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第3話


記憶が戻って2日目。


ぐっすり眠ったおかげか身体も軽い。魔力も回復しているみたいだ。


今日も天気が良くて、外からチュンチュンと小鳥の鳴き声が聞こえる。



「おはよぉ~、おねえちゃん・・・」



目をごしごしこすりあくびをしながら妹のフィオナが起きて挨拶をしてきた。



「おはよう、フィオナ。今日もいい天気だよ」


「ほんとだぁ~」



寝ぼけながら嬉しそうに外を見るフィオナに微笑ましくなる。

きっと水やりのお手伝いが出来るって思っているんだろうな。


服を着替えて、まずは家の洗浄からしよう。

昨日大掃除したから今日はほとんど魔力を使わずにすむと思うんだよね。



「フィオナ、まずは家の掃除からするよ。

 昨日大掃除をしたからほとんど汚れていないし埃も少ないだろうから、多分魔力をそんなに使わないと思うんだよね。

 それじゃ、家の中の埃とか汚れがきれいになるイメージで、洗浄魔法!」



居間で家の中に洗浄魔法をかけていく。

フィオナにも練習をさせたいから私たちの寝室に洗浄魔法をはかけないとイメージしながらやったから、そこだけ残っているはずだ。


うん、やっぱりほとんど魔力を使わずに済んだみたい。

これならフィオナが寝室に洗浄魔法をかけても疲れないでしょ。



「それじゃあ、今みたいに寝室に洗浄魔法をかけてみようか。

 昨日ごっそり汚れをなくしたから、ほとんど魔力を使わないはずだよ。

 埃とか汚れがきれいになるイメージでやってみてごらん」


「ほこりとよごれがきれいになるように・・・、洗浄魔法!」



うん、窓のところにうっすら積もっていた砂埃がきれいに無くなっている。

成功だね。



「やっぱりフィオナはすごいね、昨日も今日も一度見ただけなのにちゃんと成功している。

 このままやり続ければ私よりも伸びていきそうだね!」


「ほんとうに?!私もっともっと頑張るね!!」



褒められて満面の笑みで喜ぶ姿にかわいいなぁとこっちまで笑顔になってしまう。




†・・・†


さて、家の中もきれいになってすがすがしい気分で朝食の準備を始める。

といっても、パンと昨日の晩御飯のスープの残りだけなんだけど。


栄養面を考えるともうちょっと何か欲しいところだよね。

卵も食べたいし、ベーコンとかお肉も欲しい。


この世界ではちょっと高いけど卵も牛乳も市場で買えるし、お肉の種類も豊富だ。

前世であったような牛・豚・鶏の他に、魔物の肉も売っている。


ファンタジーあるあるのオーク肉とかね。

ウサギっぽい魔物のお肉もあるし高級肉ではドラゴンとかも存在するらしい。

高級すぎてみたこともないし、市場に売られることってあるのかな?



とにかく、これから先魔法を上達させて自分たちで魔物を狩れるようになれば買わなくてもお肉が食べられるようになるかもしれない。

私たちの健康向上と、少しでもお母さんに食べさせてあげたいし。


今ではスープ一杯食べるのも辛い状態だ。

パンはそのままだと飲み込みづらいみたいでスープの中に小さく千切ってふやかしたものを食べさせている。

長時間体を起こしているのも無理で、スプーンを持つ手も力が入りにくいみたい。


もうだいぶ末期だよ・・・。

何の病気なのかわからないけど、朝呼吸している姿を見るとホッとしてしまう。

まだ生きててくれたって。



コンコンコン



「お母さん、朝ごはん持ってきたよ」



そっとドアを開けてお母さんの寝室に入る。

中に入ると、うっすら笑顔を浮かべようとしている母の姿が目に入った。



「おはよう、お母さん。今日の調子はどうかな?」


「・・お・・はよ・・う、今日・・は、少し・・楽・・かな?」



途切れ途切れだけれど、何とか返事を返してくれる。

確かに、昨日に比べたら、多少顔色がマシな気がする。


それでもだいぶ青白いけど。



「今日は昨日よりも食べられるといいね、少しでも多く食べて栄養をとらないとね」


「あり・・がとう・・・、今日も、美味し・・そうね」



味覚や嗅覚には異常がないみたいだから、美味しいって言って食べてくれる。

だけどこんな状態で胃が小さくなっているのか、小さめの器に入れているのにも関わらず食べるのにだいぶ時間がかかるし、しかも後半は食べるのが苦しそうだ。



食べ始めて30分・・・、40分くらいかな?



「あり・・がと・・う、もう、ご馳走‥様」


「そっか、でも昨日よりは食べられたね、よかった」



片手で持てれるくらいの大きさの器に、スプーン4~5杯分の量が残っている。


昨日は半分以上残っていたからだいぶマシだ。



「お母さん、きのうよりも食べられてよかった。お昼もおいしいのお姉ちゃんと作るからね!」



朝食の片づけと朝の畑の水やりをを終わらせて帰ってきたフィオナもお母さんのそばで嬉しそうにしている。

ご飯の時間くらいしか起きている姿を見られないようになったから、朝の作業が終わったらフィオナもお母さんの部屋で一緒にいるようになった。


本当は抱き着きたいだろうに、お母さんの隣に横になって、腕に軽く手を置いて額を腕に押してけている。

時々すりすりしているのが今できる最小限の甘え方。


まだ6歳だもん、さみしいよね。



「それじゃあ、お母さん。今日はギルドの方に行ってからお買い物して、お昼ごろには帰ってくるから。ゆっくり休んでてね」


「そう、気を・・付けて、行ってくる・・のよ?」


「うん、ありがとう。気を付けるね」


「ねぇ、お姉ちゃん。今日は私もついて行っていい?」


「そうだね、フィオナももうすぐ7歳だし、ギルドの中に入るくらいなら大丈夫だから一緒に行こうか」


「うん、お姉ちゃんありがとう!」


「二人・・とも、行って・・らっしゃい」


「「行ってきます!」」




†・・・†


お母さんの食べた食器をちゃちゃっと洗って、やってまいりました冒険者ギルト!


今まで忙しくてなかなか来ることが出来なかったから、すっごく久しぶりだ。

2~3ヵ月ぶり?


各ギルドの建物は大きくて、町の中心周辺に建っている。

大体前世の学校の体育館くらい?


書類だとか素材だといろいろ保管しなくちゃいけない物も多いいだろうし、地下もあるらしい。

冒険者ギルドでは地下は魔物の解体作業をしたり、たまに魔法や武器の講習会とかもやっているとか。


駆け出しにはうれしいやつだね。 


それで、今日の私の目的は素材の採取や町の中でのお仕事がないかの確認。

前世の知識のおかげで色々生活に便利な魔法の使い方が出来そうなんだもん。

やらないと損だよね。



「ステラお姉ちゃん、いいのありそう?」


「う~ん、そうだねぇ、今日は町の中での仕事はないみたい。

 採取の方は・・・、ミディ草の採取が比較的簡単かつ短時間でできるかな?」


「ミディ草?」


「傷薬の材料になる草だよ。葉っぱがギザギザで、柔らかいの。

 だから、茎のすぐそばで切った後、すぐに濡れた布とかで覆ってあげないと、萎びれて薬草として品質がかなり落ちちゃうから気を付けないといけないんだよ」


「へ~、そうなんだ。根っこごととっちゃダメなの?」


「根っごととるものもあるけど、これは葉っぱだけなの。

 根っこごととる薬草も、見つけたからといって全部ごっそりとっちゃダメ。全部取っちゃったらもうそこに生えてこなくなるでしょ?」


「そうだね、無くなっちゃったらもう採れなくなるもんね」


「そういうこと、これから沢山教えてあげるから頑張って覚えていこうね」


「うん!」



にぱぁ~っと笑顔でうなずくフィオナを撫で繰り回したのは言うまでもない。




†・・・†


冒険者ギルドの受付でミディ草採取を受注した後、町の門までやってきた。


「さて、フィオナ。今から私はミディ草の採取に行ってきます。でも、フィオナは門の外に出ることが出来ません。どうしてだかわかるかな?」


「えっと、門の外に出るには『みぶんしょう』になるものを見せないといけないんだよね?

 成人した大人と一緒だったら大丈夫だけど、そうじゃないなら『ギルドのとうろくしょう』を門番さんに見せて外に出るりゆうを言わないといけない。

 フィオナはまだかりとうろくできる年じゃなくて、ギルドに入っていないからみぶんしょうを持っていない。だから外に出られません!」



最後のセリフを元気いっぱいで答えるフィオナ。

あってる?あってる?とキラキラした目で見てくるなんて、萌えコロス気かっ!



「正解。なので、今からフィオナがすることは家に帰って待っているか、ここで邪魔にならないところで勉強しながら待っているかになります」


「ここで待ってる!」


「それじゃあ、待っている間これを見て覚えていようか。

 文章をスラスラ読めれるようになるここと、文字を書いて文字を覚えること。

 文字は石とか枝とかを使って地面に書いて覚えていないところを書いていてね。

 場所は・・・、あそこの大きな木の下でやろうか。あそこだったら木の陰になって太陽の日差しにずっと当たっていることにはならないし。」


「うん、わかった!頑張る!!」


冒険者ギルドの、誰でも閲覧できる棚に置いてある植物図鑑に載っているミディ草の特徴を紙に書いて復習していたのだ。

紙に書いていればいつでも見直せるし、フィオナの勉強もできるからね。

紙が簡単に手に入る世界でよかったよ。



それにしても、前世の記憶ではこんな小さい子を一人で残していくなんて考えられないけど、この世界では5歳を超えたら一人でお留守番は当たり前。掃除や皿洗いなんかの仕事を任せたりもする。

もっと経済的に厳しいところは朝から仕事に出かけて日が沈む前に帰ってきたりとかもあるらしい。

ご飯の支度だけはきちんとして、昼ご飯や他の仕事は自分でできるようにしておくのだ。


向こうの世界じゃありえない状態だね。

っていうか、5歳の子供にそこまでの事ができる方が珍しいよ。


うちはお母さんがあんな状態になったから私が必死に仕込んだんだよね。皿洗いも掃除も。

そうしないと私がお金を稼ぎに行けないから。


といっても、まだ仮登録中の子供に毎日の生活費を賄えるような金額を稼げないんだけど。

私が稼いだ分と、お母さんの貯金を切り崩した分でなんとか節約しながらの生活をしてきた。

お母さんに貯金があったから何とかなっているけど、もし何も持っていなかったら今頃母子ともに死んでいただろうね。


そのなんとかやっている中、あのくそ父はお金をむしり取っていくだから腹が立ってしょうがない。

あれだけガリガリにやつれて青白い顔色で呼吸も浅い人間になんであんな態度でいられるのか。


ひとまず、この件は置いておこう。今考えてもどうにもならないし。イライラするばっかだしっ。



「おっ、いい感じの枝発見!はいフィオナ、文字の練習をする時はこれを使うといいよ。

 あとは、のどが乾いたら水魔法で水を出して飲むようにしようか。ん~っと、水球!」



水魔法というよりもこれの方がイメージしやすいかなと思いそのまんま水球と名付ける。

もう『魔法』すらつけてないな。


小さめの水の球を2つ出して、そのうちの一つををパクっと食べる。

うん、安心して飲むことのできるおいしい飲み水をイメージしたおかげかすごくおいしい。

何となく甘いような気もするのは気のせいかな?



「フィオナも、口を開けてごらん?」


「あ~ん、ごっくん。おいしい!」


「お水を飲むときはこんな感じで水魔法で水の球を出して飲もうか。イメージは安心して飲むことのできるおいしいお水って思いながらやってごらん?」


「えっと、お姉ちゃんが出したみたいなおいしいお水・・・、水球!」



小さめの水の球が2つ空中に出現した。

出来たことがうれしかったのか満面の笑みだ。



「やった、ちゃんとできたよ!・・・うん、ちゃんとおいしい!お姉ちゃんのお水みたいにちょびっと甘く感じるよ!!」


「おぉ~、一つ貰うね。・・うん、美味しい。これなら大丈夫だね。じゃあ、他のところに行かずにここで待っていること。お手洗いに行きたくなったら・・・、門の詰め所まで行って借りようか。終わったらまたここに戻ってくる。出来るかな?」


「うん、ちゃんとできるよ!」


「それじゃあ、門からでも見える草原で採取するから、そうだなぁ~、往復と採取で1時間半くらいしたら戻ってくるからね。戻ってきたらギルドで受注完了届けと報酬を貰ったら市場に買い出しだよ。」


「わかった、フィオナ頑張るから、ステラお姉ちゃんも頑張ってね!気を付けていってらっしゃい!」


「ありがとう、行ってくるね」



笑顔で見送ってくれるフィオナを残して、さて、私も頑張ろう!



採取までいけませんでした(^^;)


父親は当分先で登場しますが、現段階でもクズっぷりがひどいです。




R3.05.17

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