事故多発地帯で起きたほん怖
車の往来が激しいこの場所は事故多発地帯で有名だ。
ということは当然…。そう、夜になると出るのだ。
何がって?
霊だよ。霊。
そんなの嘘に決まってる〜〜なんていう奴、なら行って見ろよ。間違いなく出るぜ!
かくいう僕は行ったことはない。
そんな怖いとこ何好き好んで行くかよ。
行かねーよ。
ならホントとか嘘かわかんないだろって?じゃあ行ってやるよ。お前らも来いよな。えっ、何ビビってるんだよ。お前らだってこう言うの信じてないだろ?
僕は友達4人を連れて愛知県某市のとある場所までやってきた。
ここは昔から事故が耐えないと噂の多発地帯だ。
信号はある。踏切だってあるのに、何故か正面衝突や、追突事故が絶えない。
学生も車に轢かれて亡くなっている。
車の往来も激しいこの場所、夜になると人通りも少なくなり、車が時々通るくらいだ。
それがいつからか不可解なことが起きるようになる。
それはーー。
深夜1時過ぎに1人で立っている男性がいる。こんな所で待ち合わせなんておかしい。しかもこの時間…で声をかけた警察官が近付くと男性はフッと消えてしまったのだ。そんな話を聞いていたので、僕等も同じ時間にここに集合する事にした。時間は午前1時。
まだ出る時間ではない。が、友達の1人がなかなかやって来ない。逃げたか?
「なぁ、あいつどうしたよ。」
「ああ、あいつんとこ門限が厳しすぎて出られないらしいよ。なんでも前に深夜に外出して遊んでたのバレてから親が怒っちまってな、家の鍵取り上げられたらしい。」
「なんだよ…ったく、こんな楽しいことできないなんてつまんないよな。」
「はぁ?何が楽しくて男ばっかでここに来なきゃなんないんだよ。それこそ楽しくねーよ。」「まっ、そう言うなって。で、問題の現場があそこだ。」そう言って僕は事故現場を指差した。
友達はみんなでそちらに目がいったが、僕は急に後ろが寒くなった気がしてならなかった。そう、まるで冷凍庫に放り込まれたかのようだ。
と、その時友達の1人がこう呟いた。
「あれ?いたよ。」
そう言う友達の目線の先には確かに男が立っていた。服装は普通だ。靴も履いている。
だが問題は透けているかってことだ。これは近づかないと見えない。誰かが見える距離まで行ってビデオ撮影して来なくてはならないのだ。
「お前行けよ!」「やだよ、お前こそ行けよ。」「お前知りたくないのか?知りたかったのはお前だろ?なら行けよ。」「ったくなんで俺が…。」
ブツブツ言いながら1人の友達がビデオカメラ片手にゆっくりと男に近づいて行った。
何気に景色を取りながら風を装い近付くが、男は微動だにしない。まるでこちらの事を無視しているかのようだ。
友達は黙って周りの景色を撮りながら男も写した。そして足早に戻って来る。その時そいつは気付いてなかったんだ。そいつのすぐ後ろに男がピタッとくっついている事を。僕らは皆びっくりして友達に叫んだ。
「お前のすぐ後ろに男がいる!」
それを聞いた友達は思わず振り返ってしまった。
録画をしながらだったので、画面も向いた方に動いた。そこにはさっきの男性が…。
慌てた友達は「ひゃ〜!」と叫びながらその場で転んでしまった。そこは道路の真ん中だったが、車が一台モースピードで走って来るのに気づくのが遅れた。
ヤバイ!
そう思った。
僕は思わず目をつぶったが、激しい衝撃音が鳴り響き、やばいかもと思いながらゆっくりと目を開けた。
そこにはガードレールに激突して大破した車が一台、白い煙を出して止まっていた。
友達は…いない。
一体どこへ?
友達の1人がそいつの携帯に電話をかけてみることに。
呼び出し音が鳴り響く。
何処だ?
音のする方向へ歩いて行くと事故車の車の下から聞こえて来るではないか。
じゃあ、友達は…。
皆固まってしまった。
「救、救急車!」
「お、おい!大丈夫か?」
車の下敷きになっているであろう友達に声をかけるも何の反応もない。まさか…。皆んな顔が真っ青になっている。
運転手は何とか救い出すことができたが、痛みを訴えている。どこかぶつけたのかもしれない。でも、それよりも友人のことが気になる。
暫くして救急車と、レスキュー隊がやって来た。
テキパキと動く彼らの邪魔をしないように少し離れた場所で様子を伺っていた。
車を吊り上げ車体の下敷きになっているはずの友人は…。
息がなかった。
そう、…亡くなっていたのだ。
ついさっきまで一緒にいた僕らは何故こんな時間にいたのかを聞かれた。
その間にパトカーもやって来た。
物々しい雰囲気の中、遺体は運ばれていく。
運転手は救急車に乗せられてどこかに行った。きっと警察病院なのだろう。
僕らは簡単に事情聴取を取られた。
遊びでここに来たこと。霊がいた事などを話して聞かせ、もしかしたら亡くなった奴が持っていたビデオカメラに何か写っているのかもしれないと話して聞かせた。
刑事達は半信半疑ながらも信じてくれた。何故信じてくれたかなんてこの時は知る由もなかったのだが。
しばらく待たされたが、刑事が慌てて僕らがある部屋に飛び込んで来た。
「これ…預かってもいいか?」「それはいいと思いますが、何か映ってたんですか?映ってたんですね?見せて下さい。」「それは無理だ。証拠書類と一緒に保管してある。科捜研で調べてもらわないとな。」「科捜研って…テレビみたいじゃん。」「おお、そうだな。テレビでれたりするのかも知れないし…。服装いいか?」「そんなこと気にする場合か。亡くなったんだぞ?!気を使えよ。」「わりい、わりい。気をつけるわ。」
暫くすると足音が聞こえ、誰かが近くにやって来たのを感じ取った僕等は皆音がする方へ顔を向けた。てっきり刑事さんかと思ったが、足音が違う。
そこに現れたのはあの男性だった。
事故現場にいたはずの男性。
亡くなった友人にへばりついてたやつだ。
皆固まり、逃げ出そうとするも腰が抜けて歩けない奴らばかり。
男は誰かを探しているようだった。その誰かはわからないが、まさか亡くなったあいつのことじゃないよな?などと考えながら様子を伺っていた。
暫くするとニヤリと笑いながら消えていった…。
何だったんだ?一体…。
刑事達がやってきた。もう聞くことはないそうで、自宅に帰ることを許された。でも、あいつの親にどう説明したら良いのか…頭を抱えた。
すると刑事が1人やってきた。母親を連れてきたようだ。
まさか息子がこんな時間に出歩いていたなんて気付かなかったと母親は言っていたっけ。
僕らはどう謝るべきか悩んだ。
あれこれ考えているうちに母親は僕らの前の道を通っていった。
まるで存在を無視したかのような行動にイラっとした。
「なんか俺ら無視されてない?」「だよな。そんな感じだった。」「でもよ、なんて声かけたら良いのかわからなかったから正直ホッとしたぜ。」「お前もか?俺もだ。」「でもよー、分からないのはさっきの男だよな〜?何でこの病院までついてきたんだ?」「そりゃ…確認したかったんじゃねーの?死んだかどうか…。」「そんなの現場にいりゃわかるって。」「確かに〜。じゃあ、現場にいたやつと違うやつってことか?」「だろうね。じゃないとつじつまが合わない。」
確かに男は現れた。ここに。
そして何かを見て笑って消えた。
何を見たんだ?
わからないが、友人が1人巻き込まれたことは確かだ。夜の外出はもうやめようという話が誰からとも無く発せられ、みんなの合意のもと夜遅くの集まりは無しとすることになった。
後日刑事が何故僕らが言った事を信じてくれる気になったかを教えてくれた。前にも僕らのように興味本位で噂の男性を見に来たらしい。その時は死者はなく、だが騒いだ事もあって注意をした。その時1人の男の子が言ったのだ。あそこに男性が立っている。
だが、そんな場所には誰もたってなかった。
ただ、防犯カメラの映像には何かが写っていた。そう、男性らしき影が。
それからはその時間になるとマニアが現れ次々と補導する事になる。なので刑事達も今回の事はまたかと思うところがあったらしい。だが、死者が出るとは思っていなかったようだが…。
あの現場にはもう足を踏み入れることはないが、今もあの男はあの場所で誰かが来るのを待っているのだろうか?
謎は謎のままだ。