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大人の遊び


 サンジェストはユウキが空腹だと勘違いしている。

普通ならばユウキのあの涙とセリフで空腹だとは判断しない。


(ど……どういう勘違いをされてるんだ俺。子供じゃないんだから)

 とまどいながらもこの心遣いを無碍(むげ)にできず、的外れであることも言い出せなかった。


「給仕! 海賊料理をもってきなさい!」

「イエス マイ サン」

 サンジェストが叫ぶと、給仕たちは一斉にそれに答え、あっけにとられたユウキは黙ったまま椅子に座った。


 サンジェストは心根はやさしく企業人としても優秀だ。

 人の行動や気持ちの解釈さえ間違わなければ、人間性でも尊敬を集められるはずだが、その部分は浮世離れしている。

 アークエンジェル社はサンジェストの父フィリップの会社だが、フィリップは3年前PW-15に行ったまま行方が知れない。母エミリはひどく落ち込み精神的に不安定だっため父親の代理にはなれず、サンジェストは若干24歳だったが代表代理の座についた。

 ここでは婚姻をしている者はごくわずかで、両親であっても夫婦とは限らず、家族が別々に住むことも特別なことではない。サンジェストの両親も夫婦ではなく、同じ建物の中の別の住居に住んでいて、サンジェストは父と一緒に暮らしていた。


 4年前まではPW-15から戻れない者は1人もいなかった。

 時空超えの際にはワームホールが必要になり、通常、1度使ったワームホールは閉じてしまうため渡航した先で作り直さなければ元の世界には戻れない。

 15ではなんらかの事情でそれが出来ないため戻れなくなっている。

 ワールドゼロに関しては、作ったワームホールが残ったままになることが多く、閉じてしまうまで使ってから再構築をするが、それも容易にできてしまう。


 時空を越える乗り物は時空船と呼ばれ、形や大きさが違っても必ずワームホールを作るための装置を携えている。ワームホールが空くときに集積される電磁場の物理量によって、つながったことのある世界の特定はできる。目指す電磁場帯に向かって穴をあけることで目的の世界へのワームホールを作ることができ、迷うことなく21にも帰還できる。


 初めて確認される世界にワームホールがつながった場合は軍の飛行士が時空超えをする。

 ワールドゼロ以外で、PW-21から他の世界へ旅立った飛行士で戻って来ることが出来たのは、PW-15に行った者だけだった。

 現在確認されている世界の数は21で、別次元の世界が確認される前は、PW-21には国名があった。21は超未来型と言われているが、それはワールドゼロを基準にした場合で、他にもっと先行した時代を生きている人々の世界があるかもしれない。


 PW-15には21タウンと呼ばれる21からの移民者たちの町があり、その中にワームホールを構築する専用の施設が作られている。

 その施設ができてからは、気軽に15へ渡航できるようになっていた。

 4年前、15から逃げるように帰ってきた者たちによって、15の人々が怪物のようになってしまったという情報がもたらされた。

 その後、何機も時空船を送り込んだが、1機も戻らず行った人間も戻って来ていない。



 ユウキがふと横を見ると隣にチャムが座っている。


「フフ、私もサンジェスト様とお食事したいのです!」

「そ……そうか。素早いね、チャム」


 他のメンバーたちも到着し、それぞれテーブルにつくとすぐに海賊料理が運ばれてきた。

 真ん中に骨が突き出た大きな肉、木のカップに入った飲み物、てんこ盛りの野菜や果物。


(また未来食じゃないのか……今度は異世界っぽい料理。

 でも異世界系ならなんでも許す!)


「さあ諸君、戦のまえに腹ごしらえだ!

 思い切り飲んで食べてくれ!」

「おおー!」

 サンジェストのかけ声に、そこにいた冒険者が一斉に歓声をあげた。


(戦の前に……って。まあ深い意味はないんだろうけど。よし、食べるぞ!)


 食事を始めて少しすると、笛の音が聞こえてきた。

 低く太いその音はだんだん近づいてくる。


「来たね」

 シュリがそうつぶやいた。

「はぁ、やっぱり今日もか……まだ昼間だぞ。いつ招集かけたんだよ」

 ミナトが肩を落としてそう言った。


 バーンっと扉を開けて、角笛を吹く大男を先頭に、いかにも戦う男な人たちが続々と入ってきた。


「よお、サン」

 その男の姿を見るなり、サンジェストは料理の並ぶテーブルの上に飛び乗った。

「来たねバッチ!

 初めての人もいるから改めてみんなに紹介しよう!

 ゲーム友達のバッチだ。

 そして彼が率いているのは、今日のVR参加者だ

 なんのゲームかって? それはいつものー」


「海賊ゲーム!」

 みんなが一斉にそう叫んだ。


(どどど……どういうこと? 今からゲームって、まさか俺も参加するの?!)


 レミとアッガイは普通に食事を続けていて、チャムはキャラキャラと笑っている。

 バシュはいつの間にかその大男たちと一緒に雄たけびを上げていた。


「はあ、そうなるよね……」

 机につっぷすミナトの背中をシュリがポンポンと叩いた。


 そしてその男たちの中にサトルがいることにユウキは気づいた。

(サトル……?)


「ユウキ、君も海賊ゲームに参加するんだよ!

 それと私のことはサンって呼んでね!」

 ユウキはサトルの所に行こうとしたが、サンジェストに話しかけられ立ち上がるタイミングを逃した。


「あ……はい。 がんばります……サン」

 サトルのことが気になって、ゲーム参加を了承するような返事をしてしまった。

「うん、よろしくね!」

 ニッコリ笑うサンはまるで子供のようだ。


(この人はお金と権力をつかってゲームをしているのか?

 なんか……大人が本気で遊んでるって感じだな)


「シュリ! 初めて参加する冒険者もいるから海賊ゲームのこと説明して!」


「では……」

 シュリは店のカウンターの上に立った。


「今日のクエストは海獣ベルクーガス!

 過去に1度やったことのあるクエストだが、我々では歯が立たなかった難敵だ。

 難度はA。この上にSクラスのクエストもあるわけだから、こいつを倒さなければ先に進めない。

 この部屋の全員を、ベルクーガス部隊として登録するからモニターから承認をするように。

 このクエストが成功でも失敗でも終了時点で部隊は消滅する」


 みんな一斉に自分のモニターで了承を押し、ベルクーガス討伐部隊員になった。


「ベルクーガスのデータを開いてくれ、ヒレのついた手が4本、尻尾までの大きさは20M、戦闘態勢の時は上半身を水面に立たたせ、戦っているときは水面下は尻尾で泳ぎながらバランスを取る。

 水面、水中とも移動速度は速い。

 戦闘時間は60分。 前回は60分で2割も削れなかった。

 鱗は反射ステータスが付いていて、攻撃ははね返る。

 自分でくらわないように十分注意すること。

 弱点はまだわからない。

 戦闘中は部隊音声で常に意思の疎通をはかること。


 あとは装備についてだ。

 装備一式はもちろんいつもの海賊装備で特に改良はない。

 武器については、武器リストを開いてくれ。


 【武器】

   1 海賊ロングソード (片手用、両手装着可)

     攻撃力2000   氷、炎魔法付与可 持久力+10%

   2 海賊ボーガン   (片腕用、両腕装着可)

     海賊攻撃力1000 氷、炎、回復魔法付与可

     持久力+10%   チャージ10秒

   3 海賊ガトリング銃 (片腕用、両腕装着可)

     攻撃力2000   氷、炎魔法付与可 チャージ20秒

   4 海賊フォースショートソード(片手用、両手装着可)

     攻撃力3000


 去年チートの扱いで退場したサトルが放った異質なエネルギーは現在フォースと呼ばれている。

 この話は、ここにいるほとんどの者には周知されていることだ。

 サトルの協力のもとフォースを制御しつつ威力にかえ武器に出力する研究がなされた結果、サトルのエネルギーに耐えうる武器はできた。

 だがその武器で不具合をだすフォースもちの少年が現れた。

 いずれわかると思うが、2人のフォースは少し違うものなのだろう。

 そこで、グリーンゲートは武器に改良を加え、今日のボス戦でその少年は不具合なくその武器を使いこなすことができた。しかも成果は上々。

 今その少年はここに来ている。


 4番目の海賊フォースショートソードはそれと同じ仕様で、誰でも使ってもらってかまわない。

 その武器はフォース量が微量でも光を帯びるように改良されているから、自分が出しているか判断しやすいはずだ。もっと多くのフォース持ちが現れることを期待する!


 何か異常がおきてもすぐに対処できる、グリーンゲートより優秀なうちのエンジニアが控えているから安心して使ってくれ。 以上だ!

 あ……その少年というのは」


 シュリは片手を上げてユウキの方に向けた。

「彼だ。 ユウキ、17歳!」


(なんで年まで言うかな……)


「年は言う必要ないだろう……シュリ」

 ミナトがツッコミを入れ、店のなかに爆笑がおこった。


「ああ、それと、今日の参加者だが。

 いつものサンのゲーム友達。

 ユウキのPT、それと白組、赤組から強者を数名。

 まあ初めての参加者も、このゲームが終わったらサンのゲーム友達だ!」


 またどっとみんなが笑った。


 サンジェストは根っからのゲーマーで、機会があるたびに目を付けた者をなかば強制的にここに連れて来る。そして仲間を増やしみんなでゲームをする。

 だがその結果は自社の開発に役立てるためであり、グリーンゲートへも無償でデータを提供している。


 シュリの説明が終わると食堂の扉から隣のゲームブースへ移った。

 グリーンゲート社の屋外ブースほど大がかりではないが、緑の森が作られその中にゲームブースが建てられていた。

 天井が開かれると外気が流れ込み、エッグ周辺には鳥や小動物の大きなゲージが立ち並んでいた。

 

 ブースの中央のテーブルにはサンのものだとわかる真っ赤なエッグが置かれている。


「ここもグリーンゲートと同じタイプのエッグなんですね……」

 ユウキは近くにいたミナトに聞いた。

「ああ、グリーンゲートと共同開発した商品だからね」

「あの……ミナトも戦うんですか?」

「そ……そうなんだよね。

 ま、もと冒険者だし、ゲームは好きだからいいんだけど。

 サンと一緒のときはかなりハードなんだよね」

「アハハ……そう……なんですね」

(って笑い事じゃないだろ俺……)


 レミたちのそばに座ろうとしたがサンに手招きをされ、しかたなく赤いエッグの隣に座った。


 エッグに入り、部隊モニターがつくとシュリが説明を始めた。

「ダイブ前にPTを編成をする。

 部隊音声とPT音声が混ざって慣れるまで混乱するかもしれない。

 回復などの魔法付与武器の効果はPTのみだ。

 部隊バフは部隊長のサンしかかけられない。

 部隊副隊長の管理者権限で、PTメンバーはこっちで振り分けをさせてもらった。

 一覧を見ても初対面の人もいるから……まあダイブしてからメンバーと交流してくれ。

 同じPTのメンバーの位置は、マップ上の赤い点で確認できる。

 直接見ると体の外が赤い線で覆われているように見えるから識別しやすい。

 それと1度消滅したら復活はないからな」


「シュリ、もう説明はいいから早く行こう!」


「まってサン、開発部からメッセージが届いている。

 えと、代表が喜ぶようなイベントがあるかもしれません。

 ベルクーガス、倒せるもんなら倒して見ろ……だって」


「クッ……言わせておけば。

 この間は惨敗だったが今日こそは倒してやるさー!」


「おおー!」


 男ばかりの会場は空気に妙な圧がかかっている気がした。

(雰囲気におしつぶされそうだな……)

 そんな中ちらほらと女性らしい姿もみえた。

(ところでサトルはどこ行ったんだよ!)


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