウキは赤組サロンへ入ったが、まだ人が集まっていなかった。


(砦組み上げが終わってないのかな。

 そういえば、リーシャはこの勝負に出てくるんだろうか。

 もしタイマンすることになって……女の子に負けたら嫌だな)


 ドンッとテーブルに手をついてハルが座った。


「ら……乱暴だなハル」

「ユウキ、サトルがいない!」

「え?」

 ユウキはガタンと勢いよく椅子から立ち上がった。


(さっきも返信がなかった。まさかサトルまで……)

 すぐにまたサトルにメッセージを送った。

『サトル! どこだ!』


 電子音がしてサトルから返信がきた。


「なんだよハル脅かすなよ。

 ちゃんと返事が来たじゃないか……」

 そう言いながらメッセージの内容を確認した。


『ちょっと会場入り遅れるが、ちゃんと参加するから心配するな!

 楽しみだなユウキ!』


 はあ、とため息をついてユウキは座り直した。

「なんでユウキには返信するかな!」

「遅れるみたいだから忙しかったんじゃないか?

 気にするな」


(アッガイの話のあとだったから、かなり焦った。

 もう!不安になるじゃないか!)


 ハルの横にレモンが座り、ラバスやユバルたちも同じテームルの席についた。

 しばらくすると、続々と人が入ってきた。


 22時になるとハクヒが壇上に上がりシイカの挨拶が始まることを告げた。

 サロンのモニターにシイカが映し出された。


「みなさま、ゲームへの参加ありがとうございます。

 いよいよ最後の戦いがはじまります。

 あなた方の心を元気にしているのは、ゲームではなくプレイヤーたちだということに気づいていますか?

 感情をぶつけ合い助け合う行為の中で心は育っていきます。

 そのツールとしてゲームが役に立つのは本当に喜ばしいことです。

 存分に楽しんでください、そして戦いが終われば友として語らい合ってください。

 最後の戦いを私も楽しませてもらいます」


 大きな拍手と歓声が湧き上がった

 モニターが切られハクヒが壇上から去ると、入れ替わりにレミが壇上に上がった。


「えー、諸君。赤組の部隊長を務めるレミだ。

 椅子に座るキングは別人だから混同しないように。

 副部隊長はそこにいる茶色くて丸い髪型のアッガイが務める。

 選抜上級者で砦の組み上げは終わり、回復塔やガトリングの設置、バリケードも敷いてある。


 今わかってる戦闘情報及び組み上げた砦の説明をする。

 自然被災、2次被災は対象外になっているから、相手の設置品と敵の攻撃だけがダメージになる。

 オーバーレイは渓谷ってなってるが簡単に言うと大きな岩場の3段ケーキみたいなものだ。

 てっぺんにはキングドームがあり、そこが開いてキングが登場する。


 まずは防衛しつつより多くの敵の設置品を破壊すること。

 設置品の破壊が白組より多ければ、キングの生命ゲージが2倍になる。


 味方のガトリングは貫通してダメージは入らないから気にせず戦って大丈夫。

 ホバーボードは私とモニーク。

 設置型のガトリングが4機、中級から上がってきた者4名に勝手に割り当てをさせてもらう。

 ガトリングは2階部分の真ん中に2機、キングドームの横に下を狙うように2機設置してある。


 ガトリング者が離脱になればガトリングも撤去されるから、振れるステータスは全部生命力に振っておいてね。

 メッセージを受け取った者はゲーム情報の設置型ガトリングの説明に目を通しておくように。

 回復塔は2階部分のバリケードの中に2塔、ガトリングの後ろに2塔建てた。

 回復塔はあるけど回復役を4名作る。

 2名はガトリング近くで待機、回復塔を使いにくる者とガトリング者の両方を面倒みてね。

 残り2名は高台からや、ジャンプしながら回復玉をまき散らす。


 ホバーの高さは10Mでキングドームのある最上階は12Mだ。

 両陣営の砦は半透明の仕切りがされていて、ゲーム入場から5分後にそれが消えて開戦となる。

 だからその5分で急いで中を見てまわること!


 キングの装備はレッドフォースソードのみ。

 ロングかショートかはわからないが、威力は我々の武器の2倍。

 そしてレッドフォース防具は我々の3倍の防御力だ。

 キングが登場したらとにかくキングを守る。

 キングが消滅すれば椅子は自動的に消え去り、そこで終わりだ。


 武器の選択はみんな上級者だから好きにすればいい。

 公開音声での煽りもひどいはずだ。

 ひるまずに思い切り煽りにのってやればいい。

 存分に楽しもう、最後の戦いを!」


「おおーー!」

 赤組メンバーは、大きな歓声とともに拳を突き上げた。


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