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冬と雪
『アレ』から一年後の冬のある日の夜の事。
霧元肇は、暖房の効いた自分の部屋で、大多数の高校三年生たちがそうであるように、受験勉強の追い込みをしていた。
買ってきた問題集の進みはあまり良くなく、時間ももうすぐ夜中の二時ということもあってか、次第に頭もぼんやりしてきた。
高校三年の冬は、聞いていた通り、あまり楽しめそうになかった。
ふと窓の外を見ると、雪がしんしんと降っていた。
受験なんてものが無ければ、暗闇に舞う白銀のそれらを楽しむことも出来たのだろうが。
「はぁ」
知らず、肇はため息をついていた。
勉強が嫌になったからか。
解けない問題に嫌気がさしたのか。
あぁ、きっと、どちらも違うのだろう。
冬と雪。
どうしても頭をよぎるのは、大切な友と走り抜けた、あの事件の事だった。
そろそろ。
そう、そろそろ一度ちゃんと思い返してみるべきなのかもしれない。
『骨』と『願い』の戦いの日々を。
自分が自分となった、あの冬の出来事を。