歌舞伎町 我が故郷へ
「――といっても」
正月でも開いている衣料品の店はある。だが、この世界では何が流行っているのか不明だ。それに今私が着用している、そのまま身と共に転移した前世の寝巻き兼普段着、無地の黒シャツにスカートは個人的に気に入っている。それにこの世界にも同じような服装をした人が何人も通りかかっていることから、突出したファッションではないということは感じ取れる。
右も左もわからない新天地でさらに何か足を動かす体力はほとんど残っていない。人通りも多くなった新宿で、私はその波に飲まれるしかなかった。
何分ほど歩いただろうか。厳かな雰囲気を微かに残した新宿とは反対のやけに忙しい街にたどり着く。日は既に暮れており、街灯や店の光が主となって、この都会の街を造っていた。歩く人々の人柄もガラリと変わり、どこか異様な雰囲気が滲んでいる街だ。そして、何よりも酒臭い。
私は考える頭もなかった。だから、何の躊躇いもなく、後に判ることになる〈スカウト通り〉に首を突っ込むことになったのだろう。
そして、ここで案の定スカウトされてしまう。
このことが、私の東京生活の指針を大きく狂わせる出来事になる。
このことが、私の東京生活の大きな娯楽となる。
「――――――――――ホスト、どうですか」
私は何も判らないまま、彼に手を引かれた。
その地点から二分位歩いた場所――そしてそれは古代王宮の様なビルだった。
エレベーターで三階まで上った先に現れたのは煌びやかな装飾が施された一つのお店。
この場所で、私は――。
「「「「「――ようこそ。『DEATH HEART SPECIAL HOST』へ!」」」」」
ホスト漬け生活が、今始まる――。