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第23話 初ドラゴン戦

「ヤロー!ぶち殺せ!」


一人の盗賊が叫ぶと次々と魔導銃を構えて撃ち始めた。氷や雷の弾丸が四人を襲っていく。


「遮蔽物へ!!」


スティーブが言うと四人は近くの崩れた壁の裏に隠れる。スティーブと優は盗賊達に向けて応戦した。只でさえ強力な威力を持つ魔導銃を少しでも多く減らしたい。だが相手が倍の人数、自分たちの持つ弾数が足りるか不安になる。優は89式改を撃ちながら隣にいるスティーブに聞く。


「スティーブ、弾薬は足りるか?」


隣にいるスティーブがM37に青色のスラッグ弾を装弾口に入れ、補充していた。


「今、散弾がなくなったばかりさ。後はスラッグ弾が30発だな。」


「こっちもマガジンが4本だ。」


優は戦闘ベストにあるマガジンパウチを見た。すでにここまでの戦闘でかなりの弾薬を消費してしまっている。しかも相手の魔導銃の弾薬が魔力ならば無限に近い弾数を撃てる。だとすれば、こちらの弾薬が先に無くなるのが早いだろう。


「このままじゃ…不味いな。」


スティーブが毒づく。


「スティーブ、ここは一旦後退して体勢を立て直そう。」


「そうするか、この場所は不利だし。」


スティーブの言う通り、遮蔽物にしていた壁が魔導銃の攻撃でいつ破壊されてもおかしくない。


「フェルク!外に出られる出口はあるか?」


優はティナの横で縮こまっているフェルクに言った。


「で、出口にかい?」


「そうだ」


「そこの…扉から外に出れるよ」


フェルクが裏にある木製の扉を指差した。


「よし、とりあえずそこから外に出るぞ!スティーブ、グレネードを!」


「了解!」


「フェルクとティナは先に行け!」


「分かったわ!行くわよ変態狼!」


「だから俺はフェルクだって!」


ティナはフェルクの手を引くと扉の方へ入って行った。残った二人は戦闘ベストのグレネードポーチから破砕手榴弾を取り出し、安全ピンを引き抜く。


「優、いいか?3つ数えたら投げるぞ。そしたら逃げる」


「了解!」


「3…2…1、今だ!」


二人は遮蔽物からグレネードを盗賊達に向けて投げた。そのまま立ち上がり、急いで扉に走ると中に入った。盗賊達は目の前に落ちた物が何なのか分からず、一人がそれを手に取る。次の瞬間、手榴弾が爆発して盗賊達を吹き飛ばす。その光景を扉の隙間から優が覗いて見ていた。


「これでしばらくは大丈夫かな…」


優はそう言うとスティーブがバックパックから弁当箱のような物を取り出し、準備を始めた。


「分からん、念のためにこいつも仕掛ける」


「それはまさか…?」


スティーブが取り出した物、それはM18A1指向性対人地雷クレイモアだった。アメリカ軍が開発し、あのベトナム戦争でも使われた対人地雷の一つでもある。この地雷は起爆すると内蔵された700個近い鉄の球が水平方向に扇状で広がり、敵を一瞬であの世送りにする。スティーブはクレイモアを扉の近くに設置した。


クレイモアの信管差し込み口にワイヤーのような物を伸ばし、近くにあった壺を重石にして入れた。


「スティーブ、もしかしてその方法…」


優が聞くとスティーブがにやける。


「ブービートラップ(間抜けの罠)さ。このワイヤーが切れたらドカン、敵はミンチになる。俺はブービートラップを仕掛けるのも得意だからな」


「得意?」


「後、言い忘れたが…俺はグリーンベレーに所属している」


笑いながらさらっと言う。


「グリーンベレーって…」


”グリーンベレー”通称アメリカ陸軍特殊部隊のことで、ありとあらゆる戦闘知識を持ち、なおかつ兵器の操縦にも長けた集団。それに反政府勢力の民兵への戦闘訓練・人心掌握を行い、兵士を育てるなどもはや特殊部隊を越えた活動をする事で有名である。スティーブがヘリの操縦を得意とするのも、グリーンベレーならではの事だった。


「まぁ、説明は後でする。今はここから退避することに集中しろ」


「了解」


二人は通路を急いで退避した。しばらく歩いていくとクレイモアに盗賊が引っ掛かったのか爆発音と悲鳴が通路内に響く。音速で大量の鉄球が襲い掛かってくればーー誰でも想像したくはなくなる。そうしている間に出口が見えた。出口を出るとそこにはフェルクとティナがすでに待っていた。スティーブと優は周囲を警戒しながら近付いて行く。


「大丈夫だった?」


月明かりに照らされフェルクとティナの目がやけに光っていた。ちょっと不気味に見える。


「ああ、一旦外に出よう。体勢を立て直す」


優が言う。


「ちょっと待て、優…ここは中庭だよな?」


スティーブが少し警戒しながら言った。優は周りを見ると広い庭園のような広々とした風景が目に飛び込んできた。噴水と柱があり、いかにも領主の城らしい作りがそこにはあった。


「ああ、そうみたいだ」


「アレックスの話では中庭にドラゴンがいるって聞いたが…。いないな」


「確かに…いない」


優は周囲を見回した。しかしそんな化物の痕跡すらなかった。


「見間違いかな…」


優がそれを言った時、突然真上から物凄い風が来た。


「な、なんだ!?」


「おい!優、上だ!」


スティーブが言うと優は上を見た。なんとそこには赤い体のドラゴンがホバリングしながら優達を見下ろしているではないか。優は咄嗟に銃を構えた。


「まったく…こんな奴らにどんだけ手間をかけているんだ?」


ドラゴンが喋った。まさかドラゴンは話す事も出来るのか?さすが異世界…現実では考えられない事の連続だ。でもよく見ると背中に一人の黒い鎧を着た男が乗っていた。男は20代前半ぐらいで青い髪と童顔が印象的だった。男は馴れた手つきで手綱でドラゴンを操る。


「ハリアー、着地しろ!」


男が言うとドラゴンは命令に呼応するかのように吠え、ゆっくりと優達の前に着地した。着地で起きた風が四人を煽る。


「何者だ?」


優が再び銃を男に構えた。だが男は銃を向けても動じる様子すらなかった。


「何者?おいおい…それはこっちが聞きたいよ。こんなに砦を滅茶苦茶にしておいて自分の名前なんて教えるわけないだろ?」


男はケラケラと笑いながら言う。


「ん?ちょっと待って、フェルク?何で君がコイツらと一緒にいるんだよ?てっきり死んだと思った。けど…」


男の言葉にフェルクは縮こまる。


「フェルク…この男は?」


優の問いかけにフェルクは体を震わせながら言った。


「彼は…このブラックシーフ盗賊団の副団長、ハリー・バーゲインスだよ」


「まさかザルドスの弟か?」


「…うん」


「兄弟揃って悪党か」


スティーブが忌々しくハリーを睨む。ハリーはそれに臆することなく喋る。


「何でこそこそ話してるんだい?あーそう言うことなんだな~。フェルク…お前がこの一連の出来事の原因なんだな?」


突然ハリーが鋭い目付きに変わった。フェルクは尻尾が下がって怯えた。


「ち、違うんです!ハリー様、これには深いわけが…」


「深いわけ?くっ、くくく…くははははははは!笑わせてくれるじゃないか、フェルク。つまりお前は俺と兄さんを裏切る事にしたんですだろ?」


「それは…」


「言い訳する必要なんてないよ。お前は俺達を裏切りそいつらの仲間になったんだな…あれだけ何不自由のないようにしたのにか!!!」


ハリーは砦全体に響くほど叫んだ。


「もう良いだろ!こいつを責める資格は貴様にはない!」


優がハリーに言った。だがハリーは苦笑した。


「責める資格はないだって?あのなーこいつは森で死にかけていた所を俺達が助けたんだぜ?こいつに衣食住を与えて、教育もさせた。それをすべて仇に返すこいつを責めて何が悪い」


優はフェルクをふと見た。確かにフェルクは盗賊として犯罪のやり方を徹底的に教えられた。だがフェルクは生きていくために仕方がない事だと思い、犯罪に加担していただけで本心ではなかった。自分と出会い、フェルクはその考えを改めると誓った。


「まぁ、この際だしみんなまとめて処分するのには丁度いいかもね…。ハリアー、上がれ!」


ハリーが手綱を叩き、ハリアーがそのまま飛び上がった。


「後悔しても遅いからな!お前らをズタズタにしてハリアーの餌にしてやる!!やれ!ハリアー、火炎弾!」


ドラゴンが口を開くと赤い炎の球が出現した。


「ヤバい、逃げろ!!」


優が叫ぶと散々に広がった。その時、今いた場所に炎の球が着弾して爆発した。


「ぐっ!」


優は爆発の反動で吹き飛ばされた。なんとか受け身をとり、立ち上がる。しかし持っていた89式改がどこかに行ってしまった。優はホルスターから9mm拳銃を取り出し構えると近くの物陰に隠れる。爆発した場所を見るとぽっかりと穴が空いて、煙が上がっている。


物陰から空を見上げると月が浮かぶ空を赤いドラゴンが悠々と飛んでいた。するとスティーブが素早く優のいる物陰にやって来た。


「優、大丈夫か?」


「なんとか…スティーブ、二人は?」


「俺達と同じように隠れているよ。しかし、まるで天然のナパーム弾じゃねぇかよ。あれじゃもろに食らったらあの世だぞ」


すると砦の方からまた盗賊の増援がやって来た。


「くそ!袋のネズミだ」


「とにかく撃つしかない!」


「泣けるね…」


二人は銃を構え、盗賊たちに向けて撃ち始めた。


砦の上空ではハリアーに乗ったハリーが下の様子を伺っていた。その後ろにはいつの間にか3匹の緑の飛竜が並行するように着いている。飛竜はハリアーよりも少し小さく、背中には騎手を乗せていた。


「フフ、さていつものやるとするか…。ザルバー、バコ、テー!陣形を取れ!」


「「「は!」」」


三人は飛竜を三角形のようにハリアーを囲んで飛び始めた。


「本来は対魔導船用なんだが、構わないか。どうせ消し炭にするし」


ハリーはそのまま身構えると、ハリアーを下に向かせ急降下させた。


「おい!優、またトカゲがナパームを食らわせる気だぞ!!」


スティーブが言う。優はダメ元で拳銃を降下してくるドラゴンに向けて撃ちまくる。しかし弾丸はドラゴンに命中しているがまったく動じることなく迫ってくる。優は拳銃を下ろし悪態をつく。


「くそ!」


「無駄な足掻きを!ハリアー、火炎弾!!」


ハリーが再び叫ぶとハリアーは口を開け、炎の球を出現させて放とう態勢をとる。それに合わせ、周りを並行して飛ぶ飛竜も炎の球を出現させる。だがそれは放たれることはなかった。地上から物凄い音ともに光の筋が上がり、飛竜の一匹に当たり爆発した。


「な、なんだ!?」


ハリーは爆発に煽れ、ハリアーは炎を森の方角へ飛ばしてしまった。


「爆発した?」


優が空を見上げながら言う。突然の事に盗賊達も戦闘を中断して空を見た。飛竜と騎手の肉片が砦に降り注ぐなか、また光の筋が森の方から上がる。


「なんだあれは!?来るなあああああ!!」


光はまた飛竜目掛け迫ってくる。騎手が悲鳴を上げ飛竜に回避機動をとらせたが、光が飛竜に当たり爆発四散した。ハリーは何が起きたか分からず、唖然とするしかなかった。


(まさか…奴ら追尾魔法の使える魔導士を森に、待機させていたのか?)


ハリーはそのまま未知の恐怖に犯されていく気がした。次々と飛竜が墜ちていく光景を地上にいる優達は黙って見ていた。


「もしかして…あれは?」


その時優の無線機が鳴った。優は耳に着けたマイクを押す。


『こちら、アレックス応答を!』


「アレックス、君か!」


『優、皆無事?』


「ああ、無事だ!アレックス、もしかしてさっきのは…」


『ええ、スティンガーミサイルよ。やっぱりドラゴンも捕捉出来るみたいね』


「奴ら混乱しているぜ、助かった」


『優、今からそっちに合流するわ!それまで持ちこたえて!』


「了解、アレックスもう一匹狙えるか?」


『わかった…撃墜させるわ』


すると森の方からミサイルが光を放ちながら上がり、最後の飛竜を撃ち落とした。


「撃墜を確認!いい腕だ、アレックス!」


『どうも、これより砦に向かう!』


優は無線を切ると9mm拳銃のマガジンを交換し、新たなマガジンを入れ装填した。


「スティーブ、後少しでアレックスが合流して来る!このまま持ちこたえよう!」


「了解!女神が助けに来てくれたぜ!」


二人は銃を構え、盗賊達を倒していく。








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