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第30話 追撃

新たな転生者が来たようです。

監視塔の下では嵐が過ぎたように静まり返り、誰すら動く気配が全くない。いや、もう永久に動くことはないだろう。何故ならこの場所にとてつもない力が生きる全ての命を貪り尽くしたのだから。


地面には先程まで悪事に手を染めていた悪人共の骸、死体がおびただしいほどに転がり、酷い死臭を放ち、悲惨な光景を作り出している。それらを目当てに、明るくなった空には屍を啄みに来たカラス達が、食事をするために飛び交っていた。


「……そっちは何人?」


ギリースーツのフードを下げ、頭部をさらしたアレックスがうんざりしながら、黙々と地面にある死体を数えているスティーブに聞く。


「ざっと50人ってところだろう。瓦礫に埋もれてるのを除けばな……」


口に加えたアメリカ製の煙草を吹かし、煙を吐き出しながら後ろの瓦礫を指差す。そこは先程の航空支援のクラスター爆弾によって破壊し尽くされたーー砦への入口だった場所。今では工事現場の瓦礫置き場の様に変わり、瓦礫の隙間から死体があちこちから飛び出ている。


「こっちは40人ーー逃げれば助かったのにね。戦闘機とマスケット銃じゃ、赤子の手を捻る物なのに?」


「全くだ。こんな虐殺行為をUN(国連)のお偉方が見たら、すぐに抗議の嵐だろうよ」


「だけどこの世界には国連も、交戦規定も存在しないわ」


「だな。この糞共にそれだけの教養は無さそうだし」


深く煙草を吸いきると、スティーブは死体目掛け吸殻を投げ捨てる。


「猫の嬢ちゃんは気分はどうだ?」


スティーブがドラゴンの近くに立っているティナに話し掛ける。彼女はじっと倒されたドラゴンを、見てた。


「おーい? 平気か?」


スティーブの問いかけに、ティナはぎょっと体をびくつかせると、何事もなかったように振り向く。


「え、ええ。あたしは平気よ……」


「こんな事を見て驚いたか? まぁ、無理もないな」


「そうね……驚きすぎて、言葉なんて出ないわ。これを見たらね」


ティナがドラゴンを指差す。未だに痙攣しているのか、体が微かに震えている。


「まだ生きているのか。とんでもねぇ生命力だ」


「それもそうよ。何せ、ドラゴンは不死の象徴でもあるのだから。簡単には殺すなんて無理」


スティーブはドラゴンの死骸の側まで近付き、おもむろに地面に落ちていた赤く鈍い光を放つ欠片を拾う。欠片はドラゴンの鱗のようで、空中で爆散した際に地面に落ちたようだった。


「あれだけの銃弾をもろに食らってるのに……平気な顔をしてたな」


そう言うと持っていた鱗を一旦地面に置き、ショットガンを抜くと鱗に向けた。そして数発撃ってみる。ショットガンの豪快な銃声が響き、あまりの音にティナが猫耳を塞いだ。


「きゃあ!!」


「なるほどな。通りで平気なもんだ。アレックス、来てみろ」


「何?」


スティーブの呼び掛けに、アレックスは死体を避けながら歩いてくると、スティーブが鱗を指差す。


「これは……」


そこにはショットガンのショットシェル弾を浴びたのにも関わらず、僅かに表面に凸凹の傷を受けておなお、原型を止めている鱗があった。


「この鱗、MBTの装甲と同じくらいに防御力が高いようだな。これじゃ散弾、9mm、5.56mなんて貫通すらしないわけだ」


「まさに空飛ぶ戦車ね。でも、あの小さい翼竜はスティンガーで撃ち落とすことが出来たけど……こいつに関しては対戦車ミサイルが有効なのかしら?」


「だろうな。だが当たったとしても破壊出来るか分からんが……」


「それもそうね……。あっ、優達が丁度来たわ」


二人が話してる間に優とフェルクが監視塔の入口からゆっくりと出てきた。どちらもひどく汚れ、疲れきっているのだろう、表情に疲労が出ている。スティーブとアレックスが二人に駆け寄る。


「優! 無事そうだな!」


「何とかね……。二人とも、支援感謝するよ。お陰でドラゴンの胃袋に入らなくて済んだ」


「気にしないで。私たちは出来ることをしたまでよ。フェルクもご苦労様」


「……いや、俺は…大したことはしてないよ」


フェルクは少し恥ずかしそうにして、もじもじとしている。それを横目に優が切り出す。


「二人とも、実は話しておきたいことがあるんだ」


優がさっきまでの疲れた表情を変え、真剣な眼差しで二人に言った。あの話をーー神の代行者からの伝言を伝えるために。









血生臭い砦から一旦離れ、一行は砦の近くの林の中にある小川に移動し、短いながらも休息を兼ねた会議を行うことにした。もちろん、優が神の代行者から聞いた話を、スティーブとアレックスに話すために。


「一体、どう言うことことなんだ?」


「嘘でしょ?」


「神の代行者はそう言っていた。俺達は(ポーン)で、神様のゲームの為だけに使われていると」


一通りの説明すると、さっきの優と同じ様に二人も困惑したようだ。確かに、いきなり自分達はゲームの駒で、今までの任務は神々のゲームだったなんて聞けば困惑してしまうだろ。


「死んでしまったら……元の姿には戻れないの?」


「ああ、死んだら別の生き物として甦り、こちらの世界での記憶が消されたうえで戻ることができる」


「ではーー俺達が元の世界に戻るにも、任務を遂行しなくてはならないのか」


「そうなる」


スティーブはなるほどなと言うと、また煙草を取り出して、火を着け吸い始める。それに伴い、妙な静けさが辺りに漂い始めた。


「兎に角だ、この話はまた後で話そう。任務はまだ終わっていない」


「そうね」


「その通りだ。まだ盗賊の首領が見つかっていない。あれだけくまなく、砦の隅々まで調べたのによ」


顔をしかめながらスティーブが言う。今回の依頼の最重要目標でもある、首領のザルドス・バーゲインスの確保がまだ済んでいないのだ。先程、優が合流したあとに、全員でグローム砦をもう一度探索したのだが、肝心のザルドスの遺体すら見つからなかった。ザルドスがいたとされる部屋も見つけたが、既にもぬけの殻。あれほどの戦闘が有ったのにも関わらず、これだけ探してもいないのは些か可笑しい。


ーー既に逃亡したのでは?


優の頭にその考えが一瞬過る。考えたくもない可能性でもあるが、砦にいない以上それしかないだろう。これでは任務と依頼、両方が失敗したことになってしまう。また失敗した時に一体どんな影響が起こるのか、検討もつかない。三人の脳裏に悪い考えが過る中、ストライカーの兵員室に備え付けられた無線機から、アラームが突然鳴り響く。


「何だ?」


「味方からの通信よ。イワンかしら?」


アレックスがアラームの鳴る無線機に近寄り、通信機を手に取り周波数を合わせ始めた。周波数を合わせ終わると、通信機越しに話す。


「こちらアルファ、キメラ01応答を」


(リー)! 30mmは威力が高すぎるぞ! なるべく馬車には当てるな!」


突然、イワンが怒鳴り声を上げた。スピーカー越しに聞いていた全員が、何事かと顔を見合わせてしまう。アレックスは気を取り直して、再度呼び掛ける。


「イワン!応答を!」


「ん?アレックスか。聞こえるか?」


「何かあったの?」


「ああ、滑走路に戻ろうとした時にな、砦の近くの街道に黒い荷馬車が三台が大慌てで逃げているのを見つけてな。確認のために高度を下げて、近付いたんだが……」


「黒い荷馬車?」


黒い荷馬車、と聞いた途端にアレックスが優とスティーブの顔を見た。まさかと思い、アレックスが聞く。


「もしかしてーーその荷馬車は」


「盗賊団の生き残りみたいだな。俺が来た途端に血相変えて逃げ出したぞ」


正解だった。だとすればザルドスもその荷馬車のどれかに乗っているのだろうか。これはチャンスだ。


「イワン、貴方のいる場所は?」


「場所は砦から北の方角に10㎞。だが移動しているから急がないとーー」


イワンが話している途中に、何かの爆発音が無線に入り込む。


「どうしたの!?」


「くそ! バカ野郎!! 対戦車ミサイルを撃ち込みやがった!」


「対戦車ミサイル?」


イワンの搭乗しているSu―25には対戦車ミサイルなんて搭載してはいない。ましてやイワンは独断で、攻撃などしなかった。それと最初に出てきた李という名前。明らかに中国人の名前に使われる言葉。


「アレックス、無線を貸してくれ」


優がおもむろにアレックスの無線機を借りる。


「こちら優。イワン、誰か同じように荷馬車を追跡しているのか?」


「優か、ああ追跡している」


「まさか……新たな転生者か?」


「そうらしい。中国人民解放軍陸軍所属のパイロット二人だ。今、WZ―10戦闘ヘリで大暴れしているぞ」


中国軍ーーその言葉を聞いた瞬間、優は驚くしかなかった。







































遂に中国軍も助っ人?でやって来ました。次回は中国人パイロットが大暴れします。

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