1階戦(3)
本日は1話のみ、13時の予約投稿です。
次回の投稿は16日(月)です。
オアシスでは両組の戦士たちが互いを遠巻きにしながら回復や修理のゲージが溜まるのをまっていた。
「先に回復が終わった人はPT単位で出発してください。
部隊は離れてしまいますが火山岩場で落ち合いましょう!」
チャムが指示を出した。
バシュと一緒に先行したのは、
PT3 4名 盾2 ボーガン1 ホバー乗りソード1
PT4 3名 盾2 ホバー者ソード1
PT5 3名 盾2 ホバー乗りボーガン1
バシュ自身はホバー乗りのボーガンだった。
「みんなしばらくは公開音声を使ってくれ。
部隊から完全に離れれば部隊音声を使う。
拡大したマップ内にいる部隊員にしか声はとどかないから混乱することもない」
そこにいるメンバーは公開音声に切り替えた。
火山岩場に入るとあたりに熱風が吹き込んでいるのがわかった。
「溶岩だまりが近そうですね」
ユウキがそう言った。
「そうだな、かなりの熱風だ。
この辺りにもワームが出現するかもしれないから、みんな用心してくれよ。
ワームはいきなり地中から頭を出すが、飛びだす瞬間地面が赤く光る」
「部隊長! 下が赤く光ってます!」
先を飛んでいたサミーの下の岩場が赤く光っている。
「ここにも出たか!みんな死ぬなよ!」
バシュが叫んだ。
ボコボコと火山岩の中から頭を持ち上げた岩ワームは、サイズがオアシス付近のワームの半分ほどしかない。
「ずいぶんちっさいですね……これも自爆するのかな?」
ホバーに乗ったリキが上空からそう言った。
「さあな、叩いてみりゃわかるさ!」
そう言ってバシュはホバーでワームの攻撃をかわしながら頭にボーガンを連射し、ダメージゲージが表示された。
「結構柔らかいな、被ダメも痛くない。自爆だけは注意が必要だが」
バシュがそう言った。
「部隊長、赤い光がいくつも出てます!」
「なに!?」
みると小さい岩ワームがいっぺんに4匹湧いた。
「ちっさいけど5匹も湧いた……」
ハルがつぶやいた。
「よっし、それならMPKいってみようか!
20%で自爆するかまだわからないが、いったんその近くまで削ってくれ。
白組が来たら俺が引き連れていく。
頭を撃った者がロックオンされるらしいから、みんな頭は狙うなよ!」
「了解!」
(MPKって……バシュ、ここで犠牲になるつもりか)
そのとき再び大きな地響きがした。
消えていく区画がどんどんオアシスに近づいてくる。
「2回目の縮小です!
4時の方角から消えて行っています!
逆の方角へ走ってください!」
部隊ではチャムが指示を出していた。
2回目の面積縮小はオアシスのすぐ外側で止まった。
オアシスから早く離れなければ次の縮小で必ず巻き込まれる。
回復を終えた白組の戦士たちは次々に火山岩場へ向け走り出した。
「面積縮小に巻き込まれないためにも早く溶岩だまりを探したいですね。
我々には目もくれず急いで出発した白組も考えは同じでしょう」
メルカがそう言った。
回復を終えた赤組の戦士も次々とオアシスを後にした。
ワームに攻撃されても被ダメはほとんどない。
大盾を持った者たちはダガーを出してワームを叩いた。
ワームの生命力も簡単に削れてすでにゲージは30%を切っていた。
移動を始めた赤組部隊の範囲からはずれたことを確認したバシュは部隊音声に切り替えるように指示をだした。
「ラバス、敵がこちらに向かっているはずだ。 動向を逐一報告してくれ」
「了解! すでに……広域マップにオレンジの点が現れ始めました。
距離200切ってます!」
「わかった!
ワームはターゲットした者が逃げると地中に潜って追いかけてくる。
移動速度は遅いからホバーボードで逃げると、こちらが止まって少ししてから飛び出してくる。
そのタイミングを予測してMPKを仕掛ける。
ホバー持ちのラバス、サミー、リキ、3人に頼みがある。
白組のターゲットになってもらいたい。
迎え撃つんじゃなくてその場で逃げまくるんだ。
先頭の足止めをすれば後続がそこに溜まっていく。
時間にしたら30秒ほどでいい。
他の者は……そうさな、あそこに高さはないが横幅の大きな火山岩が見えるだろう?
あの火山岩の裏側に隠れてくれ。
俺が白組の前に立ちはだかったら、ホバー3名は火山岩に隠れている仲間と一緒に西へ逃げろ。
広域マップで索敵されない位置まで逃げたら、その後は岩場を北へ進むんだ。
無事赤組本隊と合流してくれよ。
俺が立ちはだかってからワームが飛び出すまでは10秒ほどだろう。
驚いた白組が叩いてくれれば万事だな」
(やっぱりそうだ……バシュはここで果てるつもりだ。
そんなの嫌だ! もっと一緒に戦いたい……)
ゲームとわかっていてもユウキの心に切なさがこみ上げた。
「オレンジの点がだいぶ増えてきました!
先頭の兵士は近くまで来ています!」
ラバスが叫んだ。
「よし、みんな配置についてくれ」
「了解!」
「さて、前のめりに逝こうかね!」
バシュはそう言うと5体のワームのゲージを最終確認しながらワームのまわりをまわった。
ホバー3名は白組が向かってくる方向へ飛び出し、それ以外のメンバーは隠れるために火山岩を目指した。
大勢の白いコスチュームの戦士たちが向かってくる姿に、ホバーボードに乗った3人は息をのんだ。
「なんか……ふるえが止まらない」
サミーが言った。
「武者震いだよ。ただの電子データだ!」
ラバスが言った。
敵のホバーボードが突っ込んでくる。
「うん、そうだね!よし撃ちまくる!ウォォォ!」
叫び声を上げながらサミーが白組の群れのなかに突っ込んでいく。
他の2人も左右にわかれながら広範囲にただ逃げ回った。
サミーはボーガン持ちだったため、敵のホバーや下を走る兵士を連射攻撃しながら飛ぶことができた。
当然敵のホバーボードも簡単には近寄れない。
だがラバスとリキはソードだったため襲ってくる複数のホバーボードから逃げるのは難しかった。
「かなり叩かれました!生命ゲージが半分きってます!はやく30秒たって!」
リキが叫んだ。
「よーし、俺が前にでるから後方へ逃げろ。いくぞ!」
バシュが横から飛び出して、ボーガンを白組の群れに連射しながら3人を援護した。
「よう、白組諸君! 部隊長のバシュだ!」
バシュが公開音声でそう叫ぶと、部隊長と聞いていきりたったホバーボードたちは一斉にバシュを標的にした。
そのおかげでラバスたちは誰に追われることもなく、他のメンバーが隠れている火山岩を目指すことができた。
バシュを追ったワームが5体一斉にその場に飛び出した。
面食らった白組の兵士たちは慌ててワームを叩き、すでに20%ぎりぎりまで叩いてあったワームはすぐに自爆した。
その爆発でその辺りの兵士は消滅し、バシュも一緒に消えていった。
「バシュ!」
ユウキは思わず名前を叫んだ。
「部隊長……」
一緒にいたメンバーは唖然としみなその場で止まってしまった。
「何してる!部隊長の指示通りに移動するぞ!
僕たちがここでやられたら部隊長に申し訳ないだろう!」
ラバスのその言葉でみんな我に返って岩場に身を隠しながら西に移動を始めた。
部隊本隊ではメルカが人数報告を始めた。
「PT1 1名減
部隊長が……やられました。
赤組残り人数25名
白組は8名減の表示が出ているので合計で32名減。
白組残り人数18名
白組はあと3名でゲームオーバーです!」
「おおお!」
部隊音声に歓声が上がった。
「続いてPTごとの人数残数をお伝えします。
PT1 残2名
PT2 残3名
PT3 残4名
PT4 残3名
PT5 残5名
PT6 残5名
PT9 残3名」
メルカが報告をした。
「今のワーム戦で我々赤組にだけ5000Pが入りました。
みなさんすぐに振り分けしてください。
守りに入ってもいいかもしれません。
生命や防御に全振りしても大丈夫かも!」
チャムの指示で、みんなは移動しながらポイントの振り分けをはじめた。
そのとき再び大きな地響きがして縮小が起こり、オアシス地帯全てと火山岩地帯の一部も消えた。
「3回目の縮小だけどみんな離れているから大丈夫そうね。
縮小はあと2回か……。
今から、バシュにかわって戦闘の指揮をします。
気に入らない方は好きにやって構いません!
この場所を北上しながら溶岩だまりがありそうな場所を探します。
敵はあと1人離脱すれば終わりなので途中での攻撃はしてこないでしょう。
決戦は溶岩だまりになる。
敵の消滅0回の者たちは全力で襲ってきますので心してください。
移動中ワームの出現が確認されても無視します。
頭を叩くとターゲットにされますので注意すること。
部隊長と一緒だったメンバーがまだ戻れていませんので、ホバーの方は部隊からはずれない範囲で広がって探してあげてください。
みなさん気をつけて先を急ぎましょう!」
チャムがそう言った。
しばらくして部隊から外れていたユウキたちも合流し、みんなで溶岩だまりを探しながら北上した。
東側の離れた場所を白組が移動しているのが見える。
だがこちらには誰も向かってこない。
火山岩場地帯の突出した岩が徐々に少なくなっていき、その先には見晴らしの良い荒野が広がっていた。
赤組の東側に見えていた白組の部隊が遠ざかってく。
「白組はさらに東に進路を取ったようだけど何かを見つけたのかしら。
まさか溶岩だまり……溶岩だまりから離れるほど次の縮小の対象地帯になってしまう。
みんな東へ方向転換! 白組を追います!」
白組を追いかけていくと前方に噴煙を上げた大きな山が見えた。
白組とはかなり距離が開いてしまっている。
「急ぎましょう。そろそろ3回目の……」
チャムが言いかけたとき大きな地響きがしてすぐ後ろの地面が消滅した。
「みんな急げ!」
誰かが叫んだがすでに2名が縮小に巻き込まれて消滅した。
縮小が止まったところで消えた2名は透明の壁のすぐそばで復活し部隊に戻った。
「離脱にならなくてよかったけど無駄に1回消滅しちゃった……」
復活したメンバーが言った。
「ごめんね、私の注意が足りなかった。
今のが4回目の縮小だからあと1回か……時間は残り20分。
急ぎましょう」
「チャム、謝る必要なんかない。思ったように指示して!」
ユウキがそういうと周りの部隊員もそれに同調してチャムを励ました。
「ありがとう! みんな愛してる!」
その一言でどっと部隊音声がわいた。
溶岩だまり地域が見えてくるとその手前で1度部隊は止まった。
その辺りには数機の回復塔が立っていた。
「良かったここで回復できますね。
回復を終えたらみんなで一緒に出発します」
チャムが言った。
離れたところに見える白組は回復を終えたようですでに出発を始めていた。
白組が向かった方向の先に大きな溶岩だまりが見える。
手前には小さな溶岩だまりが無数にあった。
膨らんだ溶岩がボコッっと音をたてて破裂すると中から蒸気が噴き出す。
「ここでどうやって盾の円陣を作れば良いんだ……」
ユウキがつぶやいた。
「ここを越えて1番大きな溶岩だまりのふちに沿って盾を並べましょう。
内側に隠れるボーガンが一番熱いと思いますが」
「なら後ろも盾でボーガンをサンドする形はどうですか?」
ラバスが言った。
「賛成です!盾をもっていれば少しは熱さがしのげるはずだし、溶岩側から攻撃してくる可能性も高い」
メルカがそう言うと数名がそれに賛同した。
「わかりました。ではその形で。
敵は消滅0回の者が全力で挑んでくるはずです。
ここからはPTの垣根は取り払って部隊で動くよ!
自分と仲間を信じて臨機応変に動こうね!
形なんてどうでもいい決まり事もない。
ここまで来たら勝ちたいよね!」
チャムがそう言うと、笑い声とともに歓声があがった。
大きな溶岩だまりに着くとすぐに大盾とボーガンが配置につき、ホバーがその上を飛んだ。
そこへホバーボードにのったソード4人を先頭に敵の兵士たちが走ってきた。
「あの4人はきっと消滅0だろう。思い切りくるぞ!」
ユバルが叫んだ。
ユウキはそのとき先頭のホバーの中にエイデンの姿を見た。
次回の投稿は16日(月)です。




