第5話 商人と盗賊
カトレア草原 商用街道。
商用街道を3台の荷馬車が進んでいた。荷馬車は大量の生活物資を載せて街を目指している。その周りを数十人の傭兵が平行して歩いている。彼らはこの荷馬車の商人に雇われており、街に着くまでの護衛だった。先頭の荷馬車には彼らを雇った商人の親方が乗っていた。
「ふう、まったく盗賊か何か知らないが酷い出費だよ。これじゃ元の半分だな…。」
馬を操りながら太った親方は溜め息混じりの愚痴を言った。それを後ろの荷馬車の荷台に乗っている1人の女性が言った。女性は荷物の注文が書かれた羊皮紙の束を一枚ずつ確認している。
「親方、仕方ありませんよ命があっての商売ですよ。」
「そう言うがな…この街道は安全だがかなり時間がかかってしまうぞ。」
「大丈夫ですよ。時間のロスはバロシュードで取り返せば良いじゃないですか。」
女性はそう言うと親方はそうだなと返す。カトレア草原でもこの街道はよく使用される道の一つだ。この道は交流都市バロシュードまで行くことが出来る。最近までは別の街道を利用していたが盗賊団が現れたために商人達は遠回りになるが安全な商用街道を選んだのだ。ただ時間とお金がかかるが。
「しかしこれだけの傭兵を雇ったが何も起きないじゃないか。無駄金…。」
「ギャアアア!」
親方が言いかけたとき叫び声が聞こえた。荷台にいる女性は裏にいる荷馬車を確認するとなんと最後尾の荷馬車が激しく炎上しているではないか。
「親方!一番後ろの荷馬車が燃えています。」
「何だと!?傭兵は何をやっているんだ!」
「盗賊団だー!」
傭兵の一人が大声で言った。親方は傭兵達が見ている方向を見た。そこには黒い軽装鎧を身にまとった盗賊が大勢で襲ってきた。すると傭兵の一人が先頭の荷馬車に急いで走って来た。男の雇った傭兵達の指揮官で息を切らしながら親方に言った。
「駄目だ!今すぐ逃げろ数が多すぎる!」
「逃げろってどこにだ!?俺はお前のことを信用して高い報酬を出したんだぞ!それだけの働きをしろ!」
「だから、あいつらはやば…。」
言いかけた指揮官の鎧の胸にクロスボウの矢が突き刺さり吐血をして死んでしまった。荷台の女性が悲鳴を上げた。親方はこの場所からすぐに逃げようと馬に手綱を叩いた。だが馬の頭に弓矢が次々と命中してしまい動かなくなった。目の前には一人の狼獣人の男がクロスボウを構えて親方を狙っている。他の盗賊達と同じ黒い軽装鎧を着ている。
「死にたくなかったら無駄なあがきはしないことだな。商人さんよ?」
狼はニタニタしながら言った。その間に商隊を守っていた傭兵達は倒されたらしく、先頭の荷馬車の周りには盗賊が囲み逃がさないようにしていた。狼の後ろから無精髭を生やした男が出てきた。
「ぐへへ、俺達ブラックシーフから逃げることは出来ねぇぞ。」
「ブラックシーフだと!?」
商人はその名を聞いた瞬間恐怖を感じた。無理もないブラックシーフはカトレア草原によく出没する盗賊団だ。残忍で冷酷無比な連中で悪名高い。そんなブラックシーフがよりによって商人の商隊を襲ったのだ。
「さぁ、金品と女を渡せば命を助けてやるぜ?どうだ。」
「断る!誰がお前ら盗人に渡すものか!」
「あぁ!?てめえ誰に口を聞いているかわかって 言っているのか!!」
無精髭は怒鳴り散らす。商人はそれに怖じけず退くことはなかった。
「仕方ねぇよほど痛い目に会いたいらしいな?おい、お前らやれ!」
「へい!」
無精髭が周りの手下に命令すると手下は荷馬車にいた商人と女を引きずり下ろした。
「イヤ!離して!!」
「止めろ!彼女には手を出すな!」
「荷馬車の金品は積み替えろ。男は殺せ。」
「女は?」
手下の狼が聞くと無精髭はニヤリと答えた。
「いつも様に犯せばいい。」
「…わかりました。」
狼は少し躊躇いながら言った。手下が女性を押し倒した。盗賊がやりそうなことを今からやるつもりだ。女性は必死に叫んだ。
「イヤァァァ!離して!」
「へへ…無駄なことはよすんだなお嬢さん。俺達と遊ぼうぜ?」
「ヒヒヒ!久しぶりの女だ。」
女性は涙を流しながら祈った。誰か助けてと手下が女性の胸に手を差し出そうとしたその時だった。何処からか低い音が聞こえてきた。聴いたことがない音に盗賊達は戸惑い始めた。無精髭は辺りを見回した。音はだんだんと大きくなって行く。
「一体なんだ!?」
「何だあれは?」
無精髭が手下の一人が指を指している方向を見ると青空に一つの黒い物体がこちらに向かっていた。




