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前のめりに逝こうぜ!

本日は1話のみ、13時の予約投稿です。


 1階戦で選択できる武器にガトリングがなかったことで、不満をあらわにして仁王立ちしているバシュの後ろに近づく女性がいた。


「バシュ」

 声がしてバシュが振り向くと、ボディーラインがくっきり見えるメタリックシルバーのスーツに身を包んだ女性が立っていた。


「あれ、ハクヒなんでここにいるの?」

「私がいるってことはあの方がいるからに決まっているじゃない」

「そりゃそうだ。全体の集まりじゃないのにわざわざ来るんだな。

 ゼロからの冒険者にそれだけ思い入れがあるってことか。

 なあ、俺のガトリングがないんだが」

「だから? どんな武器を使ってもあなた強いんでしょ?

 問題ないじゃない」


「あなた強いって……。

 ま……まあ否定はしないが」

 バシュは照れた様子でそう言った。


「じゃあ、またねバシュ」

 そう言ってその女性は去って行った。

「お……おう、またなハクヒ」


「だ……だれ? 今のきれいなお姉さん」

 ユウキが聞いた。


「シイカ様の側近のハクヒ。

 すんごい大人っぽく見えるけど、あれでも俺と同じ23歳だぜ。

 視力が悪いわけじゃないのにいつも眼鏡してるんだが、あれ取ると相当いい女なんだ」

 そう言ってバシュが親指を立てた。

「お……おおー。

 てか今さらりと言ったけど、やっぱりバシュは20歳超していたんだ!」


「くだらない話してないで壇上を注目!

 あれ? あそこにいるの……シイカ様じゃないですか?」

 チャムに言われ壇上を見るとハクヒの後ろにゴシック調の黒い衣装を着た小さな女性が立っていた。


「あ、シイカ様だ」

 そう言って人をかきわけて前の方に歩いていくバシュの後をユウキたちは追った。


「選ばれた下級組のみなさま、おめでとうございます。

 椅子取りゲームを企画されたシイカ様よりご挨拶させていただきます」

 背が小さいシイカは台に上り壇上のマイクに顔を近づけた。


「クゥゥ……相変わらずかわいいな、シイカ様」

 そう言うバシュの脇腹をチャムが小突いた。


「み……みなさま」

 その声で吹き出す人がいるほど声も子供のような声だった。

「くっそ、今笑ったやつあとで殺す!」

 バシュが握りこぶしを作って周りを見渡した。

 すると今度はチャムがバシュの足を踏んづけた。

「チャ……チャムよ……おまえなあ」

「シーッ!」

「はいはい……」


「私はシイカと申します。

 皆様と同じ、ワールドゼロ民です。

 ゼロにあるグリーンゲート社と関係のあった両親とともにこの国にきました。

 自殺を考えた若者をVRゲームで救えるなどとは思っていません。

 ですが現状を抜け出すための気持ちの切り替えや、つまらない相手に固執しないですむ前向きな考え方に気づいてもらえればと企画しました。

 あなたがたはまだ人生の半分も生きていません。

 苦しみや困難はあってあたりまえ、これからも容赦なくその試練は訪れるでしょう。

 でもそれ以上の楽しみと幸せを求めてみてください。

 嫌な者からは逃げていいのです。

 人に悩まされるのではなく、自分のために悩む。

 人に時間をうばわれるのではなく、自分のために使うべきです。

 どうかゼロに戻ったら、元気に楽しく生きて行ってください」


 一瞬間があり、そのあと会場は割れんばかりの拍手と歓声が鳴り響いた。

「ありがとうございます!」

「ここに来ることができて本当に良かった!」

 会場のあちらこちらから感謝の声が聞こえ、中には涙ぐんでいる者もいる。

 見るとハルも笑顔で泣いていて、ユウキも思わず目がうるんだ。


「さすがシイカ様!最高!愛してる!」

 バシュが叫んだ。

 チャムもうれしそうに拍手を送った。


 シイカやハクヒが会場から去ったあと、今後の連絡や打ち合わせを行うために下級組で部隊が組まれた。

 すでに運営側からの指示で部隊長はバシュに、副部隊長はチャムに決まっていた。

 部隊ができあがると、部屋のスクリーンに表示されていたゲーム情報が個人宛に配布された。


 バシュが壇上に上がった。

「部隊長のバシュだ。

 ここまで来たんだ、ためらいやとまどいはいらいない、思いっきり楽しもうぜ!」

「おおー!」

 会場は大盛り上がりだった。


「みんなの手元に届いている情報に少し補足をする。

 これは俺が独自に仕入れた情報だ。

 外にもらすなよ、ばれたら試合が中止になりかねん」


 そこにいる者たちは顔を見合わせながらざわついた。


「今回の戦場は外側から砂漠地帯、火山岩地帯、溶岩だまりだ。

 そして10分ごとに戦う場所の面積が小さくなっていく。

 最後は溶岩だまりを囲うように戦うことになるだろう。

 回復塔は使えず砂漠地帯に小さなオアシスがあってその安全地帯に入れば10秒で1割回復できる。

 だがそこも時間とともに崩れていく。

 ゲームの公開情報の中に、ワーム討伐8000ポイントってのがあるが、このワームはオアシス付近に巣を作っていて、回復のためにオアシスに入る兵士を襲ってくる。

 とまあ、この程度なんだが知らないよりは知っていた方がいいだろう。

 それじゃあ、まず5人ずつのPTを作ってもらう。

 バラバラで戦うんじゃなくてPTで行動する。

 部隊としての指示や連絡を取りあうことは当然やっていくが、武器の選定や細かい決まりごとなんかはPTで管理していってくれ」


「バシュ、ちゃんとまとめ役こなしてる……大人だな」

「ねー、なんかかっこいい!」

「お……おいハル。おまえにはモニークが……あれ?

 そういえばモニークは?」

「それがPT40は2位だったから全員残るはずなのに、名簿に載ってないしここにも来てないんだよね。

 もう1人のPTメンバーでバルタンって言うのもいない。

 2人ともわけありなのかな?」

「ふーん、たぶんそうじゃないか」


 バシュが手を1回叩いた。

「よーし、じゃあPTを作ってくれ!」

 会場内がざわざわとし始めた。


 そのときそばにいたチャムがユウキを見た。

「ユウキ、私とバシュはここのお膳立てをするためにいるのです。

 1人でも多くの冒険者を次戦にすすめるために私とバシュは動かなくてはならないのです。

 だからあなたと一緒にいられるのはここまで。

 ユウキ、ハル、ゲームを楽しんで帰ってね。

 私とバシュはPTが組めずにいる人を誘ってPTを作ります!

 そして誰かのために、この下級戦で逝くことになると思います。

 じゃあね!」


 チャムはユウキとハルの首に手を回して2人にハグをすると走り出し、1人でいる人に声をかけに行った。

 見るとバシュも壇上をおりて1人でいる人に声をかけている。


 ユウキは切ない気持ちになった。

(そうだ……PT11は終わったんだ。

 ゼロに帰ったらバシュやチャムにはもう会えなくなる)


 仲間とか友情という言葉をずっと敬遠してきたはずなのに、今それを失う切なさを感じていた。

 ゲームを楽しめたのは仲間がいたからだったと、今更ながら気づいたユウキは、素直にそれを認めることができるようになった自分の変化にも気づいた。


(俺……みんなともっと一緒にいたい。別れるのは嫌だ)


「ユウキ、あと3人探そうか!」

 ユウキが明らかに気落ちしていると感じたハルは、元気よくそう言った。

「うん……そうだな」


 ハルのいたPT40のメンバーだったユバル、ミアンが合流し、近くにいたラバスという男子が入ってPTができあがった。

 あぶれた人が見当たらなくなった頃、再びバシュが壇上にあがった。


「みんなPT登録が済んだようだな。

 部隊での音声やモニターのやりとりは初めての人が多いはずだ。

 経験者はレクチャーしてやってくれ。

 マニュアルも出ているから参考にしてな」


「あのちょっと意見いいですか? ラバスと言います」

 ユウキたちのPTに入ったラバスが手を上げた。


「おお、いいぞ」

「ありがとう。

 今回使用できる大盾だけど、ものすごく良い性能だと思う。

 カウンターの取り方は慣れるまでコツがいるかもしれないけど。

 生命回復までついているからポイント一律で始めるならかなり優位になれるんじゃないかな。

 武器なのに回避率もあがるし。

 通常ならPTに必ず1人は回復玉をなげる魔力極振りの人をいれたくなるけど、全員大盾なら回復役はいらないかと。

 そうなれば戦える人間が1人増えると思う。

 気づいている人もいると思うけど一応言ってみた」


「それってさ、白組も同じ事を考えるんじゃない?」

 会場の中の誰かが言った。


「相手は国軍の兵士なんでしょ?

 僕たちのことなめてるはずだからソードとかが多い気がする。

 みんな一律にこれで行けとか、部隊長も言いづらいだろうし」


 バシュは全体を見回しながら腕組みをした。

「こういうの大事だよな。

 思ったことを言って反対意見もあってよし。

 ラバスの話も1つの選択肢として考えればいい。

 みんな自由でかまわない。

 他にも意見あるやつは遠慮なく挙手してくれよ!」


(ラバスはもう武器や戦い方を考えていたのか。

 何も考えていない俺と違って真面目にゲームやるタイプだな。

 こういうやつがPTにいてくれると助かる)


「さてと、さっき俺が流したゲームの情報だが。

 事前にこんな話をしていいのかって思った者もいるだろう。

 あっちの下級戦士は本物の兵士なんだ。

 多少ずるをしたって多めにみてもらおうぜ!

 情報を持ってたって歯が立たないかもしれないしな。

 先に15名に減ってしまうにしても、しばらくはあがいていたいだろう?

 陰キャなめるな!って言ってやりたいだろ?

 力の差がある相手に思い切り挑んでやろう!

 2回までは死んでもまた復活できる。

 仮想なんだ、果てるときは前のめりに逝こうぜ!」


 そのバシュのあおりにみんな気分が高揚し好きなことを叫びだした。

「そうだ、ゲームなんだ!恐れることはない!」

「全力でたたく!」

「人生でこんな思い切りはもう味わえない!」

「楽しんで逝ってやる!」

 拳を上にあげ大声で叫んでいる彼らは、自分自身を傷つけてしまった悲しい過去を払拭できているように見えた。


(この雰囲気最高だ。

 こんな強気な発言もここだからこそできる。

 俺ももっと楽しまなきゃ)


「よーし、今後相談や提案があったらいつでも部隊モニターしてくれよ。解散!」


 ◇

「はーい、ジェームズです!

 10月30日、赤組の訳あり冒険者が決定され戦闘情報も一部公開されました。

 白組の戦士は見習いではありますが国軍の兵士です。戦いが楽しみですね!

 尚、下級戦は戦士以外のモブも登場します。

 さながらバトルボックスのPT戦のような感じでしょうか。

 規模は桁違いですがね!


 1日『1階戦』  下級戦士 各組50名

 午前0時開始~1時で階層閉鎖(どちらかの陣営の戦士が15名になった場合も階層閉鎖)


 現在スポンサーは48社となりました。

 投げトークンの準備はよろしいですか?

 選手の頭上に番号が表示されますのでその番号で投げトークンしてくださいね!

 詳しくはグリーンゲート社のサイトをご覧ください!

 ◇


12月30日~1月3日まで投稿お休みです。

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