表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/34

第26話 ロシア流航空支援

グローム砦上空


「やれやれ…遅刻したかな?」


Su-25グラーチェ攻撃機のコックピットからパイロットスーツのヘルメットのバイザーを上げ、グローム砦を見下ろし、酸素マスク越しにイワンが言う。既に砦では地上戦が始まっているようで、薄暗い空からでも分かるくらいに砦の各所から炎が燃え上がっているのが確認出来る。イワンは操縦桿を横に倒し、機体を旋回させた。


「さてと、連絡するか」


そう言うとイワンはコックピットの無線を操作し、周波数を合わせ始めた。ヘルメットに取り付けられた酸素マスクのマイクに向けて話す。


「こちらキメラ01、アルファどうぞ」


「キメラ01、聞こえるわ。随分と早い到着ね」


無線からアレックスが返答してきた。彼女の声と共に怒号や銃声がけたたましく混ざって聞こえる。


「ハハ、遅く来たら怒るだろ?同志」


「そうね。」


「標的を教えてくれ、支援を行う」


「了解。イワン、私達は今砦の中庭にいるの。分かる?」


アレックスの問いにイワンは砦を見た。塀に囲まれ、開けた場所を見つけるとそこには一台の装甲車が停まっていた。


「見つけた。かなりの敵だな」


装甲車の回りを囲むように盗賊達が集まって、装甲車に向けて襲い掛かっている。


「ええ、倒してもきりがない。今装甲車の機関砲で応戦しているけどいつまでも持たないわ」


「分かった。アレックス、標的を指定できるか?じゃなきゃ君らも誤爆してしまう可能性があるからな」


「待って…信号弾があるわ。これ使える?」


「標的さえ確認出来れば大丈夫だ。」


「分かったわ。今撃ち込む」


その後、装甲車から2発の赤い信号弾が発射された。一つは装甲車の手前の群衆、。二つ目は中庭と砦を繋ぐ入口だ。イワンはそれを確認すると操縦桿を後ろに倒し、機体を真上に向けると加速した。イワンの身体にG(重力)が掛かり、操縦席に押し付けられる。


「確認した。これより対地支援を開始する」


徐々に高度を上げていき、ある程度になると今度は機体を急降下させた。イワンはコックピットの火器管制システムパネルを操作すると、グラーチェの主翼の両脇に取り付けられたGsh-23Lガンポットを選択する。そして急降下での射撃に用いられるボアサイト照準に切り替え、操縦桿の赤いボタンに指で押す。


二基のガンポットの発射と同時に細かく機体が震動する。グラーチェから放たれた機関砲弾は一つ目の装甲車の前にいた群衆に次々と着弾し、盗賊達を粉々に吹き飛ばした。イワンは再び機体を水平に戻すと今度は二つ目の目標である入口に向けた。入口には盗賊達が無駄な足掻きで銃をグラーチェに向けて射撃しているのが見える。


「まったく異世界人は豆鉄砲がお好きのようだな」


イワンは火器管制システムパネルを操作すると、クラスター爆弾であるRBK-500を選択して投下態勢に入った。コックピットのHUDを見ながら機体を安定させ、入口が見えた瞬間に操縦桿の赤いボタンを押した。


「投下、投下!」


翼の下に取り付けられた二つのクラスター爆弾が切り離され、入口に目掛け落下して行く。


ある程度の高さまでになった途端、クラスター爆弾が真っ二つに割れて中から無数の子爆弾がばらまかれた。次々と子爆弾が着弾していき、激しい爆発が起きて砦の入口もろとも盗賊達を破壊し尽くした。


「целЬ уничтожитЬ(標的撃破)!」


「いい腕ね。キメラ01」


「どうも。次の標的を指定してくれ」


「分かったわ、次の標的は…待って!」


「どうした?」


「キメラ01!回避して!」


「回避?ん、うわ!?」


コックピットの窓に赤い炎が通りぎ、グラーチェを激しく揺らした。イワンは操縦桿を握り、機体を安定させた。


「何だ!?ロケット弾か?」


イワンは炎が上がった場所を確認する為、機体を傾けた。


「おいおい…。嘘だろ」


イワンは驚いた。なんと砦内にある塔の屋上に赤いドラゴンがいるではないか。かつて幼い頃に読んだ魔法が出てくる絵本にあの様なドラゴンが描かれていた事を思い出した。その頃祖母に読み聞かされ、悪い子供はドラゴンに食べられると耳にタコが出来るくらいに言われた。


「婆さん…あんたの言う通りになったぞ」


イワンは今は亡き祖母に思わず口走った。さっきの炎はあのドラゴンが放った物らしく、こちらに向けて口を開けて威嚇している。


「キメラ01、大丈夫!?」


「大丈夫だ。まさかドラゴンがいるとはな…驚いたよ」


「今、優があのドラゴンと戦っているわ!」


「ほう、さすがサムライの国の男だ。頼もしい」


「でも苦戦してるみたい。イワンそこから様子を見れない?」


イワンは塔の屋上を見た。薄暗い中、銃の発射炎が見える。どうやら優がドラゴンに向けて撃ちまくって応戦しているのが確認出来た。イワンはまた無線チャンネルを変え、呼び出した。


「キメラ01から優、応答を」


しばらくすると優から返答が帰って来た。


「こちら優!イワンか?」


「そうだ同志、無事か」


「無事だけどピンチかな…」


「これより支援を行う。頭を伏せてろ」


「え?ちょっ、まっ!」


イワンは機首をドラゴンのいる塔へと向け、突っ込んでいく。ドラゴンもグラーチェが近付いて来る事に気付いたのか急いで飛び上がった。


「ヘッ!トカゲの癖に馬鹿じゃねぇな。だが俺からは逃げられんよ」


イワンはドラゴンに向けてガンポットを発射した。機関砲弾がドラゴンに飛んでいくが、寸でのところでかわされ優のいる塔に数発着弾した。


「うわ!?イワン、気を付けてくれ!」


「すまん、同志。奴の動きが速すぎた」


イワンは再び機体をドラゴンに向け直す。


「何処に行った?」


「イワン!後ろにいるぞ!!」


「何!?」


イワンが後ろを振り向くとドラゴンがピッタリと付いて来ていたのだ。


「くそ!何だこいつ。ハリアー、お見舞いしてやれ!」


ハリアーはハリーの命令に答えるかのように吠えると、炎の塊を複数、グラーチェに向けて吐き出した。イワンは機体を傾けて間一髪炎の塊を回避する。炎の塊は砦の外の森に着弾し、木々を燃やした。


「危ない、危ない…なんて奴だ」


グラーチェは一旦砦から離れ、高度を2000m上げて様子を見た。流石にあのドラゴンはこの高さまでは来れないようで砦の上で空中停止している。


「ちぃ、化け物め…。機動力はSu-27並みか、こっちの性能(グラーチェ)では厳しいな」


「イワン、俺に任せてくれ。スティンガーで叩き落とす」


「携帯用地対空ミサイル(マンパッツ)でか?だがあの化け物はかなりの速さだ。倒せるかどうか…」


「あのドラゴンの口の中にミサイルをぶちこむ」


「な?」


優の突拍子のない発想にイワンは固まった。


「正気か?相手は戦闘ヘリと同等だぞ!?歩兵一人じゃかなうはずが…」


確かに戦争映画のヒーローならたった一人で戦闘ヘリと互角に戦い、倒す事が出来るだろう。だが現実(リアル)空想(フィクション)は天と地の差があり、現に歩兵一人が戦闘ヘリに戦いを挑むのは無謀過ぎる。環境や地形にもよるが普通なら戦わないのが普通だ。


でも優はその映画のヒーローと同じく無謀過ぎる挑戦をしようとしている。イワンは少し苦笑した。


「まったく…日本人は奥手の奴らばかりだと思ったがそうではなかった。負けたよ、同志。それでは俺は何をすればいいかな?」


「ありがとう、そのドラゴンをこの塔まで誘導してくれるかい?塔までは来たら俺がドラゴンにミサイルを撃つ」


「なるほどな、囮か」


「イワン、あんたの腕を見込んでのお願いだ」


「了解、任せてくれ」


優は通信を切り、背中に背負っていたFIM-92Bを構え直し、ドラゴンに向けて狙いをつけた。


「さぁ、ドラゴン退治の再開だ!」


朝日に照らされ、イワンの乗るグラーチェがドラゴンに向けて再度接近して行く。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ