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プロローグ 零時間前
プロローグ 零時間前
夕暮れの太陽が世界を紅に染め上げていた。吹きすさぶ海風は潮の香りと共に冷涼な空気を陸へと運び、男が身につけるローブを靡かせていた。
「これで全てが解決する。ご苦労だったな」
その男が手荷物ものは身に付ける漆黒の衣服とは対照的な、銀に光る装飾銃だった。
「テメェ、何をするつもりだ」
少年は、がたがたに震える足をむち打ち男とにらみつける。その銃口が目指す先には、既に意識を失い地に臥す少女。少年が守ろうとした少女だった。
「お前は動くな」
男の口調は懇願ではなく命令だった。そして、その言葉は少年の心の芯に深く突き刺さる。
「結局、あんたの目的はこれだったわけか」
「そういうことだ」
男の指が、その引き金に添えられた指が次第に引き絞られていく。
少年はまぶたを閉ざし、胸を押さえ、走り出した。
硬い何かを殴りつける乾いた銃声と共に少年は全ての力を失い倒れ込んだ。
「馬鹿野郎が!」
男は、赤に染まり上がっていく彼を見下ろし、ただその一言を呟いた。