2階戦(2)
本日は1話のみ、13時の予約投稿です。
◇
運営ブースでシュリとともにゲームの進行を見守っていたダルガスが誰かからのメッセージを受けて慌てて部屋を出て行った。
そのダルガスを追うようにそこにいた職員の1人も出て行った。
入れ違いにグリーンゲートのシステム統括部長であるドルトルが入室した。
シュリはチラッと目を向けてすぐにモニターに目を戻した。
「どういう風の吹き回しだドルトル。
ゲームの運営ブースに顔をだしている暇があるのかい?」
シュリはドルトルに視線を向けずに言った。
「少々シュリ様にお話したいことがございまして。
お時間をいただければ場所を移して……」
会話が周囲の者に聞こえないように小声で話すドルトルの様子に、何かを察したシュリも小声で返した。
「いいよ、だが中級戦が終わってからだ」
「では終わりましたら研究ブースにある私の部屋までお越しください。
それと、私宛に通信を使った連絡はなさらないでください」
「了解した」
シュリはドルトルがそんなことを言うためにわざわざ自ら足を運んだのには相応の訳があると思った。
ドルトルが退室してしばらくするとダルガスが戻ってきた。
「いやあ、研究ブースの私の部屋のオートロックが壊されたようだと警備から連絡がありまして。
あ、一言も申し上げずに部屋を出て申し訳ありませんシュリ様。
なにぶん焦ってしまって」
「いや、構わんよ。結局どうなったのだ」
「部屋の近くまで来たとき、連絡する相手を間違えたと警備からメッセージが来まして。
こんなことがあるのかな? まったく迷惑な話だ」
そこへダルガスのあとを追うように出て行った職員も戻ってきて何事もなかったようにモニターを見つめた。
「間違えで良かったじゃないか」
シュリは含んだような笑みを浮かべた。
◇
「前足下の地面が光った!逃げろ!」
ラバスが叫び、ほとんどのメンバーはホバーで急上昇した。
今回の攻撃は前回の範囲攻撃とは違うかも知れないが、ハルからホバー上限いっぱいにいれば範囲外だったという話を聞いていたため、みな迷いなく上昇した。
だが竜は羽を広げ、羽ばたくような体制になった。
「まずい!みんな安地へ!」
モニークが叫び、一斉にホバーが安地に向かった。
竜は2、3回羽ばたくと20メートルほど上昇した位置で口から火炎をはいた。
先の範囲攻撃より火力が強く、生命力を2万ポイント振っていても消滅した者がいた。
だが10回ほど火炎を吐いただけで竜の攻撃はやんだ。
「現在までの離脱者 21名!
残人数 28名、あと18名で終わりです!
白組の残人数は32名!」
メルカはそう報告をし、回復役は回復玉をまき散らしている。
「了解。この攻撃は速度が遅いから次は前兆後にすぐ移動すれば安地に逃げられそうだ。
すぐにツノに戻って!」
モニークが叫び、一斉に安全地帯をでた。
「氷魔法付与、通常攻撃のヒットポイントが3割ほどあがります。
急所でクリが入れば6割、ロングソード持ちなら7割!
少しの魔力振りで使用できるので使うべきかと!」
ラバスが言った。
「ありがとう、ラバス!
さあ、そういうことだ。
持久力が少ないと魔法付与攻撃は回数が減るからバランス考えてね。
ステを振り直す人は安全な場所で!」
そのとき全体音声でアナウンスが流れた。
『白組、弱点部破壊成功 5000ポイント支給。
全員の生命力が回復されます』
弱点破壊が終わった白組の攻撃が止まったために、竜は一気に赤組の振り払いにかかった。
頭を振りジャンプしながら向きを変えるため、なかなか攻撃が当たらない。
壊れていない方の前足でホバーをはらうようにたたき落とし数名が消えた。
「離脱者 24名!
残人数 25名、あと15名で終わりです!
白組残人数は27名!」
「いい加減こっちも壊れろ!」
レモンが叫んだ。
赤組はあっという間にツノの破壊に成功し、竜の生命ゲージは5割に近づいた。
『赤組、弱点部破壊成功 5000ポイント支給。
全員の生命力が回復されます』
全体音声でアナウンスが流れたその途端、竜が尻尾を大きく地面にたたきつけ、その場所が赤く光った。
「お、おい今度は何だ! 逃げろ!」
部隊員の誰かが叫んだ。
竜は尻尾を上下左右に振りながら足踏みをするように洞窟内でゆっくり回り始めた。
尻尾で叩かれて崩れた岩盤は大きな岩の破片となって周囲に飛び散った。
尻尾から逃げることができても飛んでくる岩を避けきれなかった者たちが次々に消滅していく。
ホバー上限の高さまで逃げていても岩が飛んでくるため退避できる隙間がない。
「クソッここに来て岩でやられるとか!」
部隊の誰かが怒鳴った。
「いったん安地へ!」
この攻撃が収まるまでなすすべがないと思ったモニークが指示を出した。
「離脱者 32名
残人数 17名、あと7名で終わりです!
回復役も2名しか残っていません。
白組残人数は20名」
「これじゃあ攻撃ができない。
竜の生命も5割以上残っている。
モニーク何か策はないか?」
バルタンが言った。
「さあ、お手上げだな。まあ攻撃はじきにやむから小休止だ。
この間にさっき獲得した5000ポイントを振り分けてね。
回復役は2人になってしまったけど、がんばって」
残った回復役は安全地帯に入ってからも回復玉をまき続けている。
「大丈夫、がんばるね!」
元気にそう言ったハルの言葉を消し去るかのようにレモンが切れ気味にしゃべり出した。
「ちょっと拉致があかない!
もっと効率的な方法はないの?
ユウキ、海賊ゲームのときにみんなの力を増幅したでしょ?
あれやってよ!」
レモンがヒステリックに叫ぶ。
(あれやってって……。
確かにフォース武器を使っている今なら海賊ゲームのときみたいにモブを媒体にして周りにいるフォース持ちの力が増幅できるかもしれない。
でも敵にもそれが有効になってしまわないか?
結果が見えないのにどうすれば。
でも方法はなんだっていい、少しでも戦闘に有利になる状態が作れるのならやってみる価値はある)
「何のことだレモン。ユウキにはまだ隠し球みたいなものがあるのか?」
モニークが笑いながら言った。
「前に一緒にゲームをしたとき、ユウキの体がものすごく光って、周りのフォース持ちの力を増幅させたの。
そのときいきなりフォースが使えるようになった人もいた。
私は使えるようにならなかったけどね!
攻撃力が増すだけじゃなくてフォースの影響を受けている防具の防御力やステータスも上がる。
ここでそれが使えるかはわからないけど、ユウキやりなさい!
今度こそ私をフォース持ちにしてよ!」
(いやいや、フォース持ちにしてよって言われても……)
「すごいな……。
ユウキ、それやってみようか」
「敵にも有効になってしまうかもしれませんが、やってみます」
「うん、ありがとうユウキ。
みんなはユウキの力が発動したら右羽の前方の付け根、その弱点を一斉攻撃。
こちらが人数で競り負けて階層閉鎖になっても弱点破壊を成功したことで得られるポイントは上級戦へ引き継がれるからね。
戦闘領域じゃないと戦闘能力はアクティブにならない。
ここから出たらすぐにユウキはホバー上限まで上昇してそこで君の隠し球を試してみて。
ハル、君はユウキと一緒にいて回復をお願い」
「はい!モニーク!」
ハルはモニークの言うことに、いちいち反応する。
竜の足踏みと岩が崩れる音がやんだ。
「竜がおちついたようだ。
それじゃあ諸君、存分に楽しもう!」
「おおー!」
メンバーは武器を高く上げて叫んだ。




