PW-15から来た少女
本日は1話のみ、13時の予約投稿です。
次回の投稿は6日(金)になります。
部屋に戻ると荷物の受け取りボックスの中に毎日配給される下着や日用品とともに軍服が入っていた。
カーキ色の上下の軍服は腰のベルトとブーツが黒だった。
(なんで軍服なんだよ。
しかも古くさい。 これからこれを着ろってことか?)
昔の映画に出てきそうな軍服でとても未来都市で採用される軍服には見えなかった。
夜、サトルからの誘いのメッセージを受けてユウキとハルはゼロタウンのマコトの店へ向かった。
店の2階にはすでにサトルが来ていた。
「チャムから聞いたけどサトルはグリーンゲートの訳ありだったんだな」
椅子に座りながらユウキが言った。
一瞬サトルは驚いたような表情をした。
「そうか……チャムが話したか。
まあグリーンゲートの訳ありだったことは今日話すつもりだったからいいけど。
初めて俺のフォースが確認されたとき企業や国からも誘いが来たんだ。
でもミナトさんがいるからグリーンゲート社を選んだ。
当時ミナトさんぐらいしか信用できる人がいなかったから」
「なるほどね、後ろには企業がついていたわけだ
今はなんでアークエンジェルの施設にいるの?」
「今日までアークエンジェルにいたのは海賊ゲームのとき集めたデータのチップを取り出す作業のため。
今夜からそっちの施設に戻るよ。
そのおかげというか……アークエンジェルで、とんでもない話を耳にしちゃった。
そのことを話したくて2人をここへ誘った。
でも本題に入る前に、海賊ゲームの結果を話しておく」
「な……なんだよ、深刻だな」
「正直、深刻な話だよ。
そのことはマコトさんが来てから話すね。
今VIP室にいるからあとでこっちに顔出してって、スタッフに言づてしてきた」
「ここVIP室とかあるんだね」
ハルが聞いた。
「ああ、サンも時々くるらしいよ」
「ええ、サンジェスト様が!? 今日も来ないかなあ来たらいいなあ!」
ハルが目を輝かせた。
「相変わらずだなハルは。
気になる男ばっかりで忙しいだろ」
そう言いながらユウキがハルの額を指で押した。
「フフフ、そういうエネルギーだけは枯渇しないのです!」
軽い冗談のやりとりをしていてもサトルの表情はさえず、その様子を見たユウキとハルは顔を見合わせた。
「さて、海賊ゲームのことだけど、ユウキのおかげで防具のテストはうまく言ったって。
それとゲーム中にみんなに伝わったように見えたユウキのフォースだけど。
あれはモブを通じて帯電したような状態だったらしい。
だからユウキのフォースエネルギーをみんなに伝達できたわけじゃないみたいだ」
「そうか、俺はスーパーヒーローにはなれなかったわけだ!」
「ハハ、そうだな。
それと、これは俺たちにはあまり関係のない話だけど一応話しておく。
少し前から自然や動物なんかの外界のフォースを取り込むことができるか、その可能性についてグリーンゲートとアークエンジェルが試しているんだ。
グリーンゲートや冒険者の村のエッグブースって森の中に作られていただろう?
まあ冒険者の村の森は人工の森だけど。
それはそのテストのためだ。
それで今回の海賊ゲームで、外界のエネルギーを取り込めたかも知れない子が現れた。
PW-15から来たリーシャって言う女の子で……」
「リーシャだって?」
「あ……ああ、ユウキはリーシャを知ってるのか?」
「いや……少し話したことがあるだけ」
「へえー、意外だな」
「リーシャってPW-15から来たの?」
「そうらしい。えっと、バッチっていたの覚えてる?
サンの友達で……俺も含めてみんなを率いて来た人。
そのバッチも15の人間なんだけど今回初めて冒険者の村にリーシャを連れてきたんだ」
「そう……なんだ」
「その子は外界のフォースを取り込めた可能性が高いらしい。
エッグブースが故障してデータを取るのは失敗したって話だけど。
さてと本題の話をしたいけど……マコトさんなかなかこないね」
サトルが階段の登り口の方へ目をやった。
「この店でさ……食事ができるのは最後かもしれない」
唐突にそんなことを言い出したサトルに、ユウキとハルは顔を見合わせた。
「全員ゼロに帰されるからってこと?
でもサトルはまたここに来るんじゃないの?」
ユウキが言った。
「いや、来たくても……もう来れなくなるかもしれないんだ」
「ど……どういうことだよ」
階段を上がる音がしてマコトが上がってきた。
「お、ユウキとハルもいたのか、いらっしゃい。
サトル、話ってなんだ?」
マコトがテーブルについた。
「マコトさんとお前たち2人には話しておく」
誰もいないはずだがサトルは軽く辺りを確認した。
「おいおい、周りなんか見回して用心深いな。物騒な話か?」
「うん物騒な話だよ。
実は、もうじき他の世界へ行けなくなるかもしれないんだ」
なんのことか理解できずにいたユウキとハルはその言葉に反応することができなかった。
「もしかして時空の道が作れなくなるって話か?」
ため息交じりにマコトが口を開いた。
「え?マコトさんも何か聞いてるの?」
「ま……まあ少しな、数日前に耳にした。
ここは国のVIPもよく来るから」
「そうか……。
まったく作れないということではなくて、現時点ではできる確率が極端に落ちているということだって。
でも、すでに道が作れなくなった世界もある。
それで遠くない将来、全て閉じてしまう可能性が高いらしい」
「ちょっと待って、そうしたらゼロに帰れなくなるかもしれないってこと?
そんなの困る!」
動揺したハルは拳でテーブルをたたいた。
「落ち着けハル。ゼロへは2、3日に1回はちゃんと道ができていて当分は大丈夫だ。
今回全員ゼロへ帰すことになったのは、何かあってからじゃ遅いからってシイカ様が強く言ったからだって」
「じゃあ本戦が終わったら絶対帰ろう!
ね、サトルもユウキも一緒に帰ろう。絶対だよ!」
ハルはユウキとサトルを交互に見ながらそう言った。
「俺は……しばらく残ってから考えるよ。
ゼロへの行き来はしばらく問題ないみたいだし」
サトルはそう答えた。
「サトルは怖くないのか?
いつ道ができなくなるかわからないのに……。
21に残りたい気持ちがあっても、俺は帰れなくなるのは嫌だ」
「まあな……」
腕組みをしたサトルが天井を見上げて息を吐いた。
「そういえば……さ。
さっきPW-15から来た子の話がでたけど。
サトルはPW-15のことも詳しいの?」
「いや、詳しいわけじゃないけど少しは耳にしている」
「ユウキは15のことが知りたいのか?」
マコトが聞いた。
「はい、15がどんな所なのか。
それと……実は、さっき名前のでたリーシャって子に、一緒に15に行って欲しいって言われて。
なんで誘われたのかさっぱりわからないから、その理由が知りたいというか」
「え? なんでユウキを?」
サトルが驚いた表情で言った。
「ちょっと待て、なんでリーシャの話が出るんだ?」
「マコトさんはリーシャを知っているんですか?」
ユウキが聞いた。
「あ……ああ。ちょっと待ってろ」
そう言うとマコトは席を立った。
「おかしな話だな……15って大きな問題が起きている世界なんだよ」
サトルが首をかしげた。
「大きな問題って?」
「数年前から15へ送られた人たちは21へ戻れなくなっている。
こちらからワームホールは作れるから送ることはできるけど、誰も戻ってこないって。
15の人たちはウィルスかなんかでワイトっていう化け物になった人がいるって話も聞いた。
VRゲームのデータは新しい武器や脳のチップに応用されるんだけど、今は優先的に15に持ち込む武器や防具の開発のために使われてる。
そんな物騒な所にどうしてユウキを誘ったのか俺も聞いてみたいよ」
(そんな所に俺を連れていくつもりだったのかよ。
冗談じゃない。かわいい顔して何考えてんだ)
「それなら15は戦地と一緒じゃないか。
21なら残ってもいい気はするけど15には絶対行かない」
「ねえ、そんな15のことなんかいいから、2人とも一緒にゼロに帰ろう。
ここにいたら一生会えなくなっちゃうかも。
私そんなの嫌だよ!」
涙ぐむハルを見てユウキとサトルは顔を見合わせた。
そこへマコトが2人の女性を連れてきた。
ユウキはガタンっと勢いよく立ち上がった。
「リ……リーシャ。なんでここに」
ユウキはマコトを見た。
「リーシャはVIPルームの常連さんなんだ。
横にいるのは侍女のベス」
ベスが丁寧に頭を下げ、リーシャは席に座った。
リーシャは自分の隣の椅子をポンポンと叩いてベスに座るように促した。
マコトも席につき、立ったままのユウキのすそをハルが引っ張った。
「あ……ああ」
そしてユウキも座った。
突然のリーシャの登場に3人とも戸惑いを隠せなかったが最初にサトルが口を開いた。
「初めましてリーシャ。
俺はサトル、そっちの子はハル、ユウキとは面識があるみたいだね」
「初めまして、よろしく」
リーシャは少し瞳をふせたままそう言った。
「君は15から来たんだよね。
初対面でぶしつけだけど、いくつか質問させてもらっていいかな?
不愉快だったらやめるけど……」
「いえ、どうぞ。
教えて差し上げることができることなら、なんでも答えます」
「サトル、質問する前にちょっといいか」
マコトが話にわって入った。
「15のこと、それとこのリーシャについてなんだが。
ユウキとハルは15のことは知らないはずだし、サトルも15のことを多少知ってはいてもリーシャのことは知らないだろう?」
ユウキたち3人は小さくうなずいた。
「だから俺から少し話をしよう。
リーシャやバッチ、そしてここにくる国軍のお偉方から聞いた話だ。
そのあとリーシャに質問なりしてくれ」
そしてマコトは短髪の頭をひとなですると話始めた。
PW-15は他の世界から持ち込まれたウィルスで人間がワイトとよばれる化け物になったと言われている。
だがそう決めつけたのは15の有力な貴族たちだった。
15は君主制で王や王族は存在するが、国政を担っているのは一部の有力な貴族でほぼ全ての決定権はその者たちにあった。
過去型のPW-15は超未来型の21と比べると全てが立ちおくれていて、科学的な検証もなしに有力者の一存で判定が行われることが多々あった。
「リーシャ、お前の身分を話してもいいか?」
マコトがリーシャにたずねるとリーシャはコクリとうなずいた。
「リーシャは第2王女だ」
王女と言うなじみのない言葉にユウキたち3人は思わず口をあけてしまった。
4年前、若干14歳のリーシャが国の代表として来なければならないのには理由があった。
ワイトの問題は生態科学の研究が進んでいる21に協力要請することで王族始め研究者や有識者の間で話がまとまった。
第1王子であるイブラが自ら協力を要請にいくことまで決まっていたが、ウィルス原因説を言い張る一部の有力な貴族たちから反対の声があがった。
普段なら有力な貴族の意見が通ってしまうのだが、他の貴族や国民までもが騒ぎ出し、仕方なしに1番年下のリーシャならば許可を出すということになった。
まるで問題を解決させないために策を講じているようだと賛成派の貴族はいぶかしがった。
リーシャの使命はワイトの原因を究明するための協力要請と、15での人命救助に当たる人材の派遣要請、そして性能の良い武器や防具の調達だった。
一緒にきたバッチは軍事装備品研究者で武器や防具を調達するリーシャの手伝いのために来たが、バッチに関しては問題の貴族たちがすんなり許可を出した。
このままでは自分たちもワイトになってしまうという焦りがあったからではないかとバッチは言っていた。
だが21が協力することを約束した矢先に15からのシップが次々と帰れなくなった。
マコトがそこまで説明するとリーシャが顔を上げて話し出した。
「感染していない人たちはコロニーを作ってそこで生活をしています。
ほとんどのコロニーは町や村をまるごと塀で囲って作られています。
21から来た方たちの技術と努力で早い段階で完成できたそうです。
私が覚えているコロニーは12ですが、実際はもっとあるでしょう。
21へのワームホールが作れるシップや施設があるコロニーはセンターと呼ばれる1カ所だけで王都にあります。
王都も他のコロニー同様に、全てを囲う大きな塀が作られ、王族や貴族はすべてそこにいます。
他のコロニーからセンターに人を移動させるにしても必ずワイトと戦わなければなりません。
人々を救助するためには、新しい武器も戦える人も必要なのです」
テーブルの上に置いた両手を強く握りしめた。
クッっとユウキは歯をかみしめて立ち上がった。
そして声を少し震わせながら言った。
「戦える人が必要って……都合が良すぎないか?
15の人間を救うためなら他の世界の人間が犠牲になっても良いってことなんかよ!」
強い口調でリーシャに言葉を放つユウキの服の裾をハルが強く引っ張った。
「確かにユウキには身勝手な申し出をしました。
15に行くことでワイトになる恐れもあるし、21には帰れなくなる可能性も高い。
それなのにずうずうしいお願いをしてしまったと反省しています」
「そういう理由もあるだろうが、それよりも命がけで戦わせるつもりだったことのほうが問題あるだろ!」
「待てユウキ! 落ち着け!」
サトルが立ち上がってユウキの両肩をつかんで座らせた。
次回の投稿は6日(金)になります。




