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3.
『アマルティア!』
少女の中で、少女を呼ぶ声がした。
「アマルティア……」
なぞるように、少女は自らの唇を震わせて、その名を呼んだ。
誰かが名前を呼んでいた。
ちがう。
耳に届くのは、違う名前だ。
「……カ! …………ビルカ!!」
心地よい響きに、少女はゆっくり目を開けた。空の主役が太陽から月や星に変わり始めた薄暗がりで、のぞき込むフィンチ眼鏡に自分の顔が映った。
「アマルティア?」
自分の声で発した言葉に違和感があった。
少女は考える。
「ビルカ?」
眼鏡の奥の男の目が見えた。それでわかった。
「ヴァール……ヴァール」
それでわかった。
自分が誰かも。彼に言いたいことが山ほどあることも。
「ヴァール、やっぱりあったぞ。ワタシの中にキラキラあったぞ」
弱々しい声色ではあったが、少女は顔いっぱいに喜びを表した。




