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第17話 地下水路の侵入者

グローム砦 裏門前


「ふぁ~…眠い」


裏門前の見張りをしている犬獣人の男は大き な欠伸をした。それを見ていた隣の人間の男が言う。


「おい…しっかりしろよ。この前みたいに居眠りす気か?」


「違えよ…仕方ねぇだろ?遅くまで女とやってたんだから」


「あの商隊の女どもか…それでどうだった?」


犬獣人は犬特有の牙を見せるようにニヤける。


「若い女は最高だった、子供はまずまずだな」


「畜生…俺も見張りが終わったらやるぞ!」


「早いとこやった方がいいぞ~。じゃないと…グヒェ!」


「どうした、ひ!?」


男は咄嗟に犬獣人の方を見た。そこには頭から脳髄混じりの血を流して倒れている犬獣人の姿だった。男は腰に下げた剣を抜いて、臨戦体制に入り、辺りを警戒しながら犬獣人の傷を見た。


傷は小指が入る大きさで、綺麗に円になっている。しかも後頭部は割れ、脳みそが飛び出している。男は恐怖にかられた。どう考えても弓矢の類いではない。魔法でもこんな綺麗に円を作ることは不可能だろう。男が後退りをした時、男の背後に黒い影が現れた。その黒い影は男の口を手で塞ぎ、もう片方の手を高く上げた。


「むー!むー!」


盗賊の男は叫んだか口を塞がれ叫びは黙殺された。ふと高く上げた手の先を見た。月明かりに照らされ反射する細長い物。男はそれが何なのか分かった。男の首にそれが勢いよく突き刺さり、首を切り裂いた。鮮血が源泉の様に吹き出し、男の回りに血煙を作った。


(イテェエエエエエエ!!)


本来ならその言葉が出るはずだったが首を切り裂かれ、代わりに切り口から空気がひゅうひゅうと虚しく音をたて、血が流れるだけだった。男は薄れ行く意識の中、黒い影を見たが分からなかった。男はそのまま絶命した。


「こちら優、敵兵排除を確認」


黒い影こと優が無線機で連絡をした。


「こちらアレックス。こっちでも確認したわ。」


「アレックス、いい腕だ」


「KSKでは狙撃は一番得意なのよね♪」



そう言うが彼女のいる高台の場所から裏門までは800mも離れている。しかも夜で標的を判別しにくいのに月明かりを頼りに彼女は犬男の頭を正確に狙い撃ちしたのだ。それだけ彼女の狙撃能力が高いことが分かった瞬間だった。


「私が援護するわ、見える範囲でね」


「了解、必要なら連絡する」


優は無線機を切ると、後ろの茂みにいるスティーブ、フェルクに合図を出した。スティーブがショットガンを構えてゆっくりと出てくる。その後に付いていくようにフェルクがびくびくしながら来た。


「ホー、流石日本の最強部隊だな」


「暗殺も訓練の一環でね、今回が初めてやった」


血がべっとりと着いたサバイバルナイフを男の死体の服で拭き取ると、ケースにしまう。


「スティーブ、この二人を片付けるのを手伝ってくれ」


「分かった、そこの茂みに隠そう」


スティーブはイサカを背中のショットガンホルスターにしまい、殺害した男の死体を担ぎ上げ、茂みにの方に持っていく。二体分の死体を隠し終わると優がフェルクに聞く。


「フェルク、それで侵入口は?」


「この裏門の地下排水路から、砦の中に入ることができる」


「地下排水路?」


そう言うとフェルクが裏門の近くにある川を指差した。


「この砦で出た汚水はあの川に流れる様になっているんだ。あそこに排水路が見えるだろ」


確かに川には排水路がある。人が通れるくらいの高さだ。あれを通って行けば安全に砦内部に潜入が可能だ。だが一つ気になる事がある。スティーブが質問した。


「なぁ、フェルクよう…。ちなみに汚水とはまさか…?」


「ん?この砦で出るもん全てだが。何か?」


垂れ流し来たー!優は一昔流行った芸人のネタを心の中で叫んだだが、まぁ仕方ないだろう。この世界の文明水準は中世ヨーロッパ並みだ。高度に発展した下水処理システムも確立されていないのは当たり前なのだろう。しかしこうも不衛生だと健康被害とかないのかと思うとゾッとする。特に下流の農村で寄生虫とか発生してるとか。それはさておき…。


「いや、何でもない。じゃあ内部に潜入するか」


「だな…。フェルク、案内頼む」


「はいよ、着いてきな」


フェルクはすたすたと排水路に歩いて行った。その後に優達が着いていく。土手に降りて、排水路を見た。排水路は入口がトンネル状で高さが5mある。


「水に入るしかないな…嫌だけど」


「いや、両脇を見な。点検用に歩く場所があるよ」


優は89式改に装着したフラッシュライトを着けた。両脇には歩くスペースが見える。


「う…酷い悪臭だ。マスク持ってくりゃよかった」


スティーブが唸った。排水路から酷い臭いが流れてくる。優も流石に嫌になる。臭いを押さえるため、バックパックからバンダナを取り出し、簡易マスクとして顔に巻く。スティーブも首に巻いたスカーフを顔に巻いた。


「よし、中に入ろう」


優の一言で三人は排水路へ入って行った。


中に入るとフラッシュライトを着け、前に進んでいく。奥に進む度に臭いは強くなっていく。一体何を流しているのか考えたくない。考えたら吐くだろう。するとスティーブが話始めた。


「イラクを思い出すな…。この状況」


「イラク? スティーブ、なんかあったのかい?」


スティーブはスカーフ越しに苦笑いをする。


「イラクでテロリスト鎮圧作戦の時にな、テロリストを追い掛けて下水道に潜った事があったのさ」


「テロリストをねぇ…最悪な逃走だな」


「あぁ、10㎞近く追いかけ回したせいでヘドロまみれになっちまったよ」


「それは災難だ」


「まったくだ、お掛けで臭いが1週間も取れなかったんだからな。今となりゃあ笑い話だがな」


スティーブが笑った。優は少し可笑しな話だと思ったがテロリストを一人捕まえるために下水道までには追いかける根性があるスティーブには驚く。


「二人とも着いたよ」


フェルクが声をかけてきた。目の前に木のハシゴがあり、上に向けて続いている。


「これを登れば、砦の中に直接入る事が出来るよ」


優は上を見上げた。天辺に扉がある。


「よし、俺が先に行く。二人は後に続いてくれ」


「了解、気を付けてな」


優は89式改を背中に背負い木のハシゴに足を掛け、登り始めた。一歩進む度にハシゴから軋む音がする。どうやら腐食しているようだ。壊さないように優は慎重に登る。扉まで着くと優はホルスターから9mm拳銃を取り出し、銃口にサイレンサーを取り付ける。


その後、扉をゆっくり開けて行く。隙間から風が入り込む。すると目の前に盗賊が一人裏を向いて屈んでいた。荷物を


(気付いていないな)


優は拳銃を扉の隙間から出すと屈んでいる盗賊の頭を狙う。そして引き金を引いた。









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