第16話 グローム砦
バロシュードから50㎞…。グロームの森
夜の森の中を一台の装甲車が走っていた。ファンタジーの世界に似合わないアメリカ軍の8輪駆動ストライカー装甲車が森の奥へどんどんと突き進む。そのストライカーの銃座には暗視ゴーグルを装備した優がいた。
「こちら優、周囲は異常無し」
《スティーブ了解、引き続き警戒を頼む》
「了解」
スティーブの応答に優は短い返答をすると再び前を見た。今銃座に取り付けられたM2重機関銃のトリガーに指を置き、いつでも発射出来るようにしておいている。先の戦闘である程度冷静になることが出来るようなった。今回はさらに激しい戦闘が予想されるだろう。優は気を引き締めた。
「この道を真っ直ぐに行くの?」
「そうだ、このまま行けば砦に着く」
一方ストライカーの兵員室ではフェルクがアレックスの広げた地図で砦への道のりを説明していた。地図は盗賊が持っていたらしく、商人が通る道を調べてたのか赤い丸が幾つも付けられていた。よく見るとこの道はやり易いとか、ここは衛兵が多いなど詳細が書かれている。
「随分とやっているのね貴方達は?」
アレックスがフェルクに聞いた。彼は少し申し訳なさそうに下を向いた。
「別に貴方を攻めている訳じゃないわ。貴方はただ言われた事を実行していたんでしょ」
「そうだけど…俺は脅しや怪我をさせたこともあるし、それから…」
アレックスがもういいわと話を中断させた。これ以上彼を問い詰める必要はないと思ったのだろう。アレックスは地図をフェルクに渡すと運転席にいるスティーブに無線で呼び出す。
「どうした?」
「スティーブ、このまま行けば着くらしいわ」
「ん、分かった」
スティーブがストライカーの運転席に取り付けられたGPSモニターを操作し始めた。3㎞ほどカーソルを移動させると森の中に城らしい建造物があった。兵員室のモニターにも映し出された。
「もうすぐね」
「近いな…一旦停車するか」
スティーブは操縦席の操縦手視察装置を見た。前方に開けた場所が見える。ストライカーのハンドルをそこにきるとゆっくりと停車した。
「着いたぞ。全員降車!」
スティーブがそう言うとアレックスは兵員室の後部ハッチを開け、アサルトライフルG36Kを構え周囲を警戒しながら降りる。その後にフェルクが続いた。銃座に座る優も86式改マスターキーを持ちストライカーから飛び降りて着地するとアレックスの横に付く。その後からスティーブがイサカM37を持って走って来た。
「周囲敵影無し」
「よし、このまま砦まで徒歩で行くぞ」
「待って、念のためもう一度装備を確認しましょう」
「そうだな。念には念をだな」
優がそう言うと三人は武器の確認をし始めた。三人の装備はこのようになっている。
・優
86式改マスターキー、9mm拳銃サイレンサーカスタム。M67手榴弾、M34白燐手榴弾。予備マガジン86式改、拳銃マガジン、12ゲージ弾。その他。
・スティーブ
イサカM37、ベレッタ92FS。M72A2対戦車ランチャー、M67手榴弾、M34白燐手榴弾、M18A1クレイモア、12ゲージ弾、拳銃マガジン。その他。
・アレックス
G36K、DSR-1狙撃銃。予備マガジン、その他。
以上が彼らの装備品になる。盗賊団退治には充分な火力が期待が出来るだろう。ただしファンタジーの世界にこんな武器は絶対に却下と某RPGゲームのスタッフが怒るかも…。
「弾薬と武器は問題無し」
「こっちも問題なしよ」
「それじゃ、砦に近付こう」
優が言うとアレックスとスティーブが頷き、一行は盗賊団がいる砦へと歩き始めた。辺りはすっかり暗くなり、優たちを嘲笑うように月が不気味に輝いていた。月明かりに照らされた道を歩くこと数十分、目的の砦が見えてきた。
「あれがグローム砦だ」
フェルクが森の中心にそびえ立つ砦を指差す。優がバックパックから赤外線双眼鏡を取り出し、覗きながら言った。
「ちょっとした要塞みたいだな」
「元々はこの辺りを治めていた領主の城だったんだ」
「でも何で盗賊団が支配してるんだ?城の持ち主はどうしたんだよ?」
「さぁ、俺はそこまでは知らない」
大体予想は付く。領主を殺して奪ったか、戦乱の混乱に乗じて乗っ取ったかだ。殺して奪うにはハイリスクもあるため後者の方が有力だろう。優は赤外線双眼鏡をしまう。
「よし、まずは内部に侵入しよう。フェルク、中に気づかれず入れるルートはあるか?」
「砦の下水道がある。そこから砦の内部に入ることが出来るよ」
「よし、案内を頼む。スティーブ行こう」
「poor」
「アレックス、あの高台に登って援護して欲しい」
「了解、任せて」
アレックスは優の指差した高台に向かって走り出して行った。優は89式改のボルトを引き、薬室に初弾を送り込む。
「さあ、盗賊狩りしようぜ!」




