表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶をめぐる、彼と少女の物語  作者: 葛生雪人
十一、クジラと若者
31/49

4.

 第一報が入った時、ヴァールは出撃に備え、愛機の整備に立ち会っていた。

 一言目を聞いた時点では眉をしかめただけだった。常ではないが稀にある程度の小事だと認識したからだ。

 だが息を整えながら続きを告げた兵士の言葉に驚かずにはいられなかった。

 その日、五人の若い兵士が事件を起こした。

 訓練の最中、突然の発砲。乱射。そして逃走。近くの村にて籠城し、鎮圧にあたった部隊と未だ交戦中だという。多くの民間人が巻き込まれたという。

 彼らだった。

 ヴァールを慕い、ともに夢を見た彼らだった。

 何が起きているのか理解できないまま、ヴァールは現場に駆けつけ、そして目の当たりにした。

 炎に包まれる集落と飛び交う銃声。男、女。子ども、老人。兵士、村人。何の区別もなく、攻撃された者たちの骸が、集められることもなく絶命したその場所に横たえられていた。

 戦場よりも死に満ちた光景だと思った。

 その中心に彼らがいた。

 しかしヴァールが知っている彼らではなかった。夢や希望を語ったあの顔つきは失われていた。ヴァールに向けた眼差しに、輝きは微塵も見られなかった。




「まだ見ぬ戦場への不安と緊張から、狂ってしまう兵士がいる。常ではないが、珍しくもない。そしてやむを得ず仲間を射殺することも、稀に在る。軍人としては普通のことだ。それなのに、どうしてか俺には大きな傷が残ってしまった」

 そう話しながらどこに目を向けることもできず、ただただ手のひらを見つめるだけだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ