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5.
その日のことは、ヴァールの頭にこびりついて離れなくなった。
「ハイムヴェー中尉!」
その声で呼ばれる時は、いつだって笑顔の彼らに囲まれていたはずなのに、
「ハイムヴェー……中尉…………」
その顔が崩れて、真っ赤な記憶へと変わる。真っ赤な地獄絵図の中で、ヴァールは彼らにとどめを刺した。
そんな記憶の後に、おまけのように見える景色。
現実なのか。それともそう願うがゆえに見た幻だったのか。
最後の一人を撃つ間際、彼がいつもの彼になり、声にならぬ声で言ったのだ。
「ありがとう」と。
それからヴァールは飛べなくなった。
飛ぶことはおろか、銃を握ることもその引き金を引くこともできなくなった。




