第24話 レッドドラゴンVS特戦群の男&スティンガーミサイル
周りを飛んでいたはずだった仲間の飛竜が撃ち落とされ、ハリーは未だに状況を把握することが出来なかった。ハリアーも同じようにただ撃ち落とされた仲間の方を向いたままだ。
「一体、何だあの魔法は…?今までの追尾破壊魔法とは桁外れじゃないか!!」
ハリーは酷く動揺していた。
「落ち着け、ハリー・バーゲインス!お前は墜ちた馬鹿共とは違う!僕は元王国軍のエースドラゴンナイトだぞ?あんな奴らよりもっと力があるんだぞ!?」
独り言のようにぶつぶつとハリーが言う。それもそのはず、ハリーはかつてリゲイン王国の優秀な竜騎士だった。プライドが高く、何より自分が一番の自己中心的な性格なので自分よりも優れた物には嫌悪を抱く程だ。ハリーは一旦深呼吸をすると砦の中庭を見た。
「あんな奴らより僕はもっと上なんだ!絶対上なんだあああ!」
ハリーは子供のようにわめき散らし、ハリアーを中庭に向けて飛ぶように操る。一方優達は盗賊達に囲まれながらも必死に応戦していた。スティーブがM37を撃ち、その後ろに優が9mm拳銃とナイフを持ち、CQB(近接格闘術)スタイルで戦う。ティナも同じようにナイフで華麗に盗賊を蹴散らしていく。
それを横目にフェルクは物陰に隠れたまま震えていた。自分でもよく分からない不安と恐怖がフェルクの心を支配している。いつの間にか涙が溢れ、泣きべそをかいていた。
(もういやだ…逃げたいよ。)
すると魔導銃を持った盗賊数人がフェルクの前を通り過ぎて行く。どうやら優達を狙い撃ちするつもりのようだった。だが、フェルクは動こうとはしなかった。
(別にどうなっても構わない…。俺はただ道案内をしただけだから。)
盗賊達が魔導銃を構え、優達に狙いを定めた。
(このままだと撃たれるな…でも、俺に何が出来る?)
助けるか、見殺しにするか…。
"お前は俺達の仲間だ"
ふと優が言った言葉が急に頭に浮かだ。敵である自分自身を仲間なんて言う、あの男は変わっている。だが優はフェルクを乱暴に扱っていた盗賊達と比べフェルクを本当の仲間のように扱ってくれた。フェルクは顔を見上げると、腰に挿していたナイフを取り出すと立ち上がる。
「うわあああああああああ!」
フェルクは雄叫びを上げ、魔導銃を構えた盗賊達に突進していく。
「ん?うわあ!!」
一人の盗賊の男を倒し、手に持ったナイフで胸を無我夢中にメッタ刺しにした。周りいた仲間の盗賊も突然の事に銃を下ろしてしまい、見てしまった。
「よそ見してる暇はないわよ!」
その事に気が付いたティナが素早く近づき、魔導銃を持った盗賊達を倒していく。
「はあ、はあ、死ね、死ね、死ねぇー!」
フェルクはまだ男を刺している。フェルクの銀色の毛並みが男の鮮血でどっぷりと染まり、血だまりが広がっていく。ティナがフェルクの側に近付く。
「もう死んでるわよ?」
「がああああ!!」
「ちょっと!危ないわよ!!」
フェルクがパニックに陥り、ナイフをティナに向けて斬りかかってしまいティナが反射的にナイフで防ぐ。フェルクは目を血走らせ、完全に正気を失っていた。
ティナが溜め息をつくと。
「仕方がないわね…あんた、少し寝てな!」
ティナがフェルクの腹に蹴りを入れた。フェルクはそのまま腹を抱え、両膝を地面について倒れた。ティナはフェルクを担ぐと優達のいる場所まで行った。
「くそ!きりがないぞ!」
「優!なんとか持ちこたえろ!」
その時二人の正面にある砦の正門からエンジン音が響く。すると勢いよくストライカー装甲車が正門の扉を突き破り、中庭に滑り込むように入って来た。どうやら間に合った。
「やっと天使のご登場だな。」
ストライカーは優達を庇うように停車すると運転席からアレックスが出てきた。
「お待たせ!間に合った?」
「ああ、グッドタイミングだ。」
「ならよかった。二人とも武器を使って!」
アレックスがストライカーの兵員室を指差すと、優とスティーブは裏に行き、兵員室の後部ハッチを開く。その中には大量の銃火器が積んであり、二人は圧巻してしまった。
「凄いな…。」
「まるで兵器の卸売市場だな。」
「召喚出来るだけ持って来たのよ。マシンガンや対戦車兵器、もちろん携帯ミサイルもね。」
車内にはM60機関銃とAT-4対戦車ロケットランチャー。はたまた飛竜を撃ち落としたスティンガーミサイルが立て掛けてある。スティーブはそれらの一つであるM60を手に取り、薬室に弾丸を装填した。
「優、俺は盗賊共を倒す。トカゲの始末を頼めるか?」
「了解、デカイトカゲの丸焼きを作ってやるよ。」
「よし!頼んだぞ!」
スティーブがM60を持ってストライカーの車内から飛び出していく。
「さて、さっそく始めるか。」
優はFIM-92Bスティンガーを背負い、側にあったMP7サブマシンガンを持って外に出る。外ではスティーブが木箱を台にしてM60を撃ちまくっていた。効果的な制圧射撃で誰一人盗賊達はストライカーに近づくことさえできずのが見える。その装甲車の上ではアレックスがDSR-1で盗賊達を次々と狙撃していき倒していく。
優は空を見た。赤いドラゴンはまだ空を飛んでいる。
「ここからじゃすぐに回避される…。どこかいい場所は?」
優は周りを見た。ふと砦の方を見ると監視塔のような建物が建っていることに気が付いた。砦の周囲を見渡すほどの高さで、屋上があるのか上にはかがり火も見える。
「あそこだ!」
優はそう言うと走り出した。その時盗賊達が優に向けて襲い掛かってきた。
「死ねぇー!」
「あの緑の服を着た男を殺せ!」
「野郎…ぶち殺してやる!」
罵声と殺意…優には肌に突き刺さるように感じた。だが優はそれに臆することもなく突っ込んでいく。盗賊のオークが剣で斬りかかってきたが、咄嗟にかわしMP7を腹部に撃ち込む。オークを突飛ばし、裏にいた二人の男にも弾丸を食らわせる。そのまま塔の方へ全速力で走り、塔の入口に着いた。
入口には誰も居ないことを確認すると優は扉を蹴り飛ばし、中に入った。中に入ると螺旋状の階段があり上にまで続いている。
「ふぅ…。」
優はやれやれと思った。
「仕方がない、行くか!」
優は気合いを入れると、長く伸びた螺旋階段を掛け上がって行く。急いで階段を上って行くたびにスティンガーミサイルの重みが身体にのし掛かってくるが、特殊作戦群の一人である優には朝飯前だった。そうこうしてる間に塔の屋上にたどり着く。
「…ここだな。」
優が息を整えていると翼が羽ばたく音が聞こえた。優は背負ったFIM-92Bを下ろし、準備を始める。
「ハハハ!何しているんだ!!」
高笑いと共に赤いドラゴンが現れた。そして背中にはハリーが残忍な笑みを浮かべて優を見下ろしている。もはや狂った異常者のように見えた。
「お前を倒す準備さ。」
「俺を倒す?ぶっ、はははははははははは!面白いね~お前。殺すのは惜しい気がするけど…ムカつくから殺しちゃう!喜べよ!」
ハリーはハリアーを再び高く舞い上がらせた。
「来い!」
優はスティンガーミサイルを構えて叫んだ。




