12.森の異変と邂逅
久しぶりです。遅くなりすみません。
「魔物の質が上がってきたみたいね、サリー」
「たしかに少しずつ、強くなっています。」
前来た時も、こんなに強かったでしょうか…?
私は心の中でため息を吐きます。どっちにしろ弱いので問題はこれに関してはありません。けれど、何か異変が起きているのであれば、このまま進むのはあまり褒められたことではないのかもしれません。
「お嬢様、どうしますか?魔物が異常に多く、普段より強い気もしますが。」
「それは私も思ってたの。でも…サリーって倒せない生き物いるの?」
「さあ、どうでしょうね?わかりません。」
正直、リナンもミアもお嬢様も強いから大丈夫だとは思います。でも、万が一があれば…
「お嬢様がお決めください。お嬢様の選択を指示します。」
「そうですね。」
お嬢様は悩み始めました。そして、しばらくすると顔を上げます。
「とりあえず、進もうと思います。何か異変があるならあるで調べておくべきだと思うので。サリーはこの国でほぼ一番と言って良いほど強いし…いざとなったら私の転移で少しぐらいは逃げればいいの。」
ちょうどその時に一旦魔物の群れが途切れたのでパパッとサンドウィッチを配りました。周囲を警戒しつつ食べます。
「おいしい!」
ミアが満面の笑みで食べるのを、リナンが幸せそうにお世話しています。リナン、本当にミアLOVEですね。魔物だらけの森が一瞬だけおっとりとした空気に包まれます。
「おっと、」
ミアの口元を拭っていたリナンが、急に目を細めました。
「誰かに見られてる、そんな気がする。」
リナンは気配に敏感です。私も少しだけリナンほどではないですが一瞬かんじました。
「…良い匂いがする」
しげみからボソッと掠れた声が聞こえました。しげみをみると、耳を生やした小さな亜人の男の子がいます。
「お腹が空いているのかしら?」
お嬢様が優しく問いかけます。
「うん。最近作物が採れてなくて…森に取りに来たの。」
「そうなの…、その原因ってわかるかしら?」
目を見開いたお嬢様が問いかけます。
「なんか、大きくて怖いのがいるからって父さんは言ってた。村の人たちも何人か死んじゃったっていって…」
「そう、なのね…あの、その動物に会って生き残った人はいるのかしら?」
お嬢様は申し訳なさそうに聞きます。
「村の人にはいないんだけど、最近、村で保護した人たちがいるんだ。大怪我だけど、意識はあるみたい。」
私たちははっとします。もしかして、この国のものでしょうか?それともあちら側の国の人たちでしょうか?どちら側であっても、話を聞きにいくべきだと本能が告げています。
「あの…その保護された方にお会いすることはできませんか?」
私は真剣に問いかけます。
「分からない。一応聞いてみる。ついてきて。」
ぐぅぅぅ
男の子がそう言った瞬間その子のお腹が騒ぎました。
「おなかへってたの?これ、たべて?」
ミアが自分の食べいるサンドウィッチをちぎって渡します。後ろでリナンが感激していることは気にしないでおきましょう。
「おいしい!」
「ありがとうございます」
リナンがお礼をいいました。このサンドウィッチはリナンが作りましたから。
「案内するね。」
男の子はとことこと歩き出しました。しばらくすると、集落のような村が見えました。
「入っていいかきいてくるね。」
男の子は門衛の方へと走っていき、しばらく話すとこちらへ走り寄ってきます。
「いいけど、ごしんようの武器を外すならっていうことみたい。」
見ず知らずと者を警戒せず、そのまま入れるのはさすがにダメなので私たちは武器を外します。取られる可能性はありますが、そのまま置いていきます。取られたら取り返すのみです。
「こっち!」
男の子はまたしても走り出し、村で一番大きそうな家の前で止まりました。
「入っていいよ。」
許可をもらい、家に入ると60代ぐらいの執事が出てきました。
「カロル、この人たちをルイ達に会わせたいんだけど。」
「その方達は…?というよりも怪我がなくて安心しました。」
「僕の友達だ。」
男の子は答えるとずんずん奥に入っていきます。
「ついてきて。」
よく分からなかったが取り敢えずついていくと、男の子は手続きするから、といって扉の向こうへといきました。そして、あっさりと戻ってきます。
「いいけど、もう少しかかりそう。村を案内するから。」
どうやら、この男の子が村を案内してくれるようです。
観光なんてしてる場合ではないですけど、ちょっと楽しみです。