3話
「あの...大丈夫ですか..?」
魂が抜けたようにぼーっとしている俺に声をかけてきた。その声の大きさは辛うじて聞こえるくらいに小さい。
「あ、はい。大丈夫です!ええと、パートナーさんですよね?」
「はい...」
2人の間に沈黙が流れる。
"なんだこれ帰りたい。"と思いつつも、現実はそうは行かないので、なんとか話をしようとした。
「あの、とりあえず家に行きません?」
「け、けだもの...近寄らないでください..!!」
彼女は小さく後ずさりして、俺から遠ざかった。
"そういう意味じゃねーよ!!第一お前みたいな地味子タイプじゃねーし!!"
と言ってやりたかったが、本人を前に流石に言えなかった。
「違いますよ、変な意味はないです!ただ同じ部屋なので、寮に戻ろうってだけです!」
「そ、そうでしたか...すみません!」
彼女も納得してくれたみたいで、少しずつ、また近寄ってきてくれた。あやうく変態認定されるところだったので、ほっとして息をこぼす。
「あ、俺友達と待ち合わせしてるんでその人も一緒でも大丈夫ですか?」
「え...はい....」
俺は義継と待ち合わせしていたことを思い出した。これ以上人が増えるのが嫌なのか、ただ単純に俺が嫌いなのか、彼女は心底嫌そうな顔をしながら返事をした。
「お、いたいた!聡太ー!」
義継は手を大きく振って、自分の場所を伝える。
「なんか久しく感じるな!何年ぶりだ!?」
「30分くらいしか経ってねーぞ」
こんな他愛も無い会話ができることに幸福を感じることが今までにあっただろうか。彼女との会話とは180°違う緊張感のない会話に、俺は胸の内で泣きながら、義継に感謝した。
「君が聡太くん?よろしくね〜〜」
いきなり義継の後ろから飛び出してきた。
肌は色白で顔はとても整っている。それだけでなく、スタイルまで引き締まっている。モデルをやってても不思議ではないだろう。
「あ、はい!!」
ここまで美人な女子とは今まで関わったことがなかったので緊張で思考がまとまらない。
「へぇ〜。義継くんの言った通りの子
だね〜」
「ええと、あなたは誰なんですか?」
小悪魔のような笑みを零しながら、俺の顔をじっと見つめる。
「私?私は春野あかり。義継くんのパートナーだよ!!」
「よし、義継ちょっと来い。」
強引に義継の腕を引っ張り、彼女たちに声が聞こえない所まで離れる。
「おい!あんな美人がパートナーとは聞いてないぞ!」
「あかりさん美人だよなあ。まじでパートナーになれて良かったわ!」
義継は頬を赤く染め、口角を上げ、神に礼を言うように手を組んで空を見上げる。俺はイラついて軽く殴り続けた。
「もう!私たちだけ除け者にしないでよ〜」
いつの間にか、離れていた2人が近づいて来ていた。殴る手を隠し、彼女たちの方へ振り向く。
「ごめん!ちょっとこいつに用があったもんで。」
「ふーん。まあ良いや!それより聡太くんのパートナー紹介してよ!」
急にくる無茶振りに身をたじろぐ。何せ、彼女とは自己紹介どころか、名前の対談すらしていない。なので、唯一知っている情報を語ることにした。
「この子が俺のパートナーです。」
恥ずかしくなり下を向いて自分のパートナーを指差した。質問をした春野さんはこてんと小さく首を傾げた。当然だ。これを紹介とは言わない。
「パートナーの桜井花奈です!よろしくお願いします!」
驚いた。彼女は俺を庇うかのように大きな声で自己紹介をした。露呈してる口と鼻だけでも、彼女の顔が強張っているのが分かった。
「そっかそっか!よろしくね!花奈ちゃん!」
「よろしくお願いします...」
先の発言とは打って変わって声は元の小さすぎる声量に戻っている。
とりあえず4人自己紹介を終わらすと、周りにはほとんど学生はおらず、俺たちも帰ることにした。
まだまだここから話は盛り上がってくので、温かい目で見続けてくださいね!^_^