あの星で、最後の愛を語る。
人生は一冊の本だ。
書かれている事はその人が今まで生きてきた過去の記載であり、この瞬間も何を体験したのか、何を思ったのか一文字、また一文字と書かれていく。
未来は空白のページだ。
何が起きるのか分からない、先走って読むことも出来ない。
故に空白だ。
それはこの星もまた同じだった。歴史はあっけなく崩壊する。
人類が積み上げてきた過去も簡単に崩壊し、文明は幾度となく滅んでいく。
今を生きるこの時代も、この文明も、過去に起きた崩壊の様にあっけなく終わる物だと――それが早いか遅いか、自然災害か人的災害か。それとも――。
何時から始まったのか、今となってはもう覚えていない。
事の始まりなんて大体いつも曖昧だ。
劇的な変化を起こすも、数ヵ月経てばそれが日常へと変わる。数年もすれば見慣れた景色へと変わる。
誰の目にもこう映っていたはずだ、この星はもう駄目だと。
だからこそ逃げたんだ、飛び出すように、捨てるように。
それは間違ってはない、誰だってそうする。でも彼女はこの星に残らなくちゃいけない。まだアレが存在しているならば戦わなければならない。あの人と、あの人との間にできたあの子達を守るために。
……あぁ、もう重力圏は振り切ったのだろうか?
あの人は安全なところまで逃げれただろうか?
泣き虫で、臆病者で、それでいて何処か正義感が強くて……とっても優しいあの人。
「****、準備はいい?」
「――うん、もう大丈夫」
大地が一度大きく揺れた、きっと星の最後の息吹だ。
間も無く活動を停止するだろう星が最後に大きく叫んだ。
その内自転も止まる。まだ死にたくないって。きっとそうに違いない。
彼女はそんな事を考えながら目の前の仲間達の元へと足を進める、きっとこれが彼女達の最後でもある。目の前に広がる荒廃した街、高く聳え立っていたビルは倒壊しアスファルトは原型を留めていない。まるで予言者の言う世紀末そのものだ。
そう、この状況は昔の預言者が伝えた世界なんかよりもっと酷いだろう。
これが夢だったらって何度思ったことだろう。
現実は酷く厳しい。
「みんな――」
彼女を中心に両サイドへ三人ずつ、計七名。人類最後の希望と言われた彼女達七人。
最後まで抗うと約束した、例え一人になっても……逃げた人達への時間稼ぎだとしても。目の前の”化け物”を一秒でも長くこの星に留める為に。
彼女達は理解していた、決して勝てる相手では無い事を。
彼女達は理解していた、ここが自分達の墓場であることを。
彼女達は理解していた。
「ありがとう――」
そして、再び大地が大きく揺れた。