8 .リナンのお願い
遅くなってごめんなさい!
「リナン、本気ですか?」
もう一度確認しました。
「はい。」
リナンの目には決意の光が宿っています。ミアが可愛くて仕方がないのでしょうね。ですが、リナンが決意した以上私も真面目に答えなければ。
「そうですね。出来ないかは分かりません。まずは、お嬢様、そしてエリーゼ様とスティーブ様に頼まないと。娘なのでエリーゼ様達も許可をくださる…?ただ、リナンは優秀なので手放さないと言われてしまえばそこまでですね。」
「そうですか…」
「取り敢えず今からいけますか?時間がないので。」
「はい!…ミアは…?」
リナンが質問するように私を見ました。
「ミアは…来たいですか?」
「いく…いきたい?です?」
ミアはついて来るべきだと思っているようなので連れていくことにしましょう。
♢♢♢
「お嬢様、失礼します。」
「その声はサリーね!!」
ドアを叩いて呼びかけると扉が開いて目を輝かせたお嬢様が出てきました。
「その確信が持てる状況でないのに扉を開けるのは少しお気をつけください。」
「絶対に、ぜーったいに間違えませんわ!」
どこからその自信がくるのでしょうか?
とても不思議です。
「そうだとしても気をつけてくださいね。」
「分かりました。」
少しだけめんどくさそうに返事したお嬢様は後ろのリナンとミアを見て、不思議そうに目をパチクリさせました。
「あら。珍しい組み合わせ。どうしたのかしら?…独立?」
「はい。単刀直入にいいます。…リナン」
これは自分でいうべきだろう。
「お嬢様、私、リナンは…貴方様の専属メイドとしてついていきたく存じます。」
一瞬、時が止まったように感じた。だが、お嬢様は割とすぐに動き出す。
「リナン、分かってるの?生活の保証もないのよ?落ちぶれる可能性だってある。…あの階級だもの。」
「私の決心は揺らぎません…ですが、お嬢様の迷惑になるのでしたら引き下がります。」
「…そう、ですね。ついてきてくれることは、とても助かりますわ。リナンは優秀ですし。…わかりました。」
お嬢様は一人は必ず独立の際に必要な私を連れて行くことは了承できたが他にも雇える今、連れて行くのは悪いと思っていたようですが葛藤の末、連れて行く方を選んだようです。
「では、出来れば明後日までに荷物をまとめてください。あとは、お母様達に話さなければ…」
「明後日…わかりました。それと、エリーゼ様へは私からお話いたします。」
私はリナン、ミアとともに頭を下げました。続いてはエリーゼ様の執務室です。
コンコン
「なにかしら?」
「サリーです。執務中に失礼いたします。」
ガチャ
「エリーゼ様が入るようにと。」
エリーゼ様の専属メイドであるルカがドアを開けてくれました。
「用事とはなにかしら?」
「はい。お嬢様の独立に関する件なのですが…」
「少し別室を借りましょうか。」
話の内容と後ろにいるリナン、事情を考えて別室でお話をしてくださるようです。エリーゼ様の言葉でルカが動き出しました。やっぱり優秀ですね。
「エリーゼ様、お部屋の準備が整いました。」
「ありがとう、ルカ。ついてきて。」
少し経つとルカが再びきます。エリーゼ様が先導してくれました。とはいえ、何度か入ったことはありますが…
「どうぞ。三人とも座って。」
「「「ありがとうございます。失礼します」」」
綺麗なお部屋です。洒落た家具もそれなりに多いです。手入れはルカがしているのでしょうか?
「それで用件を詳しくお願いしますね。」
「はい。私、リナンは…」
リナンは強く手を握り、ぎゅっと目を瞑り息を吐きました。
「お嬢様の専属執事としてついていきたいと存じます。」
「そう。いいわよ。」
え。
「よ、よろしいのですか?」
「別にいいわよ。メイド一人で独立する娘なんて心配で仕方ないもの。増えるなら嬉しいわ。あなたが優秀って言うのも分かってるから。それにね…」
エリーゼ様はパチリとお茶目にウインクして声をひそめました。
「オルレはいつか婚約破棄に限らず独立したがると思っていたの。だから新人教育もある程度行き届いているわ。オルレをよろしくね。スティーブも後で言っておくわ。けれど、ミアちゃんが可愛いのは分かるけれどあなたはオルレの専属メイドだということを忘れずにね。」
エリーゼ様はリナンがミアが専属の決心となったことは分かっているようですが、責めるようではなく安心します。
「ありがとうございます。そのお言葉胸に刻みます。」
私とリナン、そしてミアが慌てて頭を下げます。
「あっ、そうだ。クリスタ、いる?」
エリーゼ様がそのあと突然声をあげて、無線を取り出しました。
「いるのね?じゃあ、きて。…サリー達、少し待っててくれるかしら。」
「「「…はい。」」
どうしてクリスタを呼び出すのでしょうか?
読んでくださりありがとうございました。