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2階戦終了


 安全地帯を出てすぐにユウキとハルはホバー上限の位置まで飛んだ。

 部隊は右羽の前方の付け根へ向かう。

 白組は右前足を叩き始めていた。


「白組、右前足を叩いています。

 竜の生命が削れていっているのでそこも弱点なんでしょう」

 ラバスが言った。


 増幅のエネルギーが届く範囲がどれくらいなのかわからず、だが白組にその影響をできるだけ与えたくないと思ったユウキは、右羽の上部の位置についた。


 ブレードを祈るように額に当て、歯を食いしばり全身に力をいれると、空中を切るようにレッドフォースショートソードを竜の方向に振り下ろした。


「とどけ、俺の力!」


 ユウキの体全体が金色に輝き眩しい光と共に、赤い光の線が竜の体を通して部隊員たちの体に放たれた。

 体が一瞬輝いてフォース武器に強い光を纏う(まとう)者が出始めた。


「おお!俺のソードめっちゃ光ってる! すごいよユウキ!」

 バルタンが叫んだ。


「私も今度は光ったわ! ありがとうユウキ、あなたのやることは全て許す!」

 レモンも悲鳴に近い声で叫んだ。


「お……俺のは光らない! クゥ……」

 なかにはフォースが出ないままの者もいる。


「このチャンスをものにするんだ!」

 モニークのそのかけごえで赤組は羽の付け根を一斉攻撃した。


 同様に白組にもソードが光り出している者が見られ動揺しているのが見て取れた。

 一挙に竜の生命ゲージが減り、羽の付け根の弱点破壊が終わった。


『赤組、弱点部破壊成功 5000ポイント支給。

 全員の生命力が回復されます』


 この時点で竜の生命ゲージは2割ほどになっていた。


「白組の破壊もすぐに終わるだろう。

 よし尻尾の付け根の弱点を攻める!

 今支給されたポイントはできれば全部生命に振った方が……」

 モニークがそう言いかけたとき今度は胴の真下あたりの地面が赤く光った。


「またかよ、今度はなんだ!」

 誰かが叫んだ。


 竜は口から長い火炎を吹きながら首を左右上下に動かしはじめた。

 とても逃げ切れる攻撃ではなくみんな一斉に安全地帯へ向かった。

 弱点部破壊成功で生命力が全回復していたのと、ユウキの増幅のエネルギーのおかげで1度くらいの火炎ダメージは難なく絶えることができた。

 だが洞窟内は火炎で満たされたような状態になり、連続してダメージを受けた数名が離脱した。


「離脱者 36名

 残人数 13名、あと3名で終わりです!

 回復役はまだ2名残っています。

 白組残人数は15名!」


「さっきの5000ポイントは全て生命に振って!

 この攻撃が落ち着いたら出るよ!」

 モニークが叫んだ。


 それぞれがステータスの振り直しを行っていると、安全地帯の出入り口から外の様子をうかがっていたラバスが言った。

「竜が……口を開けているけど黒い煙しかでていません。

 時々炎がみえるけど、柱のような火炎はもう出ていません!」


「みんな行くよ!」

 そう言って真っ先に飛び出したモニークに部隊は続いた。

 竜の反応がだいぶ鈍くなっている。


「幕引きは我々だといいね。

 みんな一緒に戦ってくれてありがとう!」


 尻尾の根元を叩きながらそう言ったモニークの言葉に部隊員は感動していた。


『白組、弱点部破壊成功 5000ポイント支給。

 同一部位破壊によりサービスポイント3000支給。

 ダメージ量の加算5%となります。

 全員の生命力が回復されます』

 白組が左前足の弱点部破壊に成功し、アナウンスが流れた。


「何それ! そんな隠れ支給があるの?

 ポイントはいいけどダメージ量の加算はないわ!」

 レモンが怒っている。


 竜の生命ゲージが3%を切ったとき最後のあがきが始まった。

 全身を使って暴れ出し、ここに来てまた数名が離脱となった。


「離脱者 38名

 残人数 11名、あと1名で終わりです!

 白組残人数も11名!」


 白組も赤組が叩いている尻尾の付け根に加勢に来て、敵味方なく竜の弱点叩きがはじまった。

 あっという間に生命ゲージがゼロになり、竜が細かいブロックのような破片になって消えていった。

 全員の動きはとまり視界が遮断され真っ暗になった。

 そしてすぐに再び視界が戻る。


『メインベース2階層、通常フロアへマッピングされます。

 青空の広間展開』

 機械的な声で案内が流れる。

 2階層のフィールドに展開していたゲーム環境がはずされ、青空の広間と名付けられたフロアに置き換えられた。

 先ほどまでの戦闘領域は広間として認識される。

 使用するフィールドは狭められ視覚効果が拡大された。

 赤組、白組の生き残った全員がその広間に姿を現した。

 目に差し込む日の光と抜けるような青空が広がっている。


「勝敗ってどうなったんだ……。

 両組とも弱点部の破壊は2カ所だけどあっちはダメージ量の加算があったよね」

 誰かがそう言った。


 1階戦の時のように、空に五角形を逆さにしたような赤と白のバナーが映し出された。

 そして赤のバナーには48、白のバナーには52の数字が浮かんだ。


「みなさまお疲れさまでした。

 グリーンゲート社のゲーム進行統括管理者です。

 中級組2階層の勝敗が決しました。

 ダメージ量 白組52 赤組48

 勝者は白組となります。

 所要時間50分。

 最終残人数 白組11名 赤組11名

 白組のみなさまおめでとうございます。

 勝者賞金300万ブールは途中で離脱された方も含め全ての白組の戦士に贈呈されます。

 それではまた明日の上級組3階層のフィールドでお会いしましょう」


 1階戦同様にあっさりと勝利宣言がなされたのち、再び機械的な声の案内が流れた。


『あと20秒ほどで青空の広間からエッグへの帰還となります』


 エッグへ帰還すると通常のモニターに戻り、テーブル管理者が映し出された。


「お疲れ様でした。

 離脱となりましたメンバーの方はデータ集積のためにチップをはずす作業に入っています。

 残られたみなさまは端末を受け取りましたらすみやかにエッグブースから退場してください。

 それではエッグを閉じます」


 固定された手が解放され目の前のシールドが上にあがる。

 同じテーブルにはレモンしかいなかった。

 立ち上がったレモンはユウキに近づき手を出して握手を求めた。


「ユウキ、あなたすごいわね。

 このゲームが終わったらゼロには帰らずにここに残るべきよ。

 軍に入るもよし、企業に雇われるもよし。

 あなたの居場所を用意してくれる人はきっとたくさんいるはず。

 あ、余計なおしゃべりをしちゃった。

 また明日。上級戦で」


 レモンはそう言うとユウキの肩に軽く手を置いてから去っていった。


「誘いに乗っちゃだめだよ!」

 驚いて振り向くと腕組みをしたハルが立っている。


「あ……ハハ。

 それにしても良かった。2人で残れて。

 サトルから上がってこいって言われてたし。

 これでドヤれるね」

 ユウキがそういうとハルは大きくウンウンとうなずいた。


「ユウキ!」

 声をかけてきたモニークとバルタンを見てハルの目が輝いた。

「モニーク! お疲れさま!」

 ハルはユウキと話すときよりも高い声でかわいらしくそう言った。


(あざといな、ハル。 しかもバルタンは目に入ってない……)


「お互い残れてよかったね。

 それにしても君の活躍はすごかった。

 このゲームが終わったらゼロに帰ってしまうのか?

 是非ここに残って……」

 モニークがそう言いかけた途端ハルが間に割って入った。


「ストーップ!」

「え? どうしたのハル」

 モニークが戸惑っている。


「今日は疲れたので解散です!」

 そう言ってハルはユウキの背中を押して出口に向かった。


「また明日、ユウキ、ハル!」

 バルタンがそう言った。


「あ……はい、すみません! また明日!」

 ユウキがモニークとバルタンの方へ顔を向けると2人は手をあげてほほえんでいた。

 それに答えてユウキも手を上げた。


「お……おいハルよ。もう大丈夫だから」

 通路にでたところでようやくハルの手が離れた。


「ユウキとサトルと……一緒に帰るんだから」

 見るとハルは少し涙ぐんでいるようだった。

「大丈夫……帰るよ、一緒に」

 そう言ってユウキはハルの頭をポンポンと叩いた。

 だが思わず帰るよと言ってしまったことを後悔して小さくため息をついた。


 エッグブースを出たところで白組の兵士たちの集団があった。

 その中にいたエイデンがユウキを見つけると手をあげて近づいてきた。

「ユウキ、ちょっといい?」

「はい、なんでしょうか」


「火炎竜討伐で妙なエネルギーを受けたと部隊員が騒いでいてね。

 赤組も同じようなことがあったか?」


「あ……ありましたが」


「そうか、チートではないかと上に確認をする予定なんだ」

「そ……そうですか」

 困っているユウキを見かねたハルが、今度はエイデンとの間に割って入った。


「ストーップ! 敵同士なんですから、決着がついてから話しかけてください!」

「あ……そうか悪かった」

 ハルは謝るエイデンの前を、またもやユウキの背中を押して歩き出した。

「エイデン、ごめんなさい!」

 ユウキは手を上げながら謝った。

「いや、終わってからゆっくり話そう!」

 横移動するエレベータの乗り場までくるとハルは手を離した。


「ハルありがとな」

「疲れたから早く部屋に戻りたかっただけだもん」

 お礼を言われてハルは少し照れている。


「でも本当に助かったよ。

 説明も言い訳もできない状態だったから。

 俺も疲れた……早く部屋に帰ろう」

「うん!」


 部屋に戻ると配達ボックスに、鮮やかな青に白の縁取りと金の装飾品がついた軍服が届いていた。

「うわあ……興奮する」

 軍服の上着を羽織って鏡の前に立ったユウキの脳裏にレモンが言った言葉がよぎった。


(あなたの居場所を用意してくれる人はきっとたくさんいるはず……か)

 そしてまた鏡の中の自分の姿を見た。


(俺、この世界でこんな感じに生きていきたいのかも……)

 軍人になりたいわけではないが、必要としてくれる人たちが居場所を作ってくれるなら、そんな集団の中の一員として生きていきたい。

 自分はそれを望んでいるんじゃないかと感じた。

 何かを、誰かを望めば自分が傷つく、人にも自分にも期待せず息を殺して生きて行く道を選んだのは、自分自身だったことに気づいた。


(誰かが強制したわけじゃない。

 俺をふうじこめていたのは、俺自身だった……。

 本当はずっと前から気づいていたのに、気づかないふりをしていた。

 この人生しかないのに、つまらない感情に縛られるのは、もうやめよう)


 ユウキは強く拳を握りしめた。


 通知音がなりサトルからのメッセージが届いた。

『お疲れ。やっと俺に追いついたか。

 一緒に戦えるのが楽しみだ。

 ゆっくり休め!おやすみ!』


(サトルとハルと、3人で一緒に戦えるのは本当に楽しみだし最高にうれしい。

 そういえば上級組の部隊長からのメッセージがまだ来ない。

 明日は何時集合になるんだろう。

 まあいいや、とにかく疲れた)


 ユウキはとりあえず軍服の上着は脱いだが、またシャワーを浴びずに眠ってしまった。





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