第7話 いざ町へ
今度は町で情報を集めるようです。
「す…凄い」
「一体あれは?」
商人と女性は今の状況を理解することができずにいた。町に向かう途中に盗賊に襲撃され、殺されてしまうところにあの空飛ぶ箱が飛んできたのだ。箱は二人を襲った盗賊を一瞬に倒し空を回っている。すると箱は荷馬車の方向に向かって来た。
「こっちに来る!」
「まさか俺達も殺すつもりなのか!?」
二人は恐怖を感じた。自分達もあの盗賊達と同じようになってしまうのではないかと震えて動けなくなってしまった。箱は二人の頭上を通り過ぎ、草原のひらけた場所にゆっくりと降りてきた。女性は箱を見た。よく見ると人が乗っている。
「親方、あの箱に人が乗っています」
「何ぃ?本当か!?」
「本当です!」
箱そのまま草原に着地する。空洞になっている部分から二人の男が乗っているのが見える。
「周囲敵影無し、着陸するぞ」
「了解」
スティーブが言うと優は89式改を持ちヒューイから飛び降り、周囲を警戒しながら荷馬車に近付いていった。荷馬車には二人の男女が見ていた。優は銃を下げると二人に問い掛けた。
「大丈夫ですか?」
優が言うと二人は我に帰った。
「ああ、だ、大丈夫だ。お掛けで助かったよ」
「大丈夫ですね。そちらの女性の方お怪我は?」
「私も大丈夫です…」
「あ、あんたはナニ者だ?」
「私は自衛隊特殊作戦群の伊藤優と言います」
「とく?何だそれ?」
しまった。優は今は異世界にいることを忘れてしまっていた。
「いや、ただの通りすがりの旅人です…」
とりあえず旅人に訂正した。まあ少し無理がある気がするが。商人はそうなのかと納得した表情になる。商人は優を上から下までじっくりと見る。何だろうかと優は思った。
「しかし…変わった防具を身に付けているなあんた?」
「この服がですか?」
どうやら優の戦闘服に興味を抱いたようだ。陸上自衛隊が着用する戦闘服は日本の四季に合わせたデザインを採用している。その他の装備は日本が独自に開発・改良を重ねた優れものだ。自衛隊が世界最強だと言われる要因の一つとも言われている。
(諸説があるが…)
「親方!助けてくださった方に失礼ですよ!!」
女性が注意すると親方と呼ばれた商人はビクッとするとうつむいた。
「すまん…。何せ商売をしていると色々気になってな~。優と言ったか?気を悪くしないでくれ」
「いえ、自分は大丈夫ですよ。えっと名前はまだ聞いていませんでしたね?」
「ウォーリー・バルザーだ。こっちは見習い商人のマーリ・モゥ」
「マーリ・モゥです。さっきは助けて下さってありがとございます」
荷台にいるマーリがお辞儀をしながら感謝した。優少し微笑む。その時荷馬車の裏から一人の男が出てきた。優は咄嗟に89式改を向ける。そこには二足歩行する狼がいた。
「動くな!」
優が怒鳴ると狼は体を震わせその場にしりもちをついた。優が銃を向けながら狼に近付く。体は人間と同じ体つきらしい。だが頭は狼で尻尾もある。
「頼むよ…殺さないで」
驚いたこの狼は人語を話すことが出来るようだ。しかも盗賊達と同じ服を着ている。さすが異世界と優は心に思った。優は商人に聞いてみることにした。
「ウォーリーさん、この狼は何ですか?」
「獣人を知らないのかあんた?この世界じゃ人間と同じ生活をしている連中だ」
「獣人?これが…」
優はまじまじと狼獣人を見た。確か高校時代の友人が大のケモノ好きでもしこの場にいれば抱きついていただろう。それはさておき。
「殺さないよ」
「本当か…嘘じゃないよな?」
体は優より少し大きいが子犬のように震えている。優はとりあえず狼を拘束することにした。そこにスティーブがM37イサカをもっ走って来た。
「優!もう大丈夫そうか?」
「周囲は大丈夫だ。それと生存者が三人いた」
「三人?」
優が下を指差すとそこには狼がいた。
「ワォ、クレイジーモンスターか?こいつ」
「いや、獣人と呼ばれている人種だそうだ。アメリカでファーリファンダムと同じみたい」
「ああ、動物好きが着る着ぐるみか」
似ているといえば似ているか。違うと言えばこっちは生きている。異世界だからこちらの人間は当たり前なのだ。まあ転生した優達には無理もない。
「スティーブ、とりあえず"彼"を拘束するから何かあるかい?」
するとスティーブが腰につけたバックパックから結束バンドを取り出した。
「バンド?これでか?」
「アメリカでは簡易式の手錠代わりに使われている。結構頑丈だぞ」
優はスティーブから結束バンドを受けとると狼の手首を縛り始めた。狼は何事かと慌て、尻尾をパタパタとさせた。
「ひ!何すんだよ!?」
優は暴れる狼を押さえ付け、今度は足首にも結束バンドを縛る。
「もしかしたら抵抗する可能性もあるからな。悪く思わないでくれ」
「ふざけるなよ!放しやがれ!!」
さっきまでの謙虚さはどこに行ったのか狼は暴れだした。スティーブが咄嗟にイサカの銃床で狼の後頭部を殴る。狼はそのまま気絶した。
「スティーブ…。それはやりすぎじゃ?」
「イラクでテロリストを拘束する時に抵抗したらこうやって気絶させたぞ?」
「まあ、死ななければいいか」
優はウォーリーの方を向く。
「ウォーリーさん、これからどうされますか?」
ウォーリーは少し苦笑いの表情で言った。
「このまま町へ歩いて行くよ。ここから4時間ぐらいだから」
「4時間も?また盗賊達に襲われるかもしれませんよ」
ウォーリーは首を振る。
「あんたらに世話になるわけには行かないよ。俺達は大丈夫だ」
ウォーリーは大丈夫だというがこのまま歩いていくと夜になってしまう。ましてや護衛や馬がなければなおさら危険だ。血に飢えた野獣や盗賊達が再び二人を襲うかもしれない。優はウォーリーに提案をしてみた。
「ウォーリーさん、どうでしょう私達が乗ってきた乗り物で行きませんか?」
「乗り物?まさかあの箱にか?」
ウォーリーがヒューイを指差した。箱…この二人にはそう見えるのか。ヘリコプターだけどね。
「残った荷物も運べますし、すぐに町に着きますよどうですか?」
「う~ん…」
「親方、ここは優さん達にお願いして連れていって貰いましょう」
「マーリ?」
突然の答えにウォーリーは戸惑った。
「しかし…」
「親方、商売は命があってこそ商売なんです。親方は前に私に言ったのを忘れましたか?」
マーリの言葉にウォーリーは負けたのか苦笑いをしながら言った。
「…分かった優、頼んでもいいかな?」
「ええ、もちろん。スティーブいいかい?」
「OK、問題はないぞ!」
こうして優達は商人を町へと送り届けることになったのだ。




